パナソニックは完全予約制で出展し、リモートカメラやシステムカメラ、カムコーダー、KAIROS IT/IPプラットフォーム、スイッチャーなどを展示した。その中でも注目したのが、今回発表された「AW-UE200シリーズ」と、ロール機構を備えた「AW-UER200シリーズ」である。それぞれに標準モデルの200と、SMPTE ST 2110/Dante対応モデルの210が用意される。

実機を見ていると、突然、カメラヘッドが勢いよく向きを変えた。リモートカメラとしてはかなり速い動きだ。しかも、この高速な動きを来場者の目の前で繰り返し実演している。

パナソニックブースで行われていた新型リモートカメラのデモ展示。高所に設置したカメラを使い、高速なパン・チルト動作を実演していた

この展示から、新シリーズが何を狙ったカメラなのかが見えてきた。ポイントは、単に「グローバルシャッターを搭載したリモートカメラ」ということではない。グローバルシャッター、高速パン・チルト、高速ズームを組み合わせ、リモートカメラそのものを積極的に動かして画を作ろうとしている点にある。

今回発表されたAW-UE200シリーズとAW-UER200シリーズは、1.2型グローバルシャッター方式5K MOSセンサーを搭載するハイエンドリモートカメラである。AW-UE200/AW-UE210は2027年2月、ロール機構を備えたAW-UER200/AW-UER210は2027年度第1四半期の発売を予定する。

リモートカメラといえば、スタジオの高所やホールの固定位置などに設置し、離れた場所からパン、チルト、ズームを操作するカメラという印象が強い。しかし、IBCで実機を見ると、そのイメージが少し変わってくる。これは単に「人が立てない場所に置くカメラ」ではない。カメラ自体を高速に動かし、その動きを映像表現へ取り込むリモートカメラである。

パナソニックのリモートカメララインアップを紹介する展示パネル。新製品AW-UE200は最上段に位置し、AW-UE160、AW-UE150A、AW-UE100など既存モデルとともにラインアップを構成する

なぜリモートカメラにグローバルシャッターなのか

グローバルシャッターそのものは新しい技術ではない。だが、それをリモートカメラと組み合わせたところが興味深い。

AW-UE200/AW-UE210、AW-UER200/AW-UER210が搭載する1.2型グローバルシャッター方式5K MOSセンサーは、高速で移動する被写体を撮影した際に発生するローリングシャッター歪みを抑えられるほか、LEDウォールを使用したスタジオ収録や、照明演出を伴うライブイベントなどで発生するフリッカーの影響も低減できる。1インチ以上のMOSセンサーを搭載した映像制作用リモートカメラとして、グローバルシャッター方式の採用は世界初だという(2026年9月時点、パナソニック調べ)。

スポーツ中継での活用も考えられる。体育館やスタジアムの固定位置にリモートカメラを設置し、高速で移動する選手を追う。これまでスタジオカメラが担ってきた領域の一部に、リモートカメラが入っていく可能性も見えてくる。

ただ、IBCの展示で気になったのは、被写体が高速で動く場合だけではない。カメラ自身を高速に動かしたとき、グローバルシャッターがどのように生きてくるのかという点だった。

AW-UE200シリーズのパン・チルト最高速度は400°/s。ブースではカメラヘッドを素早く振り、この高速駆動を来場者の目の前で見せていた。リモートカメラというと滑らかな低速移動を連想するが、新シリーズは狙った方向へ素早く向きを変えられる。

パン・チルトを高速化しても、カメラを振った際にローリングシャッター歪みが目立てば、その駆動性能を画作りへ生かしにくい。グローバルシャッターと高速なパン・チルトを組み合わせることで、被写体の高速な動きだけでなく、カメラ自身を積極的に動かす撮影にも対応する。ここに新シリーズの特徴が見えてくる。

グローバルシャッター方式のセンサーを採用するにあたっては、単に新しいセンサーへ置き換えればよいわけではないという。センサーごとの特性を検証し、プロAV用途として求められる画質や色再現を実現できるかを確認したうえで採用している。高速駆動という目立つスペックの裏側で、映像制作機器としての画質や色再現も含めた調整が行われている。

さらに、5Kオーバーサンプリングによって高精細な4K映像を生成するほか、120fpsのハイフレームレート撮影とHD 180fpsのハイスピード撮影にも2027年度第2四半期に対応する予定である。スポーツ中継など、高フレームレートを生かした映像制作での活用も想定される。

0.5秒から180秒まで。ズーム速度にも広い振り幅

AW-UE200シリーズを「動かすカメラ」として見たとき、もう一つ重要になるのが新開発のズームレンズである。

AW-UE200シリーズのレンズ部。水平画角80°の広角から35mm判換算500mm相当までをカバーする光学22倍ズームレンズを搭載する

水平画角80°の広角撮影に対応し、光学22倍ズームによって35mm判換算22.5~500mmをカバーする。リモートカメラは設置場所を自由に選べないケースも多い。広角側でステージ全体を収めながら、必要に応じて500mm相当まで寄れるズームレンジを備えている。

さらに目を引くのがズーム速度である。テレ端からワイド端まで最短約0.5秒で移動する一方、最大180秒をかけてゆっくりとズームさせることもできる。

スポーツやライブでは、短時間で画角を変えて次の被写体を捉えたい場面がある。その一方、コンサートやスタジオ番組では、ゆっくりと画角を変化させたい場面もある。約0.5秒から180秒までという幅広いズーム速度によって、異なるカメラワークに対応できる。

