コロラドでは例年3月が最も降雪量が多い月となっていますが、今年はロッキー山脈の特に北部と南部の山岳地帯での降雪が多く、早くから雪崩れの発生や道路閉鎖が続いていますが、月末の3月31日(月)にはデンバーからロッキー山脈を西へ横断しているハイウエイ70号線の分水嶺に在るアイゼンハウワートンネルを過ぎてスキーリゾートタウンで有名なVailの町に向かう途中に在るVail峠の西に向う道路で自動車の玉突き事故が発生し、何と大型トレーラー数台を含む合計70台の車が巻き込まれる大事故となりました。
事故発生当時は大変な降雪のところへ強い風が吹いており道路での視界は殆どゼロという状況で大吹雪だったのですが、走行していた車が次々と衝突して死亡者1名、負傷者22名を生じました。この大事故により西へ向かう大動脈のハイウエイ70号線は7時間にわたって上りと下りの両ルートが完全閉鎖となりました。
この冬コロラドでの最大の交通事故となっています。ロッキー山脈もいよいよ春のシーズンに入りますが、国道70号線はまだまだ急変する厳しい天候に見舞われるので道路管理のチームにとってはまだまだ気が緩められない時期が続きます。
デンバーオートショー開催
その年の新型モデルを中心に毎年恒例の自動車ショーがデトロイトを皮切りにニューヨーク、ボストン、ロサンゼルスと開催されて、いよいよデンバーのコロラドコンベンシヨンセンターで3月26日(水)から30日(日)の5日間にわたって開催されました。
- Aurariaキャンパスに新設されたサイエンスセンター
- 地球温暖化対策のRenewableエネルギーの学術研究を行う事を主体とした学部がAurariaキャンパスに在るコロラド大学のデンバー校に新設され、新しくその校舎がキャンパスの北の端に新設されました。この校舎の設備はコロラド大学だけでなく、Aurariaキャンパスの3大学のどの学生、教授も利用する事が出来ます。今年9月からの新学期から運用が始まります。
Denver International Auto Showという名称での開催ですが、展示会場はアメリカンフットボールのコートの約5面分の広さのスペースに世界の各自動車メーカー36社の2008年モデルを主体とした総計550台以上の自動車が展示されています。
先にブッシュ大統領が署名して昨年末に成立した2020年迄に自動車の燃料消費率性能を35マイル/ガロン以上に向上させる事を実現させる事を義務付ける法律を受けて、今回の自動車ショーでは、更にガソリン価格の高騰及び地球温暖化防止のグリーン/クリーン対応策を主要なテーマとしての催しとなっています。
エタノール、クリーンデイーゼル、「Plug-in型」充電可能ハイブリッド、燃料電池と言った技術的な開発を折り込んだモデルが焦点となっていますが、一方で現在アメリカではハイブリッドカーが注目されてはいますが、その売り上げはまだ自動車販売全体の5%位に留まっており、特に従来型の自動車の価格に比べて価格が高く付く事が拡売の足を引っ張っている状況です。
例えば、ハイブリッド車でポピュラーなトヨタのPriusの価格は22、000ドル位ですが、同クラスの従来型の自動車の価格は18,000ドル位となっている現状です。
西部山岳地域の各州では最大の規模となっているデンバーオートショーですが、その年の最後の大規模自動車ショーとなっています。
このショーの入場料は10ドルで7才から12才の子供は半額の5ドル、6才以下の子供は無料となっており、3月26日の開催初日は65才以上のシニアは無料で入場出来ます。主催者側では5日間の合計入場者は10万人以上となると見込んでいます。
- コロラドコンベンシヨンセンター入り口
- デンバーオートショーが開催されているコロラドコンベンシヨンセンターの入り口です。デンバーのダウンタウンに在って3年前に会場内部が2倍近くの広さに大改装されました。その後コロラドでの大小の多くの主要な催しがここで開催されてい ます。入り口前の左右に走っている通りは14th Streetで、この通りに面して新築されたハイヤットホテルを始めとして多くの新しいホテルのビルが新築計画されています。 総収容能力の大きなホテル、十分なスペースの催事場、そして空港からの良好なアクセス交通手段とが3点セットで準備されて全米規模のいろいろなショーの開催が可能となるとの計画で進行してきています。
