YouTubeの進化に映像世界の未来を見る
Inter BEEが終了して約10日。来場者数は、過去最多となる35,715人だったそうだ。各ブースを巡ると、「今年は人が少ないような気がしませんか?」「すこし閑散としている感じがするねー」とメーカーの人から聞かされた。もちろん放送機器展であり、主役は映像機器たちであることは間違いないのだが、どうやらインフラ・キャリア関連、サーバー関連、そしてネット系に人が集まったということなのかも知れない。時代の流れではあるが、ネット上の動画についても同様まさしく過渡期である。
今回取材を通してネット上の動画については、昨年とは良い意味で大きく風向きが違うことを感じた。共通言語として浸透しているように思えた。その代表格といえばYouTubeであり、凄まじいスピードで進化し、世界を侵食している。先日お伝えした「マジックワードは&fmt=22?YouTubeHD化の波」というコラムから、数日後には、実際にYouTubeのプレイヤーが16:9画角になったことが印象的だ。
ここまでYouTubeについて言及するのはなぜか?それは大きな可能性だ。映像の世界は、デジタルそしてネットとは親和性が非常に高い。映画レベルの作品をネット上で小さな端末から編集する未来の世界は容易に想像できるだろう。本国では、先日行われたアメリカ大統領選にも大きく使用され話題になった。日本でも、大手メディアなどは積極的ではないが、驚くことに農林水産省の他にも、防衛省、文部科学省、そして首相官邸といった省庁や政府関連機関が既にチャンネルを開設している。
もちろん編集部でも目新しい映像を探すにはYouTubeを覗いてみる。わずか3年前に登場したこのサービスをすべて見るには2000年ほどかかるという。そんなYouTubeを取り上げているのが12月1日発売のBRUTUS。コンピューター雑誌や映像関連メディアではなく、ついに一般誌が特集を組むということが大きな意味を持つ。
白い表紙に「YouTube 完全攻略なんでもブック」とあるが、How toというよりも、YouTubeというサービスを通して、表現の多様性を感じさせてくれ、我々の映像とのあり方を示唆するものに近い。
表現の可能性を探る上でYouTube側も映像クリエイターを支援している。使わない手はないだろう。YouTubeのエンジニア&開発者達が研究した新機能のベータ版を体験できる「Test Tube」だ。実験室。昨年はYouTubeで映像編集ができるAdobe Premiereのオンライン版「YouTube Remixer」が公開され話題を呼んだ。昨年のInter BEE取材でもPRONEWS編集部は、YouTubeのプレイリスト連続再生機能を使用することで大量の動画をスムーズに処理でき、大いに助けられた。現在は注目の動画がインタラクティブになる”アノテーション機能”、再生リストの共有ができる”アクティブ共有 “などが提供されている。
映像製作者やユーザーを巻き込み、YouTubeは驚くべきスピードでリアルタイムに進化しているのも面白い。その進化は時に思いもよらないものを生む。少し前に話題となったWarioLandの映像もその好例のひとつといえるだろう。
再生をするとワリオは、動画の枠を飛び出してしまう!一見普通のYouTubeに見えるが、ヘッダーより下の部分にはフローティングのFlashを表示させているようだ。再生後もプレイヤー自体もドラッグ&ドロップで動かすことができるところも面白い。広告であるはずなのに楽しめる。ぜひ見てほしい。ちなみに制作を手がけたのはGoodby, Silverstein & Partnersというユニークなキャンペーンを数多く手がけるクリエイティブエージェンシー。
YouTubeは動画共有サービスなのだが、映像に留まらない1つの新しい表現として見ることもできる。それは、映像の未来を映しているともいえるのだ。