先の冬期にはロッキーの東山麓や東の平野部への降雪は例年に比べて非常に少なかったのですが、ロッキー山中への降雪は例年以上の降雪が有って、お陰で冬期間の降雪に依存しているデンバー地区の水道水はその各貯水池が全て満水となっていて今年の夏の水不足の心配は無さそうです。

例年5月1日から始まる家庭での芝生への散水の規制は今年は1週間に3回以内で、一日のうち午前10時から夕方の午後6時迄の間を除く時間内にのみ許される、という通達が市の水道局から出されています。使用する水量の制限やHouse Numberの奇数/偶数による散水日の指定が今年は有りません。

5月に入ってから既に我が家では家の前庭と裏庭の芝刈りを2回行いました。またスプリンクラーによる定期的な散水も始めています。1月〜3月の間に雪や雨が少なかったため5月にも降雪の可能性があり、屋根の上に設備しているスワンプクーラーの水通しをやるべきか待つべきか迷っていますが、来週にはやろうと思っています。

5月5日はCinco de Mayo, 5月10日はMothers Day, 5月25日はMemorial Dayと言う事で、コロラドではいよいよ夏の季節の訪れです。

豚インフルエンザ/H1N1ウィルス

突然「降ってわいた様な」感じもしますが、従来の鳥を介して伝染する鳥インフルエンザに代わって豚を介して伝染する「Swine Flu(豚インフルエンザ)」でその発生源と思われるメキシコに於ける4月28日現在の当局の統計で159人がそのSwine Fluによるものと思われる原因で死亡しているとしています。(Swineとは家畜の豚の事で、通常PigとかHogと言っていますが、日本ではピッグが一般的です。)現在26症例確認されており、その内の7例が死亡に至る、とされています。

メキシコでのSwine Fluと思われる患者数は現在2498人に達しており、アメリカ国内での患者数は66人が確認されており、その内の45名はニューヨークでの患者となっています。

メキシコでは5月6日迄の間感染を食い止める為に全国の学校を全て閉鎖しており、人々に感染を食い止めるのに有効な石鹸による手洗いの励行やうがいなど、また混雑している所へ行かないなどの基本的な対応策を通達しています。

コロラドはメキシコとの国境から近くに在り、陸上輸送が盛んな場所に位置しているだけでなく、デンバー国際空港とメキシコシテイーを始めとしてメキシコ内のアカプルコやカンクーンといった観光レジャー地との直行航空便が頻繁に行き来している事からインフルエンザの感染の機会が多く、今の所まだSwine Flu患者の発生は認められていませんが、コロラドの衛生当局では警戒態勢に入っています。

デンバーに在る日本総領事館では管轄内の在留邦人向けのE-Mailによる通達サービスでこのSwine Fluに対する警報を流しており、米国疫病管理予防センターや国務省から発せられているメキシコへ渡航を予定している人は緊急でない限り暫く渡航を延期する様にとの通達を報じています。

各医療機関での患者の検査が進んで来て、最新の情報では、5月7日現在で全米での患者数は896人となって、そのうちの死亡者数は2名となっているとしています。 コロラド州では5月7日迄の発症累計数は25名を数える程になっています。

突然のとんだハプニングですが、現在まだ予防のワクチンが準備されておらず、重症になると死に至ると言う事で一大事となっていますが、早く沈静化する事を祈るばかりです。

Earth Day(地球環境を考える日)

4月22日は「Earth Day」で国際的に「このかけがえのない地球環境を考える日」となっています。

日本でもいろいろな催しが行われたものと思いますが、アメリカはこの行事には1970年4月22日から参加しており、温室効果ガスの放出量の削減について国際的に討議する為に開かれた京都会議でのいわゆる「京都議定書」の実行計画に対して時のブッシュ政権ではアメリカ経済の低迷を招くと言う事でその批准について拒否して来ている事はご存知の通りです。

この事に対して世界の各方面からアメリカの独善的な行動と言う事で非難の声が上がりましたが、新政権オバマ大統領のもとで今後どのような対応が為されるのか注目されています。

今年のEarth Dayに当たってコロラドの地方新聞デンバーポスト紙には、その特集記事としてアメリカが参画した1970年から2007年の間でいろいろなコロラド州及び全米での関係する基礎数字を比較の形で載せて紹介しており、以下の様な内容となっています。

1970年 – 2007年 コロラド州 アメリカ全体
人口の増加 +119.2% +47.1%
輸送に使われたガソリンの量 +71.6% +62.7%
電力消費量 +339.3% +190.3%
天然ガス消費量 +79.1% +9.0%
エタノール燃料の消費量* +276.2% +1048.3%
石炭の消費量 +293.2% +112.6%
家庭での石炭消費量** -96.0% -100.0%
* …1985年 – 2007年 / ** …は1970年 – 2006年

