12月15日(月)の早朝にはデンバー空港での公式な最低気温が、何と華氏マイナス19度(摂氏零下28.3度)という低い気温を記録して、観測が始まって以来の数字を示してビックリさせられました。

12月15日の日付での過去の最低気温は1951年に記録された華氏マイナス6度(摂氏零下21.1度)ですので、今回はまともでない寒さの体験となりました。

デンバー地区で市販されている自動車のワイパーの洗浄水が華氏マイナス20度までの保証となっていますので、タンクが破裂するのではないか、と思いましたが、幸い我が家の車は問題が生じませんでしたが、道路上に停まってしまっている車が多く見られました。また、市内のあちこちで水道管が破裂して大水といった騒ぎも起きています。

気温低下に合わせて前日から降った雪は15cmほどの積雪で、その雪掻きは降雪量としてはたいした事が無く、気温が非常に低かったので完全な粉雪状態でしたので楽でした。ただ、毛糸の手袋の上に革手袋を重ねて作業を行いましたが、10分もしないうちに手の指が凍えて痛くなってきてしまうので、車のエンジンをかけっぱなしにしておいて、少し除雪をしてから車内で指を暖めて、また除雪作業を続けるといった初めての経験をしました。

前日の日中からTVのニュースでは犬等を外に出しておくと凍死してしまうので家の中へ入れる様に、との警告がアナウンスされて市の家畜保護局の人達が町を回って野犬等を車に収容するという作業が行われています。

また、デンバーのダウンタウンにあるシェルターには、ホームレスの人達を急遽強制収容するという事が行われましたが、市のシェルターや救世軍の施設も満員で簡易ベッドの数が足らず、床に毛布を敷いてごろ寝と言った状況がTVで報じられています。

ガンなどの多くの渡り鳥達は、デンバーの町中を流れているSouth Platte Riverの水温が外気に比べて高いのを察知して 川面からもうもうと湯気が立ち上っている川の水の淀んでいる場所等に群れを成して水浴している光景の写真が翌朝の地元新聞の紙面に大きく掲載されています。

また、デンバーのダウンタウンの主要な建物にはデンバーの北のCommerce Cityに在る工場から暖房用の水蒸気をパイプで供給していますが、そのパイプの分岐点に有る地上への排気口の鉄格子の上で毛布をかぶって寝転んでいるホームレスの人とその脇には沢山の鳩が集まって暖をとっている、といった光景の大きな写真が地元新聞の1ページ目の見出しに掲載されました。

何しろ、その前日の日中の気温は華氏58度(摂氏14.5度)だったので、短時間の間で大きな気温差が生じる冬の典型的なコロラドの気象ですが、風向きにより南西のアリゾナ州の方から風が吹くと気温が上昇し、北西からの風となるとカナダからの寒気が一気にモンタナ州、ワイオミング州を抜けてコロラドが震え上がる、と言った最近です。

デンバー空港で離陸機が滑走路から逸脱炎上

12月20日(土)の午後6時18分にデンバー空港からテキサスのヒューストンへ向けて出発したコンチネンタル航空の1404便ボーイング737−500型機が、滑走路を走行し始めてから間もなく滑走路から大きく左に外れて草原を滑走した後停止し、直後に発火し機体の右半分が大きく焼けるという大事故となりました。

奇跡的にも乗客と乗組員合計115人は緊急脱出して死亡者は無く、負傷者は合計35名が2年前にオローラ市に在ったFitzsimons陸軍病院の跡地に新設されたコロラド大学の付属病院とデンバー市内の2つの大きな病院へ搬送され手当を受けましたが、乗客の1名と機長がやや重傷で、それ以外の負傷者達はいずれも軽傷ですみました。

また、機体が草原を滑った後停止した場所から僅か200フィート(60m)の場所にはデンバー空港の3カ所の消防隊の建物のうちの1カ所が在って、事故発生後直ちに救助、消火活動が行われると言う驚く程の偶然さが伴っています。