ショー開催期間中の3月26日にイギリスの自動車の名門であるジャグアーとランドローバーの2つのブランドの事業を現在所有しているアメリカのフォードモーター社より発表があって、この2つの事業を手放してインドのTata Motors社へ売却するという事が伝えられて一大ショックを各参加者に与えています。
売却価格は17億ドルでフォード社がこの事業を買収した時の価格の約1/3の価格となっています。
また、買収後のイギリスでのこの2つのブランドの製造部門での雇用などの変化は差し当たり無いとTata社で言っています。
時代の流れを感じさせられるニュースですが、フォード社は本来のFordブランドの自動車事業に専念するのだ、と言っていますが、一時的な多額資金調達には役立つものの今後どう事業展開して行く事になるのか注目です。
イラク戦争開戦以来5年が経過
ブッシュ大統領の「サダムフセインとその家族はイラクから24時間以内に立ち去れ」といういわば宣戦布告となるアナウンスが有って、その翌日にペルシャ湾に展開していた米海軍の艦船からのミサイル攻撃で始まったイラク戦争は今年の3月でまるまる5年が経過しました。
その間多くの出来事がイラクで起きましたが、未だに解決に至らず小規模な爆発によるテロ攻撃の処理に追われている状態です。
開戦5年の経過を機にブッシュ大統領のアメリカ国民に向けたTVを通しての演説が行われ「イラク戦争は必要であった。」との内容が述べられています。
一方、3月23日にはイラクのバクダッドでは道路脇に仕掛けられた爆弾によってパトロールしていたアメリカ軍兵士4名が亡くなり、イラク戦争開戦以来の5年間での米軍兵士の死亡者数が合計4000名に達したと報じられています。
コロラドからはコロラドスプリングスの町の南外れに在るFort Carson陸軍基地と私の住んでいるオローラ市の東外れにあるBuckley Air National Guard基地とから大勢の兵士をイラクやアフガニスタンへ派遣していますが、知り合いの人達の家族の中にもイラクへ行っているとか、イラクへ行っていたという兵士の事が多く聞かれる様になっています。
現在、イラクへは15万人のアメリカ軍兵士が駐留していますが、今後どう展開されるのか現在進行中のアメリカ大統領の選挙活動も通して重要な課題となっています。
そんな中にあって、コロラドの地元新聞ではイラク戦争開始以来5年間で亡くなったアメリカ軍兵士の統計記録数字が広い紙面を割いて掲載されています。
それによると
戦死したアメリカ軍兵士数 | |
合計 | 4,000名 |
男性兵士数 | 3,905名 |
女性兵士数 | 95名 |
年齢別の構成 | |
18才~20才 | 690名 |
21才~30才 | 2,474名 |
31才~40才 | 638名 |
41才~50才 | 168名 |
出身州 | |
カリフォルニア州 | 426名 |
テキサス州 | 371名 |
コロラド州 | 51名から100名の間 |
人種別 | |
白人 | 74.7% |
ヒスパニック | 10.7% |
黒人 | 9.4% |
アジア系 | 1.5% |
アメリカインデイアン | 1.0% |
混血 | 1.6% |
大洋の島民 | 1.1% |
部隊別 | |
陸軍 | 2,318名 |
ナシヨナルガード | 433名 |
陸軍予備役 | 129名 |
海兵 | 847名 |
海兵予備役 | 127名 |
海軍 | 78名 |
海軍予備役 | 14名 |
空軍 | 43名 |
負傷兵士数 | |
カリフォルニア州出身 | 3,048名 |
テキサス州出身 | 2,760名 |
コロラド州出身 | 101名から500名の間 |
としています。
亡くなった兵士の何れも若い人達が多く人生これから、と言う人達ですので何ともやりきれない気持ちになりますが、重傷を負った兵士の数はそれ以上に大勢にのぼっている、という事で、これも大変な犠牲という事になります。
こうした犠牲を負っても最新兵器を実戦での運用での更新をして来ているアメリカ軍ですので、今や世界最強、そして最新の兵器開発での対応と、圧倒的な実戦戦力を有するアメリカですが、対象敵軍がハッキリしている時は力を発揮出来ても、こうしたゲリラ戦となるとどれが敵で、どれが見方かハッキリしない中での戦闘という事になって、かってのベトナム戦争と類似な困難さに出会っていると言えます。