E85、バイオデイゼル、天然ガスなどの代替自動車用燃料の供給スタンドの設置数

1位 カリフォルニア州 921カ所
2位 テキサス州 600カ所
3位 ミネソタ州 398カ所
4位 イリノイ州 276カ所
5位 サウスカロライナ州 186カ所
13位 コロラド州 162カ所

代替燃料の自動車での年間消費量

1位 カリフォルニア州 10910万ガロン
2位 テキサス州 4940万ガロン
3位 アイオワ州 2620万ガロン
4位 アリゾナ州 2310万ガロン
5位 ジョージア州 1600万ガロン
14位 コロラド州 720万ガロン
 

全供給電力に風力発電が占める割合

1位 ミネソタ州 7.48%
2位 アイオワ州 7.10%
3位 コロラド州 5.91%
4位 ノースダコタ州 4.86%
5位 ニューメキシコ州 4.41%

などとなっています。

また、コロラド州の家庭や事業所に電力と天然ガスの供給を行っている主力会社であるXcel Energy社の最近の報告の2008年全体の発電に使用したエネルギー別の構成は

石炭 57.05%
天然ガス 31.55%
風力 9.83%
水力 1.40%
太陽光 0.05%
原子力 0.04%
石油 0.04%
バイオマス 0.04%

等となっていて、州内や北隣のワイオミング州で豊富に産出する良質な石炭や天然ガスによる発電が依然として主力を務めています。

また、Xcel Energy社がここ数年力を入れて来ている風力発電の比率がいよいよ10%に近づこうとしている事は注目されます。

更にコロラドの南部の地域は年間の日照時間が長く、土地が砂漠化している程ですが、その太陽光を使ってのソーラーパネルを沢山設置しての発電は大規模な物は最近やっと始まったばかりで、現在まだ全体の0.05%にすぎませんが、今後その比率を徐々に伸ばして行く状況にあります。

地球環境を考える日「Earth Day」に当たって、こうした基礎数字が公表される事は人々の関心を高める意味で大変有意義な事だと思います。

フォトギャラリー – 3大学の集合キャンパス内に在る工場跡を利用した建物「Tivoli」

デンバーの街の中心地にはコロラド大学のデンバー校舎、Metropolitan State College、Community College of Denverの3大学が集まっているAurariaキャンパスが在ります。其の一角に昔ビール工場だった建物を殆どそのまま改装して学生達の日常の活動や食事、文房具や書籍の店などを開いている「Tivoli」と言う施設の建物です。看板には「TIVOLI Student Union」と記されていますので、日本で言えば「学生生協」と言う所でしょうか。

今回、その建物の中のホールでリンカーン大統領の生誕200年にあたる今年を記念して、デンバーに在る日本総領事館、コロラド日系人協会、メトロポリタン州立大学の3者の共催でリンカーン大統領の研究での第一人者のWilliam Pedersonルイジアナ州立大学教授の講演会が「日本におけるリンカーン:一米国大統領が残した影響力を考える」という題目でこのTivoliの中のTurnhalle で開催されたので参加聴講しました。

今回の写真はTivoliの建物の紹介です。こちらはTivoliの中央入り口です。
Tivoliへのサイド入口

正面の中央入り口の横に在る補助の入り口です。

ビール工場の跡を利用している建物でその外壁はレンガ造りとなっています。建物の内部はレンガの壁がそのまま露出しているところが多く当時の工場の雰囲気を醸し出しています。

当時の大きな高い煙突がそのまま残してあります。
Tivoliの建物内にある小ホールの「TurnHalle」の入り口

左へ入るとがらーんとしたコンクリートの床の部屋でサイドの壁にはやはりレンガが露出していて、天井が当時の工場のままで非常に高くなっています。
講演をされたWilliam Pederson教授

講演が終了して、聴講者と談笑する教授です。聴講者は合計40名程で、日系人協会の年寄りが多く、またメトロポリタン州立大学でPederson教授の学科を聴講している学生達が10名程参画していました。

約1時間程の講義でしたが、私が特に印象に残ったのは現在の日本の天皇が皇太子のころ、アメリカのペンシルバニア出身のバイニング婦人と言う人が、英会話を始めいろいろな世界の文化を教える為に教育係・家庭教師として来日し数年活動されていましたが、その一部でリンカーン大統領の功績についてかなり力を入れて教育した、という事実があるという事でした。写真の背景にレンガの露出した壁が見えているのが大変印象的でした。

