11月26日(木)はアメリカではThanksgiving Dayでしたが、私の家内の母親が今年の5月で満100才を迎え現在老人ホームへ入っていますので、前日に老人ホームで開かれた昼食会へ参加して、翌日のThanksgiving Day には私たちが個人的に日常懇意にしている牧師さんの教会で開かれた昼食会に出席しました。

この教会はなんとユニークな事に大型トレーラーの運転手たちを対象としている教会で、トラックストップと呼んでいる大型トレーラーの休息所に在って大型トレーラーの内部を改装して教会としています。

「Transport for Christ」と言う名称のキリスト教団体で本部はペンシルバニア州のMariettaに有って、アメリカ国内では19の州に27カ所のトラックストップに教会を持っています。その他に外国ではカナダの5州に6カ所、そしてなんとロシアのモスコーに2カ所、セントピータースバーグに1カ所、そしてアフリカのザンビアの国境のトラックストップにも1カ所を設けています。

コロラドはその多くの教会の一つですが、デンバーの北東のCommerce Cityの国道ハイウエイ70号線沿いに在るZapp Brothers Truck Stop に在って牧師さんのJohnさんと奥さんのEdraさんとで運営していますが、日常的な活動のサポートを5人の牧師さんの資格を持った有志たちが行っています。

今回のThanksgiving Dayには運転手たちへ昼食のご馳走をすると言う事で招待されて、その手伝いをかねてご馳走になりました。今回のこのレポートの各写真はそのトラックストップでの様子をお伝えします。

トレーラートラック運転手たちを対象とする教会

デンバーの北東のCommerce Cityのトラックストップに在る教会で実際に今迄走っていたトレーラーをそのまま改造して教会として使用しています。車両は重いコンクリートブロックで動かない様に固定されており、左の階段の付いているところが入り口です。

年中無休で毎日朝から晩迄開いており、キリスト教会ですがお祈りする運転手のその宗派は問いません。


牧師のJohnさんと奥さんのEdraさん

牧師のJohnさんはオハイオ州の出身で以前は石油メジャーのBP社の大型タンカートレーラーの運転手を長年やっていました。退職してから牧師の資格を取得して、この「Transport for Christ」に加わりました。当初オハイオ州の教会へ赴任したのですが、その後デンバーに新しく教会を造ると言う事で4年前にその活動を助ける為に派遣されて来ました。

前任の牧師さんが年取ったのでその後を引き継いでいます。


教会へ来る運転手たちにご馳走する為のサンクスギビングの食事

朝から晩迄次々と運転手たちがやって来ますので、写真は全部の一部ですが、別の部屋に沢山準備してあり、直ぐにセルフサービスで取って食べられる様に小出しでこの様に暖めておきます。

ちなみに左側にある3連の底深の鍋の入った電気温熱機は私の家内がこの教会へ寄贈したものです。


トレーラートラックの運転手たちの食事の様子

次々とトレーラーがこのトラックストップへ入って来ます。その運転手たちがセルフサービスで準備された食事を楽しんで行きます。

トレーラー運転手の中には女性もかなり居る事が分かりましたが、話を聞くと夫婦でトレーラートラックの運転をやっていて、タッグで運転を交代しながら長距離を走っていると言う人達もかなり居るのだと言う事が分かりました。

運転手たちは日常話し相手の居ない環境に居るためか皆大変饒舌でにぎやかな会話が弾んでいます。こうしたトラックストップでの運転手たちの共通の場は彼らの情報交換の場でもあって職業上大変重要な一面と言う事です。


デンバーの北東に在るZappo Brothersトラックストップの看板

デンバーの北東に隣接しているCommerce Cityの国道ハイウエイ70号線沿いに在るZapp Brothersトラックストップの看板です。

国道を走るトレーラーからよく見える様に高い柱の上に看板が付いています。夜はこの看板は電気照明されて良く目立ちます。


トラックストップで休んでいるトレーラートラックの群

運転手たちはこのトラックストップで休憩したり仮眠を取ったり、シャワーを浴びて食事をしたり、トラックに燃料を供給したり、接続積載したトレーラーの重量を計測したり、そして教会で道中の安全を祈ったりなどします。


トラックストップで休んでいるトレーラートラックの一部

運転手たちはこのトラックストップで睡眠をとりますが、仮眠はトラックの運転台の後部がベッドとなっていて、そこで眠ります。また、トラックにはセルラー電話とパソコンを積んでいてワイヤレスで本部と通信して次の仕事のスケジュールや現在位置の申告、そして緊急時の通信などを行う様になっています。