機体は全長12000フィート(3658m)の滑走路のスタート地点から2650フィート(808m)の地点から滑走路を左に大きく外れており、約2500フィート(762m)地面を引きずった後停止しています。

ボーイング737−500型機は客席数108席の小型旅客機で今迄にこの様な事故を発生したと言う記録が無く、アメリカでもっとも多くの機体数を各航空会社が使用しているボーイング737型機の中で最も短い胴体のモデルで、信頼度が高いことで定評の有る機種となっています。

早速事故調査チームが結成されて調査が始まっていますが、最終報告書は1年後くらいにリリースされると言う事です。 なお、事故機のフライトレコーダーとボイスレコーダーが完全な形で回収され、その解析作業が開始されています。

1995年に開港したデンバー国際空港はアメリカ内の商用空港の中では最も新しい空港ですが、今迄に離発着に関してはこの様な事故の発生が無く、唯一、2001年9月5日に英国航空のボーイング777型機がゲートへ到着して乗客や荷物が全部降ろされた後で給油作業中に燃料供給ホースが航空機から外れて燃料が溢れ出し発火し、同機は焼損大破して、供給作業していた地上作業員1名が大やけどを負ってしまった、という大事故を起こしています。

事故当時の気象状況は良好でしたが進行方向左側からの風時速31マイル(時速49.8km)が吹いていましたが、特別に離陸に支障が出る程とは思われません。

原因が何だったのかの究明は大変重要ですが、重傷を負っているパイロットの一人の回復を待って事情聴取が行われる事になっています。

同機は双発のジェットエンジン機で、左側のエンジンは地上を引きずった際に機体から落下しており、焼けただれた右側のエンジンは残っていましたが、車輪は途中で脱落していました。

離陸時でしたので両エンジンはフルスロットル状態で、推進力が最大の状態の時に突如何かの原因で左エンジンが停止したとすると今回の様な状態になるのではないか?と言った素人考えで私自身の推測ですが、どうでしょうか?

ともかくこんな大事故にも関わらず死亡犠牲者が一人も出なかったということは奇跡に近く、大変良かったと思います。

コロラドでのビジネス今年の10大ニュース

「今年の10大ニュース」が日本でもいろいろなカテゴリーについて報道されている時期と思いますが、コロラドの地元新聞Rocky Mountain News紙でも12月27日(土)のビジネス欄で「コロラドの今年のビジネス10大ニュース」と言う事で掲載されています。

それによりますと、下記の様なコロラドでの今年の出来事がピックアップされています。

1.コロラドでも不景気に突入

コロラドでの失業率が増加して来て、11月の実績で5.8%となり、昨年11月の実績4.0%に比較して大幅な悪化となっています。

コロラド大学のビジネススクールの調査予測では来年2009年には6.5%に達するとしています。

コロラド州の現在の抵当件率は全米でのワースト10に入って来ており、2年前に全米でベストでトップを走っていたのと様変わりとなっています。 住宅の購買は低調で、売れ残っている住宅件数は3年振りの増加数となっています。

そんな中、こうした経済不況の打開策として知事のBill Ritter氏とデンバー市長のJohn Hickenlooper氏とは新たな経済刺激政策を打ち出そうとしているところです。

2.新たなエネルギー経済政策が進行

Ritterコロラド州知事が押し進める新エネルギー推進政策に乗って、今年2月には石油メジャーの1社のConocoPhilips社がデンバーの北のLouisevilleに在るSun Microsystems社所有の広大なStoragetek社跡地を買収して、水素燃料電池、太陽光発電、風力発電、そしてクリーンデイーゼル燃料等の開発研究所を開設する事となりました。

また、3月にはデンマークの風力発電設備の世界的大手のVestas Windsystems社がデンバーから北のWindsorに風車のブレードの製作工場を開設しました。そして更に同社では8月からデンバーから北東のBrightonに2カ所のブレードと発電ユニットの製作工場を新たに開設すると発表しています。

