オートデスクの編集フィニッシングツール「Smoke for Mac OS X」と最上位のクリエイティブフィニッシング複合ツールセット「Flame Premium」のプロダクトマーケティングマネージャーを務めるマーカス・ショーラー氏が、Inter BEEに合わせて緊急来日した。同氏はSmoke for Mac OS XやFlame Premiumの製品ロードマップや新機能を仕切っているキーパーソンだ。来日を機会に、2つのツールについて3つのトピックを語ってくれた。

Smoke for MacにリライティングやProResの対応

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オートデスク社 メディア&エンターテインメント部門 テクニカルプロダクトマネージャーのマーカス・ショーラー氏

1つ目のトピックは、Smoke for Mac OS Xの新機能についてだ。オールインワンのSmoke for Mac OS Xは、Macというアクセスしやすいプラットフォームで通常の編集からカラーコレクション、ビジュアルエフェクトをすべてワンパッケージで実現したツールだ。最初に、Mac OS X版をリリースした経緯から語った。

ショーラー氏は、昨今の制作現場は非常にハイクオリティなコンテンツ制作を求められつつも、どんどんと予算が減ってるという問題を抱えている。そんな状況に対応できるソフトとしてSmoke for Mac OS Xが開発されたという。導入事例として、Mac OS Xだけでプラットフォームの基盤を組んでいるプロダクションや、通常のポスプロに導入される例、インハウス、企業内ですべての映像制作を行いたいというコーポレートの利用も増えているというとのことだ。

次に、Smoke for Mac OS Xで最近話題の今年9月から提供を開始したSubscription Advantage Packと呼ばれる保守契約者向けに提供された新機能を紹介した。注目は、リライティング機能と呼ばれる3次元空間に実際のライトを配置するように合成ができる機能や、コーデックが強化されてApple ProResの出力ができるようになったことだ。また、「Flame FX」と呼ばれるテクニカルツールとクリエイティブツールの集合体の新機能として「Matchboxフラグメント シェーダ」と呼ばれるプラグインを開発できるような環境が提供されたとのことだ。Inter BEEの会場でもSmoke for Mac OS Xの注目度は高い。ショーラー氏はその要因を

やはり誰でもアプローチしやすい”Macなんだ”というところで注目度が高まっているのではないか

と分析をしていた。

Flame Premiumで2Dからステレオスコピック3Dへ変換

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2つ目のトピックは普通に2Dでシューティングした映像をステレオスコピック3Dへ変換する工程だ。ショーラー氏はこの変換工程を「re-dimensionalization」(リディメンショナライゼーション)と呼び、Flame PremiumとFlare、Mayaを使った変換方法を紹介した。実際の事例として、Afterというインドに拠点を持つプロダクションが、6台のFlame Premiumと50台のFlareでワークフローを組んで、2Dからステレオスコピック3Dの変換を効率的に行っていることを紹介。2D/3Dへの手順はオートデスクのWebページでホワイトペーパーとして公開されている。詳しくはこちらのPDFを参照してほしい。

ここでの注目はFlame Premiumの新機能だ。オートデスクはダウンロード可能なソフトウェアを強化するモジュール形式の拡張機能のことを「Extension」と呼び、今年9月から提供を開始したFlame Premium 2012バージョンの「Extension 1」で数々の新機能を搭載した。最初に紹介したのは、ステレオスコピック3Dのビューイング機能の強化だ。左と右の映像を確認できるようになった。続いて、「FBX データ交換テクノロジー」と呼ばれる3Dのデータフォーマットの連携強化だ。このテクノロジーを使えば、MayaとFlame Premiumで3Dデータをリンクできるようになる。

例えば、Flame Premium上でFBXを取り込んでMayaのほうでFBXを修正して保存すれば、Flame Premiumのほうも自動的に反映される。ライブリンクのような機能だ。2Dからステレオスコピック3Dへの変換に3Dモデルとの連携を追加すれば、さらに効果的な立体視映像の制作が可能になるとのことだ。

それ以外にも、RED ONEがサポートしているHDRxやMXF、AVCHDコーデックインポートのサポートや、ソースグレーディングと呼ばれる新機能の搭載を紹介。ソースグレーディングとは、従来のようにツールが別々になっている状態だと、ビジュアルエフェクトを追加したものにカラーグレーディングをし直してもう一回インポートをしなければいけなかった。Extension 1を追加することによってビジュアルエフェクトとカラーグレーディング間のタイムラインのやり取りがより簡単になり、ベーシックのソースをグレーディングすることによりやり直しをすることがなくなった。これはFlame PremiumがSmoke、Flame、Lustreが1台のワークステーションかつ1つのパッケージにまとまったツールセットになっているから実現できる非常に便利な機能だ。

イメージのライティングを変更する革新的なリライティングツール

3つ目のトピックは、次世代機能と呼んでもいいほど革新的なリライティングツールだ。NAB 2011でも紹介したFlame Premium 2012のメインの機能だ。Flame Premiumには、「Action」と呼ばれる3Dコンポジット環境が搭載れていて、Action内でライトを操作できるリライティングツールが搭載された。この機能は、レンダリングされたシーンの上からエフェクトを重ねるプラグインとは異なり、ポイントライト、スポットライト、エリアライト、ディレクショナ ライト、アンビエント ライトを3Dシーン内に配置してキャストシャドウ(光が物にさえぎられてできる影)やシェーディング(陰影)といった真のシャドウを落とすことができる機能だ。

光源の手前にオブジェクトがあれば物理的に計算をした上で光はさえぎられて、オブジェクトが移動すればレンズフレアになる。もちろん、ライブアクションで撮影をした2Dのイメージのライトの方向にライトを配置すれば、ナチュラルな範囲であればイメージの光源を変更することが可能だ。ライトを配置して影響を受けるところだけをトラックしてカラーグレーディングで効果をつけるというようなことも可能だ。

リライティングは撮影寄りのスタッフよりも、カラリストの向けのツール。CM制作に非常に有効に使えるだろう。また、2D/3D変換とリライティングは両方融合して使うとさらに効果的な結果が得られるものですよ

3D空間の重要性はもっと高まる

気になるのは、Smoke for Mac OS XやFlame Premiumの次世代バージョンについてだ。ショーラー氏はバージョン2013についての明言は避けたが、今後の起りうるトレンドについては

クリエイター側が3Dの空間の意識についてもっといろいろな表現ができることに気がつき、そこにいろいろな表現を追加したいということが起きてくると思います。例えば、ロトスコーピングや3Dコンポジティングの重要性がさらに高まると思っています

と語った。Flame PremiumやSmoke for Mac OS Xといった最高のビジュアルエフェクトツール群が今後、デジタルエンタテイメントクリエーションにどういった新しいトレンドを吹き込んでくれるのか?次世代バージョンの動向が楽しみだ。

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