今回デンバーで8月25日から4日間にわたって行われた民主党全国大会(Democratic National Convention)は、幸い好天気にめぐまれ、特に最終日のBarack Obama候補の大統領候補の指名を受けて行った受諾演説はプロフットボールのデンバーブロンコスのホームグラウンドで7万人の観衆を前にして行われましたが、屋根の無いオープングラウンドだけに雨などが降らない様に祈るだけでしたが、たまたま異常とも思える程の好天気で最大の盛り上がりをみせました。

一大政治ショーが無事終了したデンバーでは、「大成功」の評価が広く行われて特にHickenlooperデンバー市長はホッとしていることが充分伺えるTVニュースでのデンバー市民に向けての感謝のコメントが発表されています。 また、地元新聞にはDenver News Agencyの新聞1ページを使った「Thank You」という大きな見出しでのデンバー市民へ向けての協力に感謝する広告が載せられ、また、デンバー市警察からもやはり市民に向けた感謝を表す新聞1ページ広告が載りました。 イラクへの派兵中止を求めるものや、妊娠中絶法案反対等の大規模なデモも行われましたが、デンバー市警察が万全の警備体制で140人の逮捕勾留者を出しましたが、大きな暴動等になる前に抑えられ死亡者等が出なかったのは何よりでした。

一方、共和党の全国大会はミネソタ州のミネアポリスと隣接していてTwin City と呼ばれているセントポール市に在るXcel Energyホールで9月1日から4日間の予定で行われますが、先のメキシコ湾岸の各町特にルイジアナ州ニューオルリーンズに大被害をもたらしたハリケーンのカタリーナに匹敵する規模のハリケーンが予測される進行コースも類似で接近中と言う事で特にルイジアナ州やミシシッピー州の共和党員は出席出来るだろうか? といった心配がされておりどうなるか注目されています。

今回の共和党全国大会でJohn McCain氏が大統領候補に指名されて、いよいよ民主党のBarack Obama氏との11月4日(火)の選挙投票日に向けての決戦となりますが、どのような結果となりますか注目です。

7月末にシアトルへ行った時の紹介を5回に分けてこのレポートで番外編「シアトル紀行」として5回に分けてお送りしていますが、今回はその4回目です。 あと更に次号の1回でまた「コロラド紀行」へ戻りますが、読者の皆さんがシアトルへ旅行される時の参考になればと願っています。

シアトル紀行 「DAY FOUR」

シアトルの町の中心を南北に縦断している国道ハイウエイ5号線を南へ少し下がって、シアトルタコマ国際空港の出口より少し手前のExit 158で降りると直ぐにその一帯がBoeing Fieldと呼ばれる地区になっています。

大型航空機のボーイング社が今から80年前に創業した場所であり、現在ではボーイングの主力工場はシアトルから少し北へ行ったところに在るEverettの町に広大な大型航空機の製造工場を有して操業しており、これから出て来る同社の次世代主力旅客機となるBoeing 787 Dreamliner機の製造が現在そこで行われています。  また、ボーイング社の本社機構は今迄このシアトルに在りましたが、2年程前にシカゴへ移転しています。

Boeing Fieldには小規模な工場や倉庫、そして今回訪問した「The Museum of Flight」(航空博物館)が在って、当時の滑走路もまだ残っていて、現在でも軽飛行機や小型機の離発着に使用されており、年間約30万機の離発着を取り扱っているとしています。

Boeing Fieldにある航空博物館

今年でボーイング社がBoeing Fieldで創業してからちょうど80周年を迎えたことから、「The Museum of Flight」では80周年の記念行事として、英国航空が所有保存している超音速ジェット旅客機コンコルドの実物や、アメリカ大統領の専用機「Air Force One」の初代機の実物、そしてNASAが1万メートル以上の高空を亜音速で長距離飛行する旅客機開発のデータ収集に使用した実験機の実物等の野外展示が行われていて、それぞれの内部を見学者達が見る事が出来る様になっていました。

また、博物館の周辺の野外には、ジェット戦闘機3機と双発のプロペラ輸送機1機が常時野外展示されています。  そして博物館の内部の広い展示場には合計85機のかって活躍した航空機の実物が所狭しと展示されていて壮観です。

創業当時このBoeing Fieldは1928年から公式な空港として郵便物を扱う主要ハブ空港として利用され、特にシアトルとロサンゼルス間の定期航空郵便のサービスに使われていました。そして、第2次大戦中にはボーイング社はここでB-17やB-24といった良く知られている爆撃機の製造を行っていました。

この博物館はその説明員など内部での保守の作業はボーイング社を退職した元従業員たちのボランテイアの人達で運営されており、毎日午前10:00から午後5:00迄開館しています。

7月26日(土)には80周年記念行事の一環として、滑走路に現在商用旅客機として活躍しているボーイング767型機を引き出してその前輪に長いロープを接続して大勢の見物客が引っ張って約20フィート(6m)動かすと言うアトラクシヨンが行われた後、今度は「Strongman」として知られているタコマに住んでいるMark Kirschさんが一人でそのロープを牽引して約10フィート(3m)動かすというデモを行い皆の喝采を浴びました。ボーイング767型はその機体重量が20万ポンド(91トン)もありますのでなかなかの運動となったと思います。