また、Vestas社ではコロラドの南のPuebloの町に風車のタワーの製作工場を開設すると発表しており、同社としては合計で2010年迄にこれらの新設拠点に6.3億ドルの投資を行う事になります。

今年6月には、ドイツの大手シーメンス社がデンバーの北西のBoulderに風力発電のタービン開発研究所を開設すると発表しています。

既にデンバーの西のGoldenに在るNREL (National Renewable Energy Laboratories)などのRenewable Energyの実用化推進活動に向けての強化や新しくデンバーのダウンタウンの3大学の集合キャンパス内に新しくRenewable Energy学科の新設が行われる等、コロラドの全米でのこの分野でのイニシアテイブをとった活動が行われています。

3.コロラドでの新しい労使関係を修正した法律が成立

11月の選挙時の住民投票でコロラドのビジネス経営者とその労働組合との間で労働者側に不利となる法案が審査されて多くの討議が行われた結果、修正が加えられて新法案として成立し、新たな労使関係の条件下での活動がスタートしています。

4.フロンテイア航空社の会社更生法適用

デンバー空港をハブとしているフロテイア航空がその格安航空運賃競争の激化および航空燃料の高騰等のあおりを受けて経営状態が悪化し、今年4月10日に会社更生法の適用を受ける事となり破産裁判所の管理下で現在その経営再建を計っています。

  

同社では、占席率の悪い便の運行停止、燃料効率の悪い古い航空機の売却、乗客の荷物に料金チャージ開始、そして従業員労働組合との合意で賃金の低減などの具体策を実施しています。

5.石油/天然ガス掘削業界と州知事の対立激化

Ritterコロラド州知事の新エネルギー政策に基づきコロラドでの石油/天然ガスの掘削業界に対して新たな環境保護条件を課す事になり、両者間での対立が激化しています。

6.Qwest社の前CEOのインサイダー取引裁判

デンバーに本社を持つ地方電話会社の大手Qwestの前CEOであったJoe Nacchio氏の同社株式売却に伴うインサイダー取引に関する容疑についての2001年以来の裁判で、今迄の審議を棚上げにして新たな公判が持たれ、彼はその裁判での判決で6年の懲役と1900万ドルの罰金が申し渡されました。

7.アメリカ連邦政府の内務省のデンバーの西に在るLakewoodの役所Federal Mineral Management Service の関係担当者のセックス、麻薬、石油利権にまつわるスキャンダルの発覚

内務省からこの件に関する調査レポートが公表され、関連担当者は解雇されています。

今回新しいBarack Obama政権でのSecretary of Interior(内務省長官)に新しく、コロラド出身の連邦議会の上院議員Ken Salazar氏が指名されたのは、こうした内務省内の腐敗を払拭して改善する為にコロラドから選んだ、とされています。

8.Rocky Mountain News新聞社の売却交渉

コロラドの地方新聞の一つで、発刊以来150年の歴史を誇るRocky Mountain News新聞がそのオーナー会社から他への売却先を交渉中との発表が行われています。 同紙はここ数年赤字が継続しており、オーナー会社はDenver Post紙も所有しているが、2紙を運営する事が大変困難となっている、としています。

来年前半迄に買収者が見つからない場合には同紙は廃刊となるとしています。

9.コロラド内のギャンブル場をサポートする法律成立

コロラド内の各ギャンブル場について、現在その最低賭け金額は5ドルと法律で定められていますが、これを100ドルにアップする事、及び24時間オープンの営業を許す法案が12月の住民投票で可決されました。

  

これによって、コロラド州立のコミュテイカレッジ各大学の運営費用の3/4を賄う様に各ギャンブル場からの税金が使用されます。

10.コロラド州内の酒屋での日曜日の販売が解禁

コロラド内で営業する各酒店では今まで日曜日の酒類の販売は許されていませんでしたが、今年7月6日から日曜日の営業販売が許される事となっています。

以上がコロラドのビジネス、経済に於ける2008年の10大ニュースですが、 今年は広く全般では、

  • アメリカ新大統領にBarack Obama氏が決定
  • デンバーで民主党全国大会が開催
  • ニューヨーク証券取引所での株価大幅下落
  • 北京オリンピックでの水泳競技でMichael Helps選手が金メダル8個獲得
  • ガソリンの小売価格が一時4ドル/ガロンを越え、その後大きく下落

