噂のNEX-VG10、本日公開!
すでに今月の14日に米国で発表になり、話題になっているNEX-VG10が国内でも正式発表となった。NEX-VG10は、コンシューマー向けのビデオカメラだが、先に発売となったデジタル一眼NEX-5 / NEX-3と同じEマウントを採用しており、NEX-5 / NEX-3用の交換レンズが共通使用できるようになっている。さらにマウントアダプターを使用することで、既存のAマウントレンズの使用も可能だ。
マウントアダプターを使用してツァイスレンズを装着
DSLRの風穴をあける存在?
NEX-VG10は、ハンディカム誕生25周年という節目の年に発売されるモデルで、撮像素子はAPS-CサイズのExmor CMOSセンサーを採用しており、コンシューマー向けのビデオカメラで通常採用されている1/3クラスのセンサーの20倍ほどの面積がある。動画撮影が可能なデジタル一眼がカメラメーカーから発売され、これを利用した作品作りがトレンドになっているがNEX-VG10は、こうしたDSLR(デジタル一眼)のキラーモデルになるかもしれない。
作品作りには、レンズが重要なポイントであることは、DSLRの例をみても明らかだ。一般にビデオ用のズームレンズよりデジタル一眼のレンズの方が画質が良く、作品制作には映画用のPLマウントレンズをアダプターなどを使って装着できるようにしている例もある。NEX-VG10のレンズマウントはEマウントとという従来のαシリーズのAマウントとは異なるNEXシリーズ用に新たに開発されたマウントを採用している。
一般にカメラメーカーが新たなマウントを採用することは非常に勇気のいる決断となる。というのは、マウントを変更するということはいままでの資産であるレンズ群を切り捨て、新たなマウント用にレンズラインナップを揃えなくてはならないからだ。これは、メーカーだけでなくユーザーにも負担になるのだが、EマウントはAマウントのように一眼レフカメラに付き物のミラーのないカメラ用に設計されたマウントなので、フランジバックが短く簡単なアダプターで、Aマウントのレンズをそのまま流用することができる。ただし、Aマウントのレンズはスチール写真用に設計されたということもあり、NEX-VG10に装着した場合連続したオートフォーカスモードでの使用はできない。
Eマウントレンズとしてズーム2本と単焦点レンズ1本がある
Eマウント用に新たに開発されたレンズは、NEX-VG10に標準付属の18-200mm F3.5-6.3 OSS(SEL18200)のほか、NEX-5 / NEX-3と同時に発表された18-55mm F3.5-5.6 OSS(SEL1855)と16mm F2.8(SEL16F28)の計3本がある。ちなみに、Aマウントのレンズには、カール ツァイスレンズやGレンズなど豊富なラインナップがそろっており、描写性能だけでなく、レンズのボケ味など作品内容に合わせてチョイスできるのは心強い。
記録フォーマットはAVCHDで、メモリースティックデュオ/PROデュオまたはSDXC/SDHC/SDメモリーカードへ1920×1080 /60i(59.94i)で、最大ビットレート24Mbpsで記録可能だ。センサーからの読み出しは30p(29.97p)で行われているが、記録は60iのみで、24pなどプログレッシブ記録には対応していない。AVCHDで24Mbpsという記録フォーマットは、コンシューマーでは高画質といえるが、センサーやレンズの性能を考えるとRAWデータに近いフォーマットで記録できないかという欲がでてしまう。もっとも、メモリーの容量や転送レート、撮影したあとの編集などの後処理を考えると妥当なフォーマットといえなくもない。
なお、撮影した画像を編集するソフトとしていままでハンディカムに付属していたPMB(Picture Motion Browser)に加えて、ソニークリエイティブソフトウェア社のVegas Movie Studio HD Platinum 10のダウンロードクーポンが付属する。
新しい映像スタイルを提案する
小型ビデオカメラとして標準的なデザイン。オプションのガンマイクECM-CG50を装着
外観デザインは、コンシューマのカメラというより業務用の小型ビデオカメラに近いが、操作ボタンなどの数は非常に少ない。設定などはメニューでLCDモニターの表示とLCD横にあるジョグダイアルで行うようになっているが、従来のハンディカムとはメニューデザインや設定などが異なり、NEX-5 / NEX-3に近い印象だ。なお、メニューデザインは一見タッチスクリーン操作を思わせるがタッチスクリーン式の設定には対応していない。また、LCDモニターは回転させることができるようになっているが±90°までなので、自分撮りのモニターとして使うことはできない。
NEX-5 / NEX-3のメニュー |
NEX-VG10のメニュー |
このクラスのカメラでは、LCDモニターのみでビューファインダーを装備していないものもあるが、NEX-VG10には0.43型のXtraFine TruBlackのビューファインダーが装備されている。このビューファインダーはLCDモニターを上回る解像度を有しており、マニュアルでのピント合わせもかなりの精度で合わせることが可能だ。
マイクは、ちょっと見サラウンド収録できそうだが、4つのマイクカプセルでステレオ指向性を得られる「4カプセルステレオマイクロホン」が搭載されている。着脱はできない仕様で、オプションとしてガンマイクECM-CG50が用意されている。
造り付けとなっている指向性ステレオマイク
カテゴリーをまたぐ幅広い存在となるのか?
NEX-VG10はソニーの商品ラインナップ上ではハンディカムとなっているが、APS-Cサイズの撮像素子により、被写界深度の浅い独特の描写が得られるビデオカメラだ。いままではデジタル一眼でしかこうした映像を撮影できなかったので、動画を撮影するように作られていない一眼レフカメラに様々なアクセサリーを装着してつかっていた。NEX-VG10はいわゆるカムコーダースタイルで動画撮影を前提に作られており、使い勝手という面ではビデオカメラのように使うことができる。ただ、操作系などはハンディカムシリーズでもなく、デジタル一眼αシリーズでもない独特のものとなっている。
カテゴリー的に便宜上ハンディカムのラインナップになっているが、個人的には先般発売されてNEX-5 / NEX-3の姉妹機種として従来のビデオやスチールといった枠にとらわれない新たな制作ツールといった捉え方のほうが理解しやすいように思う。NEX-VG10は動画撮影に特化したモデルで、NEX-5 / NEX-3はスチール撮影に特化したモデルというわけだ。ユーザーも今までのビデオやスチールを撮影して楽しむような人達というよりビジュアルクリエーター(こうした言葉が一般化しているかは別として)が使う新たなビジュアルツールといったほうがいいのかもしれない。
NEX-VG10とNEX-5 / NEX-3は従来の写真やビデオ誌などで取り上げられることもあるだろうが、今までのこうした枠の中で単純に捉えてしまうといずれも中途半端な製品として評価されてしまうかもしれない。こうしたジャンルの製品ラインナップは今までなかったものなので、メーカーであるソニーもユーザーも手探りな部分が出てくるのは否めないが、少なくとも従来のビデオやスチールといった単純なカテゴリー分けではなく、クリエーターが表現したいビジョンを具現化するツールとして今までになかったアプローチが必要になりそうだ。機能やスペック等従来の製品と同じ切り口の評価ではなく、映像表現手段として何が出来るかといった切り口で捉えるべき商品といえるのではないだろうか。