来年1月10日からは現在のブッシュ大統領から新しい大統領へ政権がバトンタッチされます。 これを契機にうまいイラクの問題解決策が打たれると良いが、と期待したいところです。
金持ちが長生きするアメリカ
先週公表されたアメリカ政府機関のDepartment of Health and Human Serviceによる調査の結果によると、ここ20年間でのアメリカ人の収入の不平等格差の拡大および金持ちと貧乏人との寿命の差について、それぞれの格差がますます大きくなっているとしています。
アメリカ人全体についての平均余命は年ごとに伸びていますが、特に裕福な人達の余命が大きく伸びており、この事が余命の大きな差となって現れている、と言えます。 そして、特に乳幼児の死亡率や心臓病やガンによる死亡率がこの差の拡大の結果を反映しているとしています。
連邦政府の「Healthy People 2010」と言うプログラムで、特に収入の差や人種や民族による差をなくそう、という目標を掲げて活動しているにもかかわらず、調査結果ではその差が年々拡大しています。
この社会経済的な差はどの年代のアメリカ人に付いてもその平均余命の差の拡大となって現れています。
この調査は政府のDepartment of Health and Human Serviceとネブラスカ大学の医療センターとの共同作業によって行われたもので、国勢調査の結果から全米の各郡毎にその住民の教育レベル、収入レベル、貧困度、住宅環境などのデータから指数を導きだして、人口の近い各郡についての10段階のクラス分けをしています。
1980年から1982年では最も裕福なグループでは最も貧困なグループに比べて2.8年の長生きとなっていましたが、1998年から2000年にかけては、その差は4.5年の長生きと差が拡大しているとしています。
アメリカでは高度な医療技術が進んでいますが、その恩恵を受ける為には医療費や医薬品費が非常に多額に必要とします。
また、健康食品や健康体造りに対する活動も盛んですが、それらに対応するにもお金が必要です。
また、日本の様に国民健康保険といった制度も有りませんので、個人がそれぞれの収入に応じて高額な保険料金を保険会社に払って保険に加入しています。
貧乏人は保険にも入れないと言った環境になっており、ますます貧富の差が広がる様になっているとも言えます。
現在のブッシュ大統領の前のクリントン大統領の時にその奥さんのヒラリークリントンさんがFirst Ladyとしてアメリカ人全員が加入する国民健康保険の制度を発案して連邦議会に計りましたが、あっけなく否決されて実現していません。
今回はヒラリークリントンさんは自ら大統領候補として現在民主党の指名を得る為にバラックオバマ候補と現在争っている訳ですが、もし彼女が新大統領となる様な事になれば、再度この国民健康保険制度が議論される様になると思われます。
もともとアメリカでは西部開拓の時代の「弱いものを乗り越えて強いものが西へ向かう」といった思想が強く残っており、真の意味で決して福祉国家と言えるわけではありません。
「貧乏人は死ねというのか?」と言う問いかけに対しては、「そうだ。」とは言いませんが、「何を言っているのだ。」と言った反応がある雰囲気を感じます。
コロラドの鉄道
デンバーのダウンタウンに在る鉄道の駅「Union Station」です。
1885年に建設された建物ですが、駅舎の赤いレンガに白の縁取りと言う組み合わせは東京駅に似た雰囲気が有りますが、アメリカ東海岸と西海岸とをつなぐUnion Pacific鉄道の拠点の駅であった事からUnion Stationと呼ばれています。
かってのアメリカ旅客鉄道最盛期には一日上り下りの合計60便が発着していましたが、現在では全米の旅客鉄道を運営するAMTRAK社のシカゴを起点としてアイオワ州のBurlington、ネブラスカ州のOmaha、そしてコロラド州Denver、ユタ州Salt Lake City、更にネバダ州Reno、カリフォルニア州Sacramento、そして終点の西海岸のSan Franciscoと結ぶ「California Zephyr」のニックネームで呼ばれている高速旅客鉄道列車が一日に上りと下り各1本の合計2便が運行されているだけとなっています。