最高400°/sのパン・チルトと高速ズームを組み合わせれば、カメラの向きを変えながら短時間でフレーミングを変更できる。一方、低速側では時間をかけた緩やかなズームが可能になる。高速駆動だけを追求するのではなく、速さと遅さの両方をカメラワークへ取り込める設計である。

AW-UER210W/Kの背面端子。AW-UER200W/K、AW-UER210W/Kは12G-SDI、3G-SDI、HDMI、IP出力を標準搭載する。さらにAW-UER210W/KはSFP28/+を2系統搭載し、制作環境やシステム要件に応じて接続方式を選択できる

電源を切っても情報が残るEペーパー

実機を見ていて、もう一つ目に留まったのが本体前面のEペーパーである。カメラ番号やステータス、IPアドレスなどを表示できるほか、QRコードを表示してWebページやマニュアルへアクセスする使い方も想定されている。

興味深いのは、Eペーパーの特性を生かし、カメラの電源を切った状態でも表示内容を保持できる点である。多数のリモートカメラを設置する現場では、電源を入れなくても本体を見ればカメラ番号を確認できる。ネットワーク設定を確認したい場合にも、IPアドレスを本体側で確認できるため、設置やメンテナンス時の識別に役立つ。映像性能とは直接関係しない部分だが、実際の運用を考えると実用的な機能である。

AW-UER210の本体前面に搭載されたEペーパー。展示機ではカメラ番号「2」を表示。電源OFF時にも表示を保持でき、カメラ番号やIPアドレスなどを本体から確認できる

AW-UER200シリーズはパン、チルト、ズームに「ロール」を加える

AW-UE200シリーズに対して、ロール機構を加えたモデルがAW-UER200シリーズである。パナソニックのリモートカメラとしてロール機構を搭載するのは今回が初めてとなる。IBC 2026ではモックアップが展示されており、その構造を見ると、新シリーズが目指す方向がさらに分かりやすい。

IBC 2026で展示されたAW-UER200シリーズ。パン・チルトに加えて-200°~+200°のロール機構を備え、センサーを含むカメラ部を光軸方向へ回転できる

AW-UER200/AW-UER210は、通常のパン・チルトに加えて-200°~+200°のロール機構を搭載する。特徴的なのは、映像を電子的に回転させるのではなく、センサーを含むカメラ部そのものを光軸方向へ回転させる点である。

この構造によって、カメラ部を90°回転させればセンサーを縦位置で使用できる。16:9映像の中央部分をクロップして9:16を作るのではなく、センサーの撮像領域を縦位置で活用して9:16映像を撮影できる。SNSやデジタルサイネージなど縦型映像の需要が広がる中で、リモートカメラ自体を縦位置へ切り替えられることは大きな特徴となる。

ロール機構の用途は90°の縦位置だけではない。-200°~+200°の範囲で任意の角度へ回転させることで、意図的に画面を傾けたローリング演出にも利用できる。パン、チルト、ズームに「ロール」という新たな動きが加わることで、従来のリモートカメラとは異なるカメラワークが可能になる。

さらに、このロール機構は映像演出だけを目的としたものではない。リモートカメラは通常、本体が水平になるように設置する必要があるが、AW-UER200シリーズではロール機構を利用して水平を調整できる。カメラ本体を水平に設置しにくい環境でも、ロール機構によって構図を調整でき、ワンタッチでの水平調整にも対応する。

これまでは「カメラを設置するために水平な環境を作る」という考え方だったものが、「設置したあとにカメラ側で水平を調整する」という考え方に変わる。ロール機構というと回転を生かした映像表現に目が向きやすいが、設置の自由度を広げる機構としても意味を持つ。

さらに、センサー全域を活用した映像から縦型映像を切り出し、16:9の本線映像と9:16の縦型映像を同時出力できる。ロール機構による縦位置撮影と組み合わせれば、同じカメラを通常の16:9制作だけでなく、SNSやデジタルサイネージ向けの9:16制作にも展開できる。ミラーレスカメラを縦位置に組み直して撮影するような運用を、リモートカメラ側で実現できる点は興味深い。横型と縦型の双方を制作する現場では、一台のカメラを複数のコンテンツ制作へ展開する可能性も広がる。

リモートカメラは「置いておくカメラ」から「動かして画を作るカメラ」へ

IBC 2026のパナソニックブースで新シリーズを見て、最も印象に残ったのは、グローバルシャッターという単独のスペックではなかった。

1.2型5K MOSセンサーのグローバルシャッター、最高400°/sのパン・チルト、約0.5秒から180秒まで設定できる光学22倍ズーム。そしてAW-UER200シリーズでは、そこへ-200°~+200°のロール機構まで加わる。それぞれの機能が「カメラをより自由に動かす」という方向へつながっている。

これまでリモートカメラの進化を見るときは、画質、ズーム倍率、IP対応、自動追尾といった項目に目が向きがちだった。しかし、AW-UE200シリーズとAW-UER200シリーズを実際に見ると、そこへ「カメラワーク」という要素が加わっていることに気づく。

高速で移動する被写体を追う。次の被写体へ素早くカメラを振る。ゆっくりと画角を変える。さらにAW-UER200シリーズでは、カメラそのものをロールさせ、必要に応じてセンサーを縦位置で使用する。人がカメラを担いで行う動きとは異なるアプローチから、ロボティックカメラならではの動きを画作りへ取り込む。AW-UE200シリーズとAW-UER200シリーズは、リモートカメラのカメラワークと運用の幅を広げる新たな方向性を示すシリーズである。