運転手たちと話していて、トレーラーの方はその輸送貨物の会社や運輸会社が所有しているので個人所有の必要はありませんが、この牽引トラックの方はリースで購入して個人所有で営業している人がかなりの比率だという事が分かりました。また、長距離の輸送には2人でチームを組んで一人が運転している時はもう一人は後部のベッドで眠っていて、途中で交代して継続運転して行くと言う方法がとられています。中にはメキシコやカナダとの国境を越えて輸送すると言う人も居ます。


トラックストップに在る燃料供給スタンド

運転手たちはこのトラックストップで特別安価な料金での燃料給油を受けられます。また、右に有るのはトレーラーの積載重量を計測する大きな秤でトレーラーごとこの上に乗せて計測出来る様になっています。

国道ハイウエーには所々に車載重量の検問が行われていて規定以上のトレーラーは取り締まり対象です。そして所によっては橋や地方の舗装の悪い道路などでは走行車両の重量制限なども有りますので運送する品物の重量も勘定書に重要ですが、走行にあたっての必要条件項目となっています。


トラックストップの建物

Zapp Brothers トラックストップの建物の一部です。中にはレストラン、トイレット、シャワールーム、仮眠ベッド室、日曜雑貨売り場、会議室などが有って、建物の右側の端に2カ所見えるのがトラック部分の修理場で、途中で生じた故障箇所を専門のメカニックが居てこの中へトラックを入れて修理してもらえます。


トレーラートラックの洗車機

この大型の黒い建物はトレーラートラックの洗車機です。トラックのみはもちろん、トレーラーを牽引したままでもそのままこの中で洗車出来る様になっています。


トラック洗車機の裏側

大型のトレーラートラックの洗車機の反対側から見た光景です。


所有車を低ガソリン消費の車に買い替えさせる政策

今年7月初めより8月末迄の2ヶ月間アメリカ政府ではSUV車とミニバンそして小型トラックを対象に今迄使用していた燃費の悪い車を燃費の良い車に買い替える人に対してその燃費の改善率によって3500ドル又は4500ドルの補助を行うと言う事が実施されました。

これは今迄使っていた車を公認燃料消費率(マイル/ガロン)から買い替えた車の公認消費率の数値を引いてその差が燃料消費の改善率と言う事で4~9マイル/ガロンの場合は3500ドルの補助、9マイル/ガロン以上の場合は4500ドルの補助金が買い替え費用の一部として支給されると言った仕組みで、「Cash for Clunkers」プログラムと言う名称で実施されその実績が報告されています。

全米では合計67万7081台がこの対象で新車に買い替えられ補助金支給の合計金額は28億5000万ドルとなり、コロラド州では8500台で3620万ドルとなっています。

今回のこの2ヶ月限定の制度の目的は

  • 車からの排気ガスを減少させて、ガソリン消費を節約し炭酸ガスの排出量を減らしてクリーンエアー化とともに地球温暖化を抑制する。
  • 石油の輸入量を削減してドル安で輸入金額が増大するのを防ぐ。
  • アメリカ経済の低迷で、特に自動車の購買力が落ちて来ているのをこの刺激策で活性化する。

といった狙いで、自動車の中でも特に効果的と思えるSUV、ミニバン、小型トラックを対象として実施しています。

最も効果が出た買い替えは、古い燃費の悪いSUV、ミニバン、小型トラックから乗用車への買い替えで、特にハイブリッド車への買い替えが成果を上げています。

全米の中でもコロラド州は山岳地帯がその半分を占めており、冬期の降雪の影響などからSUV、ミニバン、小型トラックが自動車全体の58%占めており、乗用車の台数比率は42%となっています。

今回の2ヶ月間での買い替え台数の43%はSUVとミニバンを乗用車への買い替えで、その平均燃費改善値は13.2マイル/ガロンとなっており、全体の35%はSUVとミニバンを新車に買い替えており、6.1マイル/ガロンの平均改善率となっています。

コロラドでの買い替え台数のメーカー別のトップ5の実績は

買い替えで提供されたメーカー別の車の台数 買い替えで購入されたメーカー別の車の台数
フォード 2326台 トヨタ 1651台
シボレー 1353台 ホンダ 1150台
ジープ 1127台 フォード 820台
ダッジ 750台 スバル 665台
ニッサン 472台 現代 650台

コロラドでのモデル別の買い替え購入台数トップ5は

ホンダ CR-V 4WD 332台
トヨタ Prius 314台
トヨタ Corolla 294台
ホンダ Civic 285台
トヨタ RAV4 4WD 276台

