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新開発の4.1-73.1mm/F1.6の18倍ズームレンズを搭載

昨年のInterBEEでモックアップを出展して注目を集めたファイルベースビデオカメラが正式発表となった。InterBEEの時点では1/3光学系を採用することしか公表されていなかった。その後も2月2日に最高50MbpsでMPEG2のフルHD 422フォーマット(MPEG2 422P@HL準拠)によるMXF記録であることが発表されたのみであった。

今回の発表はNAB2010への出品を控えた事前発表で、カメラは外観やデザインのみで実際には撮影できないモックアップだったが、NAB2010には撮影可能な実機が出品される。なお、今回XH G1SやXH A1Sの関係と同様HD/SD-SDIを搭載したXF305とHD/SD-SDI非搭載のXF300の2機種がXFシリーズとしてラインナップされている。

4:2:2記録に見合った新開発高性能レンズを搭載

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82mmのフィルター径ほぼいっぱいのレンズ口径
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オートフォーカスとマニュアルフォーカスの切り替え
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設定情報と静止画はSDメモリーカードに記録される
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LCDは左右どちら側にも向けることが可能
 

このクラスの小型ビデオカメラはAVCHDやHDVを採用しているものがほとんどで、記録は4:2:0の24MbpsかXDCAM EXでも35Mbpsとなっている。MPEG2 422P@HLの50Mbpsを採用しているのはXDCAM HDなどの放送グレードのカメラだ。

高画質記録が可能な記録系を採用したことからそれに対応したカメラ部分の性能が求められるが、非球面レンズやHi-UD(高屈折異常分散ガラス)などを採用することで、色収差を極限まで低減するとともに解像度1000TV本を実現している。解像度1000TV本という数値はHDカメラでは一般的なスペックだが、通常は中心解像度のみだ。今回、周辺解像度も800TV本以上と公表しており、画面全域で高解像度が期待できる。

4.1-73.1mm/F1.6の18倍ズームで、35mmカメラ換算約29.3-527.4mmという仕様のレンズの割には大口径のレンズなのは、こうした高性能のためなのだろう。ちなみにFドロップの範囲は公表されていないが、82mmのフィルター径ほぼいっぱいのレンズ口径なので、かなり優秀なのではないだろうか。

小型ビデオカメラでは、オートフォーカスを採用している機種が多いが、XF300/XF305では、XH G1SやXH A1Sなどに搭載されているハイブリッド方式のハイスピードAFやEOSなどに搭載されているフェイスキャッチテクノロジーが採用されている。オートフォーカスを搭載したカメラでは、マニュアルに設定したときに、フォーカスリングの操作性に難点のあるものが多かったが、絶対角度で動作する機構をズームリングとともに採用しているほか、適度な粘りのある操作感を達成している。

これにより、操作性が向上しただけでなく、フォローフォーカスなど回転角の絶対値が必要となるアクセサリーも有効に活用できる。小回りの利く小型ビデオカメラというだけでなく、制作用のカメラとしての活用が、画質面だけでなく操作性といった面でも考慮された設計といえる。

光学系や記録系の性能を生かすには、それに見合うだけの画像処理が重要になる。XF300/XF305には、AVCHD 24Mbps記録対応のハイビジョンビデオカメラとして話題となったiVIS HF S10やiVIS HF20に搭載されていたDIGIC DV Ⅲという高速画像処理エンジンを採用することで、低ノイズ化と色再現、グラデーションの表現力をアップしている。DIGIC DV Ⅲに関しての詳細は明らかにされていないが、AVCHD 24Mbps記録対応の時点からすでに高速処理が可能になっていたようである。

制作用カメラとしての機能も搭載

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CFカードスロットは2基装備されている
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映像出力はHD/SD-SDIのほかHDMI、アナログコンポーネント、コンポジットが装備
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オーディオはキャノンコネクターにより外部入力も可能
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ディフォルトでステレオマイクが装備されているほか、別途ガンマイクを取り付け可能

ガンマやカラーマトリックスなどもアップグレードされており、26項目ものプリセットのほか、ユーザープリセットもできるようになっており、設定情報はSDメモリーカードに記録することが可能だ。なお、このSDメモリーカードにはプリセット情報以外に静止画も記録できるようになっている。

撮像素子は新たに開発された有効画素数207万画素の1/3型CMOSで、CMOS特有のローリングシャッター歪を軽減するため、2倍で高速読み出しを行っており、高速で動く被写体の歪を軽減している。

SDからHDになることで、ピントに関して非常にシビアになり、VFやLCDだけで正確なピントを合わせるのは困難な状況になってきている。したがってフォーカスをアシストする機能として、画面をピクセルbyピクセルで表示する機能を装備したり、各社工夫を凝らしている。

XF300/XF305では、LCDモニター表示の下部にピントの状態を波形で表示するEdgeモニター機能を新たに搭載されている。さらに、画面内に3箇所設定したエリア内のピント量を色別表示することで、前ピン、後ピンだけでなく背景のボケ具合も把握できるようになっている。なお、LCDモニター上に波形モニターやベクトルモニターを表示する機能も備えており、画像レベルや色の確認など簡易型ではあるが現場では重宝する機能を搭載している。

記録媒体はEOS 5Dや7Dと同様CFカードを使用する。スロットは2基装備されているが、同じ内容を記録することはできないのでバックアップが必要な場合は別途レコーダーなどを用意する必要があるだろう。XF305の映像出力はHD/SD-SDIのほかHDMI、アナログコンポーネント、コンポジットが装備されているので、レコーダーとの接続に苦労することはないだろう。また、ゲンロックやタイムコード、USBコネクターなども装備されており、複数カメラを使用したライブスイッチングなどカメラ単体での使用だけでなくマルチカメラとしてシステムを組むことも可能だ。

 

オーディオは、作り付けのステレオマイクが装備されているほか、キャノンコネクターにより外部入力も可能となっており、マイク入力、ライン、ファンタム電源の切り替が可能。さらに-20dBのATTも装備されている。オーディオの記録フォーマットは16bit48kHzのリニアPCMで2chとなっている。オーディオのクォリティが高いのは評価できるが、従来機種であるH1が4ch記録可能だったことを思うとちょっと残念な気もする。4ch記録ができればサラウンドの収録もオーディオレコーダーなしでこなせるのだが…。

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WRITER PROFILE

稲田出

稲田出

映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチルカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。