The Museum of Flightの航空機展示場
道を挟んで隣接している広大な駐車場から眺めた各種航空機の展示されている建物です。周囲がガラス張りの広大な航空機の展示場ですが、ボーイング社製だけでなく他社製造の航空機もこの内部には多数展示されています。建物の外には、ジェット戦闘機3機種が野外展示されていました。
博物館の入口前の芝生に展示されている機体
博物館の前も広い駐車場となっていますが、其の端に在る芝生の広場に野外展示されているプロペラ双発の旅客機の実機です。
博物館入口の2階部分にせり出している管制塔
博物館への入口の2階部分は外に突き出していて、付属している滑走路で離発着する飛行機のコントロールタワーとなっています。また、入り口の両翼にはボーイングの航空機で顧客となっている国の国旗が掲揚されており、もちろん日本の日の丸も掲げられています。
新旧大小58機が展示されているメインホール
その総展示数58機と言う事ですが、この博物館のメインホールの実機展示場を覗いたところです。航空機ファンの人にとってはこの展示場だけで見学に一日かかりそうな程の展示規模で、驚かされます。
天井からも吊り下げられている機体の数々
別の角度から見たメインホールの様子です。各航空機が所狭しと立体的に展示されており、天井からも多数吊り下げられていますので、この建物はかなりその梁が丈夫につくられているのだなあ、などと感心させられました。
館内のあちこちに設置されている「80周年記念」の説明ボード
いろいろなトピック別の歴史的な解説とともに「Happy 80th Anniversary Boeing Field」と記載されたボードがあちこちに見受けられました。今回の80周年記念の為に館内に新設されたものです。館内は日曜日と言う事もあってかなり大勢の見学者で混雑していました。
創業時の復元社屋「Red Barn」
木造の中央の建物が80年前に「Boeing Airplane Company」としてボーイング社が創業した時の建物を修復保存しているもので、外壁が赤い色で造られていたので「Red Barn」と呼ばれていました。現在、内部は特に当時の様子をいろいろと再現している展示が行われていて大変勉強になりました。右のガラス張りの建物はメインホールの航空機展示場です。
館内での「Red Barn」への入口部分
「Red Barn」への連絡通路の入り口です。アメリカの航空界にボーイング社が果たした役目が如何に大きかったかを認識させられる内部展示となっており、歴史の勉強にも大変なります。
Boeing Fieldでの社屋の縮尺模型
Red Barnを中心として当時のボーイングフィールドでの最盛期の建物を再現している縮尺模型です。中央下に当時使用されていた自動車と思える模型が2台見えます。
B-29爆撃機による日本空襲の解説
館内にあった唯一の日本に関する展示ですが、爆撃機B-29による日本本土爆撃に関する解説パネルです。そういえば、当時、東京を始め日本の各地の主要都市の爆弾攻撃で脅威となったB-29爆撃機はボーイング製でした。
英国航空が保存している超音速旅客機「コンコルド」の特別展示
80周年記念の特別野外展示されていた超音速旅客機コンコルドです。コンコルド機は商用旅客機としては今迄で唯一のものですが、フランスのドゴール空港で離陸時に落下して大事故をおこして以来営業を停止しましたが、この展示機はBritish Air社が保存しているもので、「コンコルド」としてはその後もっとも最後に飛行した実機との事です。見学者は内部を見物出来る様になっており、そのコックピットをガラスの遮蔽越しに見る事が出来る様になっていました。私の記憶では、たしか離発着時に仰角が大きいので操縦席から地上がよく見える様に操縦席を含む機体の先端が下がる様になっていたと思いましたので、「この機体にはその折曲がる部分が見えないが、どうなっているのか? 」と説明員に質問しましたが、「確かにコンコルドは機体先端部が折曲がる様になっているが、この展示機は其の部分が見えない理由は良く分からない」との回答でした。
初代の「Air Force One」の特別展示
やはり80周年記念として特別に展示されているアメリカ大統領専用機の「Air Force One」の初代機です。アメリカ大統領がその専用機を持つ様になったのは太平洋戦争当時のルーズベルト大統領が最初との事ですが、「Air Force One」という名称で専用機として使われ始めたのはアイゼンハウワー大統領が最初で、この展示実機はそのアイゼンハウワー大統領が使用した初代のものであるとしています。見学者は内部を見物出来る様になっています。
初代「Air Force One」のコックピット
初代「Air Force One」の操縦席をガラス越しに覗いたところです。
NASAが使用した高空、亜音速、長航続距離の大型航空機開発の為の実験機の特別展示 
航空宇宙開発で有名なNASAが商用航空機で1万メートル以上の高空を音速より少し低い速度で、航続距離を長く採れる大型航空機を開発する事を目指して開発した実験機の実機です。やはり80周年記念の特別展示ですが、ボーイング社がこの製作に当たりました。この機体を使って多くのデータを収拾してその後出て来る大型商用旅客機の実現に寄与したものです。

あとがき

シアトルのダウンタウンからはこのボーイングフィールド迄の定期往復バスのサービスが有り、また、シアトルタコマ国際空港周辺のホテルやモーテルへ泊まっていると電話で予約申し込みするとマイクロバスがピックアップしてこの博物館迄の往復輸送サービスを低料金で行っています。

更にボーイング社の大型旅客機のEverett工場の見学もシアトルのダウンタウンの各ホテルから予約すると送迎サービスをマイクロバスで行っていますので、次回にはこのEverett工場の見学をして、ボーイング787型Dreamlinerの製造の進行状況を確認してみたいなどと思っています。「The Museum of Flight」の方は内部のカメラでの撮影は自由ですが、Everett工場の方はカメラの持ち込みが禁止されています。

現在までに、ボーイング787型Dreamlinerはその燃料消費の経済性の高い事から世界の各航空界社より合計700機以上の事前予約注文が集まっているとされており、其の中でも日本のANA(全日空)では、トップの50機の予約をしていると言う事で大変注目されていますが、現在、その出荷が大幅に遅れており、初号機は今年の11月又は12月には市場での初飛行が見られる予定になっていますが、更にそれ以上の出荷時期遅れが生ずるかどうかが焦点となっています。

WRITER PROFILE

萩原正喜

萩原正喜

米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。