はい、作りましたよ。プチシネの原則、ダウンサイジング。四コマ漫画の精神で4カットムービー。もう、思い付いたらすぐムービー。でもダウンサイジング=手抜きにならないように、むしろ4カットだからこそ丁寧に作れるはずなので、これからどんどんクオリティーを高めていこうと考えている。だが、大袈裟になってはいけない。そもそも映像制作って大袈裟にしようと思えばどこまでもできる。
それはそれで、その分いい映画を作ればいいのだが、ならばお金がなければ作れない、作らない、というのではだめだ。それなりの物を作ればいいし、お金がなくてもできる努力はあるはずだし、クオリティーアップも望めるはずだ。何より今のテクノロジーが強力にそれをバックアップしてくれている。そんな「おいしい」機材に囲まれながら、それでも映画作りを大袈裟にしか考えられない人が多すぎると思う。もっともっと色んなところからプチシネが生まれてきてもいいはずだ。
そんな思いで始めた「第四映像」。カメラはNikon 1だが、マンパワーと工夫は惜しまない。そこから見えてくる事をこれからどんどん伝えていきたい。もちろん、業務機材の良さやありがたさを再認識する事もあるだろう。それも「業務機だからいい」ではなく、こういうプチシネを作りながら、「ここはどうしても良くしたい」という思いから上級機を選んでいってほしい。私も一回目にしてそんな事を多々感じ、業務機のありがたさを痛感した事もあったが、それでもできないという事はなかった。まず作ろう!だ。
音声収録は、もちろん重要
その一つ、どうにもならないのが音声収録。こればかりは別にレコーダーを用意して録るしかない。あとで映像に入っているカメラマイクの音声と合わせなくてはいけないわけだが、今の編集ソフト上では大した手間ではないはずだ。カチンコの代わりにカットのはじめにシーン/テイクを声に出して言って、フォーカスの合ってる所で手でも叩いておけば一発で合う。むしろ問題なのは現場でのチェックの時に映像とは別にチェックしなくてはいけないという点だが、私は最悪アフレコでもいいって感じでカメラマイクの方しかチェックしなかった。
幸い今回は同録の音が使えたのでアフレコはしなかったが、いずれこのコラムでもアフレコのコツ等も紹介してみようと思う。で、どうせレコーダーを用意するなら、いつも言ってる事だがバランス入力が付いた物にしよう。利点はちゃんとしたマイクが使える事と、長いケーブルが使えるという事だ。アンバランスのケーブルで長いものを使うと、思わぬノイズを拾ってしまう危険性がある。今回は比較的指向性の広いコンデンサーマイクを二本、マイクスタンドで立てて収録したが、量販店でも売っている数千円の物だ。マイクの位置を慎重に選び、ケーブルとレコーダーさえちゃんとしておけばわりとしっかり録れる物だ。もちろん音声スタッフがガンマイクを振ってくれるのに越したことはないが、始めから贅沢してはこの企画の意味がなくなる。
プチシネ流ダウンサイジングが生む利点
そして悪い事ばかりではない。機材を小規模にすることによって、スタッフの人数も減らせるし、そうするとスケジュール管理も楽だ。だから楽に作るというのではなく、ならばたっぷり時間をかけるというのがプチシネ流ダウンサイジングの本来の目的だ。有名な役者やスタッフをたくさん集めた窮屈な進行の大規模プロジェクトを出し抜く可能性すらある。今回は役者さんの他にヘアメイク一人、後は全て自分でやった。一日で二本分、8カットだけ撮ればいいので、ゆっくり作業できた。実はヘアメイクさんも普段はサロンに勤めるかけだしの人で、打ち合わせも含めて時間もゆっくり与え、チャレンジの場を提供する形で参加してもらった。
時間に余裕があるという事、気を使わなくてすむという事は、いろんな可能性を生む。冒険や挑戦もできる。その為のダウンサイジングなのだ。役者さんも舞台での経験はあるものの、映像は初めてに近い人なのでリハーサルも含めてたっぷり時間をかける。それは彼らにとってもいい経験になったようだ。もちろん私も初心に戻ってシンプルな映像の中で何が表現力を左右するのかをじっくり考えながら撮っていく。
こういう場が初心者にもベテランにも絶対必要なんだと思う。そもそも毎回ゼロから作る映像に初心者もベテランもない。修行のやり直しだ。そんな心構えでこれからも続けていこうと思う。さて、出来上がりはどうだろうか?もちろん業務機と優秀なスタッフを揃えて作った物と比べれば見劣りはする。そうでなきゃ困る。でも、機材全部で10万円という環境でここまではできる時代なのだ。少しでも可能性を感じたら皆さんもぜひ!あ、出演者、スタッフ、随時募集中です!
出演:松本みゆき、あまち、寺澤俊彦 ヘアメイク:山岸裕香 その他全部:ふるいちやすし