前回からお伝えしているショートムービーの撮影がいよいよ始まった。何分無予算でやっている事なので出演者やスタッフにもなかなか無理は言えず、スケジュール調整に四苦八苦しながらの撮影だが、そんな事も含めて今回のケースを一つのモデルケースとして紹介していこうと思う。

始まった撮影、しかしキャストの問題が…

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今回の話の発端は某芸能プロダクションとの話し合いだった。プロダクションとは言っても誰か経験豊かな役者や有名なタレントがいる訳でもなく、一般の人から広く登録者を募り、ドラマや映画のエキストラや雑誌のモデル等に人を送り込むといった事をメインに行っているレベルの会社で、私の付き合いの始まりも、とある企業のVPを撮る時にモデルの派遣をお願いした事だった。

その後の話の中で事情を聞いてみると、彼等が募集をかけるうたい文句として「役者を目指す人、テレビや映画に出演したい人」という言葉を使うという。このプロダクションに限って言えば実際かなり有名なドラマや映画にエキストラを派遣しているので嘘にはならないし、中には数十万円から百万円以上の登録料を請求する悪質なプロダクションもある中、ここはとても良心的でトラブルもあまり聞いたことがない。だがやはり応募してくる人の理想とは掛け離れてしまう事も多く、中には本気で俳優や女優を目指して入ってくる人もいるわけだが、テレビドラマや映画のちゃんとした役となるとオーディション情報すらこのレベルのプロダクションにはほとんど降りてこない。

当然失望してやめていく人も多いのだが、常時2~300の在籍者を抱えている。その新陳代謝を繰り返しているだけでもそこそこ業務は成り立っているようなのだが、ここの社長は本気の人にやはり少しでも手応えのある事をやらせてあげたいと考えていて、もちろんその中からいつかちゃんとした俳優が出てほしいという希望もある。そこで私の作るショートムービーに目を付けたわけだ。社長いわく、プロダクション内にそういう活動があるだけで所属者の意識的にも対外的信用という面でもかなり良い効果が生まれるという訳だ。

オーディションとワークショップ

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こちら側にしてみても出演者はいつも求めているもののスカウトができるわけでもなし、個人的な繋がりだけでは限界があるわけだから、たかが自主制作のショートムービーの為に数十人のオーディションをやってくれるというのは嬉しいかぎりだ。ただし、レベルは決して高いとは言えず、中にはドラマにも舞台にも出たことのない、いわゆる素人から意識の非常に低い人もいる。そういうレベルのオーディションは非常に苦痛なのだが贅沢は言ってられないし、時々ごく稀に素晴らしい才能に出会う事もある。

40人ほどの中から10人程度を選び合格とした。ちなみに今回のオーディションは上出来だったと思う。だがそのまますぐに出来るレベルではない。クランクインを二ヶ月先に設定し、それまでに週一回のワークショップをやる事にした。ワークショップを有料にするという案もあったが、それはオーディションの前に言っておかなきゃフェアではないだろうという事で、今回は無料にした。

レッスン場はプロダクション側が提供してくれた。こうして映画作品の制作であり、プロダクションの内容を充実させるための活動であり、またレッスンでもあるというそれぞれのメリットが噛み合うプロジェクトをスタートさせた訳だが、これによって一つ作品ができる事になるので作るだけで終わるのはもったいないということでプロダクション側が上映イベントを計画してくれている。また、DVDの販売も同時に行う予定だが、なにせここまで無予算できているのでこれといったノルマはないが、やはり一枚でも多く見てもらいたいのでこれもプロダクションと当方、そして出演者たちにも協力してもらっていこうと思う。この作戦に関してはまた次回に。

WRITER PROFILE

ふるいちやすし

ふるいちやすし

映画作家(監督・脚本・撮影・音楽)。 日本映画監督教会国際委員。 一般社団法人フィルム・ジャパネスク主宰。 極小チームでの映画製作を提唱中。