第四映像 #007『片っぽ』

プチシネ的注目すべきは、全てフィールドで使うもの!

今年のInter BEEから早1ヶ月。「いやー盛り上がったなぁー」とは言っても放送機器展としてのメインテーマは4K、8Kといった次世代超高画質。プチシネ的にはまだまだ関係のないところ。でもプチシネ読者の皆さんにもぜひ足を運んで頂きたい。僕が勝手に「長屋」と呼んでいる小さなブースを丁寧に覗いていくと、 あるんです、プチシネ的な物がたくさん!小さなファクトリーや海外のメーカーが熱の籠った製品を持って来ていて、中でも今回特に熱さを感じたのは韓国のメーカー。小さな工夫や発想で、おもしろい映像を作ろうとする気概に満ちていた。韓流ドラマのブームも山を越え、景気も悪いと聞くが、ドラマや映画の文化にかける変わらない情熱をひしひしと感じる。プチシネ精神だ。本当はそういうレベルの機器展があればいいのだけど、無いんだから仕方がない。

それにInter BEE位の規模になると、「長屋回り」だけでも一日潰れるほどだから、それだけの為に行っても無駄にはならないだろう。何せ機材の設計者がそこにいる事もあるのだから、ついつい話し込んでしまうのもInter BEEならでは楽しみの一つ。特にリグや三脚等は実際手に取って触ってみなければその良さ、悪さは分からない。ほとんどの物にすぐに試せるようにカメラが付いていたりするが、自分のカメラを持って行くとなおいい。それともう一つの目的は発売寸前の物を見る事だ。とにかく技術の進歩が半端じゃない時代、今売られている物と同機能の物が、来年には半額の新製品となって売られる事もあるし、今回も実際にあったのだが、とある新発表の製品とほぼ同じ機能の物を5倍もの価格で持って来ているアメリカのメーカーもあった。担当者はずっと半泣き状態でだったが、こんな事はちょくちょくあるのだ。つまり、知らないで買ってしまうと数十万円の単位で損をする事もあるし、どうせプチシネには関係ないと思っていた機材が実は手の届く物だったりもする。レンタルしかないと思っている物が買えるとしたら、その分、練習ができるので直接映像のクオリティ向上に直結する筈だし、カット割りのアイデアにも新しい発想が湧く。来年はぜひ!

まずは、フィールドモニター

さて、そんな中で私が特に盛り上がったのがフィールドモニターだ。今回の『第四映像』の収録でもそうだったのだが、やはり小さなカメラに付いたモニターではいつも大変苦労するし、フォーカス等のチェックも甘くなりどうしてもミスが多くなる。この企画ではまずは安いカメラとレンズで始めて、次に三脚だけは贅沢してきているが、その次に贅沢が許されるならモニターを買うべきだろう。その、頑張ればなんとか手の届くレベルのフィールドモニターの品質がすごく上がってきている。まず私が特に気に入ったのはCINEROID EVF4RVW。

CINEROID EVF4RVW
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見ての通りの大きさで、カメラに付いているのと大差がないようにも思えるが、実は今話題のRetinaディスプレイが採用されており、とにかく奇麗でフォーカスを合わせるのにももってこいの製品だ。こうして三脚やリグに取り付けたり、カメラ本体に付けてもいいが、いつもスタッフの少ないプチシネ現場では、これを首からぶら下げたり、大きめのポケットに入れておきたいと思う。もう一つ、私が目をつけたのがBONという韓国のメーカーのRM-071SC。

BON RM-071SC
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前述のCINEROIDがシャキッとした美しさなのに対して、こちらは恐ろしく自然な映り。CRTの業務モニターを彷彿させるような感覚で、解像度も高いのでフォーカスもはっきり分かる。また、同じモニターでH.264フォーマットで同時に録画できるレコーダー内蔵の機種もある。こちらは最低限のバックアップや現場でのチェック再生に威力を発揮しそうだ。CINEROIDもBONもちゃんと業務用なので、各種微調整やフォーカスアシスト、計測グラフなどの機能もしっかり付いている。編集環境や最終的なアウトプットに合わせておけるから心強い。機動性を犠牲にせずにしっかり見られるフィールドモニターはぜひ一つ、手に入れておきたいアイテムだし、その分野の品質向上は大変嬉しい。

フィールドレコーダーも押さえておこう!

さて、もう一つ盛り上がったのは音声用フィールドレコーダー。確か去年のInter BEEでは2チャンネルのポータブルレコーダーを取り上げていたと思うが、今年はRolandからマルチチャンネルの機種が発表されてた。R-44とR-88。それぞれ4チャンネルと8チャンネル仕様だ。

Roland R-44 / R-88
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例えば多人数のシーンでそれぞれにピンマイクを付けたり、衣擦れの気になるピンマイクとガンマイクの音を同時に録っておいたり、バウンダリーマイクをどこかに隠しておいたりと、いろんな事が考えられる。それをミックスしないで別々のファイルとして録っておけるので、後はスタジオへ戻って、じっくり聞いて選べばいい。見てのとおり、全てのチャンネルにバランス入力が用意されているのでどんな業務用マイクでも使えるだろう。特にデジタルカメラはちゃんとした音声入力は期待できないので、これを身につけて(専用キャリーバッグもある)最初から音声別録りを覚悟した方がずっといい結果が期待できるはずだ。

機材はあればあるほどいいというのはプチシネ的にはNOだ。それによってスタッフが無駄に増えるようなら、ない方がいい場合もある。だから一度は手に取って、いつも機動性を意識しながら選ぶ必要がある。今回紹介した機材はきっと我々の現場を助けてくれるはずだ。

WRITER PROFILE

ふるいちやすし

ふるいちやすし

映画作家(監督・脚本・撮影・音楽)。 日本映画監督教会国際委員。 一般社団法人フィルム・ジャパネスク主宰。 極小チームでの映画製作を提唱中。