など、非常に沢山の出来事が起きました。
新しい2009年には平和で明るいニュースが10大ニュースを占める様に期待したいと思います。

フォトギャラリー

私の家内の母親は来年5月に満100才の誕生日を迎えます。現在、老人ホームへ入っていますが、今回のクリスマスデイには私と家内それに近くに住んでいる次女と3人で訪問して内部のレストランで昼食を共にしました。
その時にレストランの内部にクリスマスの飾り付けが成されていましたが、非常に多くの人形や玩具の家等が飾り付けられていて見事だったので、皆さんに紹介します。

オローラ市内に在る老人ホーム内部のX’masの飾り付け(1)
私たちのテーブルの脇に飾られていた様子です。 沢山の飾り付けで驚かされました。
オローラ市内に在る老人ホーム内部のX’masの飾り付け(2)
一枚の写真に収まりきれないので全部を3分割して撮影しました。 これは全体の飾り付けの左端部で、比較的大きな人形で飾られていて近くに人が近づくと自動的にクリスマス音楽とともに動き出して歌い始めます。
オローラ市内に在る老人ホーム内部のX’masの飾り付け(3)
全体の飾り付けの中央部に飾られている沢山の家の模型です。
オローラ市内に在る老人ホームのロビーに飾られたX’mas ツリー
ロビーにはピアノが設置されていて、時々ボランテイアの人達が来て演奏を老人達に聞かせる様になっています。 今回は私の娘が即興で数曲演奏しました。
オローラ市内に在る老人ホームのロビーの様子
自分の日常の生活を自分自身で面倒をみられる人達が住んでいる老人ホームをRetirement Home と呼んでいます。そして、他の人の助けや看護を必要とする人達の老人ホームはNursing Home と呼んでいます。 私の家内の母親は100才になんなんとしていますが、大変元気で現在このRetirement Home に住んでいて、このホームでの一番の長老となっています。

このオローラ市内のRetirement Home は総勢250名程の老人達を収容出来る大きな施設で、それぞれが独立したアパート形式の部屋とな っていて、中には夫婦で入居している人達もいます。 3階建ての大きな建物でその上り下りにはロビーの両側に2基のエレベーターがあって階段を利用しなくても良い様になっています。 24時間勤務の受付や清掃、食事などのスタッフが揃っていて部屋の気温はセントラルヒーテイング/クーリングとなっているので夏冬共に安心できます。 隣の敷地にはオローラ市内へ飲料水を供給する水道局の浄水場があって、私の家内の母親は天気の良い日は建物の外周の散歩道を、天気が良くない日には建物の内部を一日2回散歩するのを日課としていますが、敷地の散歩道では野うさぎ達やプレーリードッグ達を多く見かける事が出来ます。
あとがき

いろいろな出来事が有った2008年ですが、後数日を残すのみとなりました。 経済状況が悪化してきているので、今後どうなってしまうのだろうか? という不安を皆さんが抱えながらの年越しとなりますが、2009年はコロラドのデンバーで開催された民主党全国大会で指名を受けて当選したBarack Obama新大統領 の新政権がアメリカ全国民の期待を担ってスタートします。
多くの目前に横たわる困難を克服しなければなりませんが、彼の若さとそのバイタリテイで乗り切っていって欲しいと思います。

この「コロラド紀行」についての皆さんの本年のご愛読有り難うございました。 2009年も鋭意アメリカのハイテク田舎コロラドの様子を皆さんに紹介してご参考に供したいと思っていますので、皆さんの変わらぬご高覧を頂きたいと願っています。

皆さんのご家族揃って元気に明るい新年をお迎え下さい。

WRITER PROFILE

萩原正喜

萩原正喜

米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。