コロラドでの買い替えの為に提供された古い車モデル別トップ5は

Ford Explorer 4WD 869台
Jeep Grand Cherokee 314台
Jeep Cherokee 4WD 385台
Nissan Pathfinder 4WD 288台
Chevrolet Blazer 4WD 278台

などとなったとしています。

また、実際の買い替え例として最も燃費面で大きな差がついたケースは、

1986年型Dodge W150 Pickup Truck トヨタPrius
10マイル/ガロン 50マイル/ガロン

と言う事でなんと1ガロン当たり40マイルもの改善となったとしています。

そして、補助金の支給された台数は

  • 4500ドル:6328台
  • 3500ドル:2209台

となっています。

ちなみに、燃費改善率ではカリフォルニア州が首位で平均10.4マイル/ガロンで、最下位はルイジアナ州で8マイル/ガロンとなったとしています。特に顕著な傾向として、首位トップ5の州がカリフォルニア、オレゴン、ユタ、アリゾナ、コロラドと西部に偏っていて、最下位のボトム5の州がルイジアナ、アーカンソー、ミシガン、ミシシッピー、サウスダコタと中部の各州となっている事です。

アメリカ自動車産業の中心地デトロイトの在るミシガン州がボトム3となっているのは、買い替えされた自動車がアメリカ車からアメリカ車であったためと思われます。

今回の「Cash for Cranker」プログラムでははからずも日本車販売助成に役立った形となりましたが、アメリカメーカーでもここのところ新車の宣伝広告に多くの資金を投入して「燃費面でも良いのだ」と訴えていますので今後どうなるか興味がもたれます。

日本車の良いところは燃費だけでなく故障が少なく中古となっても補修費用が少ない事をアメリカの消費者は知っているところに有るようですので、毎日使用しているアメリカでの自動車の事ですから、もうしばらくは日本車の優位はキープされそうです。

Broadband Mapping政府補助金プログラム

前ブッシュ大統領の時よりアメリカ政府はアメリカでのブロードバンドサービスの家庭への普及を計るための政策の一つとして、それを可能とする設備の設置する為に補助金を支給する方策がとられています。

アメリカ商務省のNational Telecommunication Administrationでは今回コロラド州に対してブロードバンドサービスの設備設置の為に2年にわたって160万ドルの補助金を与える事になったとしています。また、コロラド州はこのブロードバンド普及の為の調査費用として5年間にわたって50万ドルの補助金も併せて支給されるとしています。

今回の政府補助金はコロラド州議会で2008年に成立したブロードバンド普及促進の為の法律の施行をサポートするもので、州知事直轄の情報技術室で推進しています。

アメリカ政府ではブロードバンドサービスの商用スタートは早かったものの、その後一般への普及が遅々として進まず世界的にも遅れをとって来たことから政府がその普及促進の後押しをする事になったものです。

あとがき

地上波TV放送のデジタル移行に伴ってデンバーの地元放送局4社

  • KUSA:Channel 9
  • KMGH:Channel 7
  • KCNC:Channel 4
  • KTVD:Channel 20

がLake Cedar Groupという組織を作って共同でデジタル放送専用の送信アンテナをデンバーの西のGoldenに在るデンバー地区を一望に見渡せるLookout Mountainに新設した事は以前のこのレポートで報告しました。

このアンテナを建設するにあたって地元住民グループCanyon Area Residents for the EnvironmentおよびGolden市への約束としてJefferson郡へ提出している念書では、今迄のアナログ放送の送信アンテナはデジタル移行が行われてから1年以内に解体撤去するか、すべてのアンテナに付帯する機器を撤収する事となっています。

それに対応する為にLake Cedar Groupでは大型クレーンを入れて、まずChannel 9のアンテナ、そして次にChannel 7のアンテナ、更にChannel 4という順序で解体撤去に入り、前者2基は天候が許せば年内に、そして3基目は来年春迄にというスケジュールで進行させる事にしています。

デジタル専用の共同アンテナの新建設には地元住民とLake Cedar Groupとの間で10年近い争議が続いており、一時はFCCの定めたデジタル移行期限迄にデジタル放送電波が出せないのではないか、と心配されましたが、連邦議会のコロラド選出の上院議員2名の政治介入によって何とか間に合いましたが、FMやAM放送のアンテナも含めて数多くのアンテナが建てられているLookout Mountainから大型TV放送アンテナ3基が消えます。

WRITER PROFILE

萩原正喜

萩原正喜

米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。