役者と制作者の関係。その罪深き悩み
いやぁ、なかなか思うようにはいかないものだ。あてにしていた役者たちが次々舞台公演等で忙しくなってしまって、その上、梅雨入り前から悪天候の日々。仕方なく今月は先月一緒に撮っておいたもう一つをお届けします。
順番としてはこちらが000という事で先にくるべき物で、なぜそれを抜かして001を先にお見せしたかは後で説明する。いずれにしても人材の確保は大事な事で、それもこの活動が波に乗って、みんなに知られるようになれば簡単にもなるのだろうが、ここは生みの苦しみというやつで、やはりもう少し余裕を持って集めておくべきだった。反省しなくてはいけない。次回、というよりは今後の事も考えて、新しく役者達を集める事にした。私の場合はたまたま役者志望のタレントを多く抱えるプロダクションに知り合いがいたため、そこでオーディションをやらせてもらったが、今はFacebook等のSNSを使えば人も集まるだろう。
オーディションにおけるいくつかの注意点
いずれにしても、オーディションをやる際に注意しなくてはいけない事が幾つかあるので今回はそれについてお話ししたい。まずは企画の趣旨をはっきり説明する事が重要で、特に今私がやっているような特異な形式を理解してもらう為には、過去の作品を見てもらうだけでは誤解が生まれる。意気込んで現場にやってきた役者がNikon 1 J1を見たら少なからずがっかりしてしまうだろうし、手抜きなんじゃないかと思われたら大変だ。そのくせリハーサルは念入りにやろうとしているのだから、理由、目的を丁寧にはっきり伝えておかなくてはいけない。
人によってはどうでもいいことかもしれないが、念には念をいれておくべきだと思う。これはSNS等で告知する場合でも同じだ。細かく説明すればするほど人の集まりは悪くなるかもしれないが、数が目的ではなく、実際に一緒にやってくれる人と出会うのが目的で、後からがっかりされたり、誤解を解いてまわるのは大変だ。やはり始めにできるだけ正確に内容を伝えるべきだろう。目的、規模、リハーサルや撮影の時期や期間、ギャラの有無、そして忘れてはいけないのが発表方法や規模だ。実は出演者にとってここがとても重要で、ギャラに代わる彼らのメリットになりうる。
ネットでの配信、上映会の有無、配給会社への売り込み予定、DVD等の製作、発売の予定等、出演する者にとっては一つ一つメリットが違ってくるし、特にYouTube等での無料配信は役者のプロモーションツールとして、中途半端にギャラをもらうより嬉しい事でもあるらしい。しかし場合によっては特別に許可をとっておかなくてはいけない事もあり得る。ところが我々制作者にとっても先の事ではっきりしていない事もあるだろうから、どうしても説明がいい加減になってしまい勝ちだ。ただ、私の知る限り、大きなトラブルになってしまうのはほとんどがこの部分なので、不確定なところも「〜するつもりだけど、約束はできない。ただ、もしそうなった時の条件は…」等としっかりと説明する事が必要だろう。ちなみにこのプロジェクトの配信に関しては次のように説明し、了解をとっている。
- 月に最低一本、YouTubeとPRONEWSで発表していくが、撮った物全てではない。
- 幾つかの作品は未発表にしておき、DVDの発売等にこぎつけた時に完全版として売り出す予定。(今回発表した000も本当はそのために隠しておくつもりだった)
- DVDの発売等はある程度数(20〜50)がまとまった時に前向きに考えているが、現時点では販売元、販売方法共に白紙である。
- もし収益が生じた場合には10〜15%程度を出演者に分配するつもりだが、それまでの配信に対してはギャラは発生しない。
- 出演者のプロモーションの為に限り使用は自由で、DVDのコピー等、全面的に協力する。
非常にしょぼいプランで、不確定要素も多く、果たしてこんなんで人が集まるのだろうかと心配に思われるだろうが、それでも経験と出演作が必要な役者にとっては損はない事でもある。だからギャラを払わない代わりにうるさい事は言わない、というのではなく、逆に思いっきりこだわって良い作品を作らなくては意味がないし、そうするつもりだとも伝えた。もちろん役者それぞれのタイミングにもよるのだが、何より正直に伝えておく事が、無用なトラブルを防ぐ方法なのだ。場合によっては契約を交わしておいた方がいい。
役者と制作者のその距離とは
見ての通り決して金銭的に「おいしい話」にはなり得ない。ただ、今回これを始めた目的はあくまで「活動をする」ということであり、その為には悪い話ではないはずだ。実際オーディションをやらせてもらって感じた事だが、やはり制作者と出演者にはまだまだ大きな距離がある。お互いに「映像作品を作る」という事を必要以上に大げさに考えているように思える。こちらがダウンサイジングする事によって歩み寄り、とにかくどんどん作っていこうとする事によって、何より役者達が演技を磨く機会が増える事は間違いない。また、こういう事が可能なんだと示す事によって、制作側にも同じような試みをする人が増えてくれば、双方にとって、ちょっと大げさに言うと、文化として大きな意味があるんではないかと考えている。映像を作りたがっている制作者。演技をしたがっている役者達。本当はもっともっと近くにいなくてはいけない仲間なんじゃないだろうか。