1里も西へずれていた州境Four Cornersのマーカー

コロラド州は南北の境界が緯度線、東西の境界が経度に沿って決められているので、東西に少し横長の長方形となっています。

実際には地球が球形をしているので東西の緯度線は北へ行くほど狭くなっており、南北の経度線は平面に直すと中央部が両サイドより南へ膨らんでいるので、コロラド州を平面の地図上で見ると扇形となっています。

コロラド州の南西の角はFour Cornersと呼ばれていて、コロラド、ユタ、アリゾナ、ニューメキシコの4州の州境が1つの点で接しています。

このFour Cornersにはその地点の地面にマーカーが敷設されていて、そこを訪れる人々がその点に立つと4つの州にまたがって立てると言う事で記念写真を撮ったりしています。

また、そのマーカーの周辺にはアメリカインデイアンの人達が観光客を相手にするお土産物屋をいくつも出しており、特に春から夏のシーズンにはキャンピングカーで訪れる人々がシーズンには多く見かけます。

ところで、このFour Cornersのマーカーが最近の調査で少しコロラド州に入ったところが正しいと言う事が分かり、なんと正しい地点より2.5マイル(約4km=1里)もズレているといると言う事です。

この地点は1868年に当時のアメリカ政府の国土地理調査が行われた時に計測して決められており、ユタ州のSan Juan郡に住むDavid Bronsonさんが最近調べてそれが大幅にズレている事に気がついたものです。

ちなみに、コロラド州と西隣のユタ州との境界線は西経109度で、コロラド州と南隣のニューメキシコ州との境界線は北緯37度と決められています。あまりにも大幅なズレですので地殻変動で地面が動いたものとは考え難くい事から1868年に実施した測量ミスによるものと思われてます。

ところで、このFour Cornersの大幅なスレが分かってそのマーカーを新しく造り直すかと思いきや、「まあ、それはそれで良いではないか!」と言う事で行政上の地理では修正されるものの、マーカーの方は現在のままで今後もやって行くとしています。

この地域はコロラド州から昔のジョンウエインが主演して有名となったアリゾナ州の映画「駅馬車」のモニュメントバレーに向かう国道160号線から少し入ったところにあり、コロラド州側からニューメキシコ州側へ流れているSan Joan川の流域で石ころだらけの河原ですので、このFour Cornersマーカーでも無い限り誰も住んだり活用したりすることが無い土地となっていますので、異議を唱える人もいないと言う優雅な環境です。

この辺りから金でも発掘されればFour Cornersの利権を巡って4州の争いとなるでしょうが、そうでなくて良かったと言う結末です。

ちなみに、コロラド州では最近になってロッキー山脈の多くの峰の山頂の標高の数字を修正しており、更にはデンバー市が「Mile High City」と言う事で、コロラド州庁舎の正面の石段の丁度標高1マイル(1609m)の段に金属製の直径10cm程のマーカーが取り付けられていますが、過去2回のマーカーと最近の測量によって確認された3番目のマーカーとで合計3カ所に取り付けられています。

測量技術の進歩により年ごとにその精度が高くなって来ている為と思いますが、それにしても州の境が長い間1里もズレたままだったとは驚きです。

あとがき

コロラドはメキシコ系の人達が多い事で知られていますが、そのメキシコ系の人達の一年中で最も熱の入るお祭り日「Cinco de Mayo(5月の5日)」が今年も来ました。

毎年デンバー市の中心のCivic Center Parkを会場としてメキシカンハットダンスやアメリアッチバンドの演奏、メキシコ特有の手芸品の販売などいろいろなメキシコ風文化の催しものが行われます。

町中のレストランではこの日ばかりはいろいろなメキシコ料理やマルガリータなどの飲み物を特別価格で見物の人達にサービスします。また、デンバーの中心街を自動車にメキシコ国旗を掲げてクラクシヨンを鳴らしながら沢山の自動車が走り回ります。

このお祭りの催しをデンバー市がサポートしており、多くのコロラドの企業が資金援助をしているので、アメリカの各都市の中でもデンバー市のシンコデマイヨが最も盛大だと言われています。

今年のシンコデマイヨは第22回目ですが、5月5日が火曜日でウイークデイですので、市内の交通混乱を招く事や、このお祭りに参加する人達の集まり具合も良くないのでこの運営委員会では5月9日(土)と10日(日)のウイークエンドにずらして開催することをTVや新聞で大きな紙面を割いて人々に連絡していました。

以前はこの日には街でテキーラなどを飲み過ぎて酔っぱらった人達がいろいろとトラブルを起こしていましたが、近年ではデンバー市警察の誘導で比較的穏やかな行事となっています。メキシコ系移民の人達の活気を盛り立てる年中行事となっています。

WRITER PROFILE

萩原正喜

萩原正喜

米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。