しかしながら建物はかってのアメリカ大陸の交通が鉄道全盛期だった頃の雰囲気が感じられる建物となっています。
このCalifornia Zephyrの他にこのユニオンステーシヨンからは、冬季のスキー旅客を運ぶロッキー山中のリゾート地Winter Parkを定期的に運行する「Ski Train Rio Grande号」が走っており、夏には7月中旬から8月下旬の間毎週土曜日には避暑客を対象とした列車が運行されています。
また、コロラドの西の端のユタ州との州境に近いGrand Junctionの町はコロラドのワインの産地で知られていますので、シーズンの3月下旬から4月始めの間の週末には各ワイナリー見学やワインのテイステイングをセットにした「Grand Junction Wine Train」が運航されています。
そして、毎年7月の下旬に10日間の日程でコロラド州との州境に近いワイオミング州のシャイアンの町で繰り広げられる西部開拓時代を偲ぶカウボーイのお祭り「Cheyenne Frontier Days」への見物客を送迎する特別仕立て列車も運行されています。コロラド州の鉄道の起点となっています。
現在ではアメリカの鉄道輸送は乗客よりも貨物列車が主体となっています。特にコロラド州での貨物列車では石炭の輸送がその中心で、石炭専用の貨車を100台以上も連結して、その前と後ろにそれぞれデイーゼル機関車を配置した列車が多く見かけられます。非常に長い列車がユックリと走っていますので、鉄道の踏み切りでその列車の通過に出くわすと悲劇で、延々と長い間その通過が終了するのを待たされる事となります。
コロラドのロッキー山中では質の良い石炭が豊富に産出されますが、現在その産出量は輸送する貨物列車の数で制限されており、貨物列車が増やせればもっと多くの石炭を出荷出来ると言った状況です。
貨物列車はその前後にデイーゼル機関車が付いて運転されますが、それぞれに運転手がおり連絡をとりながら運航されています。
その合図に使われる汽笛は低音のかっての蒸気機関車の汽笛に似せた音となっていますが、全米共通な汽笛の長短のモールス信号で合図しています。
それぞれの合図の内容は下記のようになっています。
笛の音 | 音 | 意味 |
– | 短い単発音 | ストップ(ブレーキをかけて停止する合図) |
– – | 短い2発音 | スタート(発車の合図) |
― ― | 長い2発音 | ブレーキ解除 (ブレーキを開放する合図) |
– – – | 短い3発音 | バックアップ (後退の合図) |
― ― - ― | 長い2発音 短い単発音 長い単発音 | 踏み切り接近の合図 |
コロラドコンベンシヨンセンターの近くにある3つの大学のコロラド大学、メトロポリタン州立大学、デンバーコミュニテイー大学を収容しているAurariaキャンパスの端を走る路面電車です。昨年この路線が朝夕の通勤時の25号線の混雑緩和の目的で南へ延長されデンバー地区の最も南にあるLonetreeの町まで接続されました。デンバーのダウンタウンで働く人達やこの各大学のキャンパスで学ぶ学生たちには大変便利な交通手段となっています。
あとがき
コロラドでのスポーツの中では今まで殆ど人気が無かったサッカーですが、先のこのレポートで紹介した本格的なサッカー競技場も完成して、プロサッカーチームのColoradoRapidsの試合への観客も最近では増加してきており、特にコロラドでのヒスパニック人口の増加が引き金となって若い人達のサッカー熱が高まってきています。
3月29日の土曜日の夜にはデンバーの北東に接するCommerce Cityに在るDick’s Sporting Goods Parkのスタジアムでプロサッカーのイギリスからのスター選手のDavid Beckham選手を擁するロサンゼルスGalaxyチームを迎えて試合が行われましたが、Rapidsが4-0と大差で勝利しました。
ホームグラウンドでの強敵を相手にしての勝利と言う事で地元は大盛り上がりでした。
まだまだ野球やアメリカンフットボール、バスケットボール、アイスホッケーといったプロスポーツに比べると地元の関心は低いのですが、確実に人気が上昇してきている、と言う状況です。
地元選手がオリンピックやワールドカップなどでアメリカのナシヨナルチームに多く出場するようになって大活躍をするというような、何かトリガーがコロラドでのサッカーに今一つ必要、と言った雰囲気です。