IBC 2026のAccsoonブースで見えてきたのは、ワイヤレス映像伝送機器を「映像を飛ばす道具」にとどめず、モニタリング、カメラ操作、インターカムまでを含めた撮影現場の支援ツールへと広げていく方向性だった。
ブースには「Accsoon Wireless Ecosystem」のメッセージが掲げられ、CineViewシリーズのワイヤレス映像伝送システム、CineView M7シリーズのモニター、ワイヤレスインターカムのAccsoon CoMo II、各種リグパーツなどが並んでいた。個々の製品を見せるというより、撮影現場全体をワイヤレスでつなぐ考え方を前面に打ち出した展示である。
モニターが送受信機になり、カメラ操作の窓口にもなる
まず目を引いたのは、モニターを軸にしたワイヤレス映像伝送の使い方である。展示の中心となっていたCineView M7 Proは、7インチのタッチスクリーンモニターに映像伝送機能を内蔵し、モニター、レシーバー、トランスミッターの各モードを切り替えて使える。
トランスミッターモードでは、カメラからの映像を手元で確認しながら、CineViewのレシーバーや別のCineView M7 Pro、Accsoonの無償アプリ「SEE」を入れたスマートフォンやタブレットへ映像を送ることができる。モニターは「見るための画面」であると同時に、現場の映像信号を中継する機材にもなるわけだ。
さらに興味深かったのは、モニターからカメラを操作するデモだ。CineView M7シリーズは、対応するソニーやキヤノンのミラーレスカメラとUSB-Cケーブルで接続すると、カメラの設定をモニターのタッチ操作で変更できる。画面上にはシャッタースピード、ISO感度、F値、ホワイトバランスといった項目が並び、カメラ本体のボタンやダイヤルに触れることなく主要な設定にアクセスできる。
実演で特に分かりやすかったのは録画操作である。画面上のRECボタンをタップすると、接続したカメラ側の収録も連動して始まり、もう一度タップすると停止する。設定によってはモニター側でも同時に収録できるため、カメラ本体で本番素材を記録しつつ、モニター側で確認・共有用の軽いH.264/H.265ファイルを残すといった使い方も可能だ。映像確認から収録操作までを1つの画面で完結できるのは、少人数の撮影では特にありがたい。
タッチフォーカスのデモも印象に残った。モニターに映る被写体をタップすると、カメラのAFが反応してその位置にピントを合わせる。フォーカス枠をドラッグして被写体を追わせることもでき、専用のフォーカス画面ではほかの表示が消えて、ピント操作に集中できるようになっている。
ジンバルやリグに載せたカメラなど、撮影中に本体のボタンへ手を伸ばしにくい状況では、この操作系が生きてくる。モニターからRECやフォーカス、露出まわりの設定に触れられるため、撮影の流れを止めずに済む。それこそがAccsoonの提案の核心に見えた。
インターカムまで含めたワイヤレス制作環境
ブースでは、ワイヤレスインターカムのAccsoon CoMo IIも展示されていた。1.9GHz帯のDECT方式を採用したフルデュプレックス(全二重)のヘッドセット型システムで、見通し距離で最大400mの通信に対応する。デュアルマイクによるENC(環境ノイズキャンセリング)にAIによるノイズ低減を組み合わせ、騒がしい撮影現場でも声を聞き取りやすくしている。
ヘッドセットの重量はイヤーパッドとバッテリーを含めて170g未満と軽く、長時間装着しても負担になりにくい。最大9人で同時に通話できるため、小〜中規模の制作チームでも導入しやすいだろう。映像伝送やモニターだけでなく、スタッフ間のコミュニケーションまで同じブースで見せていた点に、Accsoonの現在の関心が表れている。
今回のAccsoonブースに並んだ製品群に共通していたのは、撮影現場の操作を手元へ集めていく考え方だ。映像を見る、信号を送る、カメラを操作する、スタッフ同士で話す。これらを大がかりなシステムとしてではなく、比較的小さな機材の組み合わせで成り立たせようとしている。IBC 2026の会場ではIP化やクラウド化といった大きな潮流が目立つ一方、Accsoonの展示は、撮影者のすぐそばにある機材の使い勝手から制作環境を変えていこうとする提案だった。その変化は、ブースに置かれた小さな画面の中にはっきりと表れていた。