現場で活躍するPXW-X180/X160を探る
最近のカメラの話題といえば4K/8Kがほとんどである。HDについてはあまり話題に上らなくなってきた。とはいえ現在の制作の主流はHDであり、4K/8Kはまだ一部といえよう。すでにHDのカメラはソニーを含め多くのメーカーの製品が市場に出回っているが、ソニーは昨年XDCAMのラインナップを大幅に拡充し、多くのカメラを発表した。実際にはPXW-X200/X180/X160のほかPXW-FS7、ショルダータイプのPXW-X500、プロフェッショナルディスクに対応したショルダータイプのカメラPDW-850/750、ハンディタイプのPXW-X70と、XDCAMシリーズのカメラを中心に多数のカメラが市場で活躍している。
今回そのうちのPXW-X180/X160について、発売後の現在を知るべく、ソニー株式会社 イメージング・プロダクツ&ソリューションセクター デジタルイメージング事業本部 商品企画部門 B&C商品企画部 商品企画課 プロダクトプランナーの松舟功氏、ソニー株式会社 イメージング・プロダクツ&ソリューションセクター デジタルイメージング事業本部 コア技術部門 鏡筒設計部1課 統括係長の福田拓臣氏、ソニービジネスソリューション株式会社 営業・マーケティング部門 マーケティング部 CCシステムMK2課の井出貴大氏にお話をお伺いした。
左:ソニービジネスソリューション株式会社 営業・マーケティング部門 マーケティング部 CCシステムMK2課 井出貴大氏中央:ソニー株式会社 イメージング・プロダクツ&ソリューションセクター デジタルイメージング事業本部 商品企画部門 B&C商品企画部 商品企画課 プロダクトプランナー 松舟功氏
右:ソニー株式会社 イメージング・プロダクツ&ソリューションセクター デジタルイメージング事業本部 コア技術部門 鏡筒設計部1課 統括係長 福田拓臣氏
PXW-X160とPXW-X180の存在と役割
価格的に見ると60万円台に3機種が並んでおり、この辺りがボリュームゾーンといえるがどれを選択するか悩むところだ
――PXW-X180とX200は1割ほどの価格差で、PXW-X160とX180はカメラとしてのスペックは同じで12万円ほどの価格差がありますね。購入を検討する者にとって最も迷うこの3機種の位置づけはどのようになっているのでしょうか?
井出氏:X200は1/2型のセンサーを搭載しており、放送局などの画質・操作性を重視するユーザー向けになっています。一方X180/X160はいわゆる業務用ユーザーもターゲットとした製品で、幅広い用途に対応したカメラと言えます。いずれの機種も様々なHD記録フォーマットに対応していますが、X180/X160ではAVCHDでの記録もサポートしています。
また、業務用ユーザーの場合入手が容易で比較的安価なSDメモリーを使うことが多いことを想定してSDメモリーカードのアダプターを標準付属としております。ただし、SxSやXQDと異なり転送レートの問題からXAVC Intraでの記録はできません。X160とX180はカメラ部分の機能や性能は同じですが、ネットワーク機能に対応しているかどうかが違いとなります。国内ではまだそれほどではありませんが、海外ではネットワーク対応は必須ともいえる機能となっています。
X180/X160ともに標準付属となっているSDメモリーカードのアダプターMEAD-SD02。価格は税抜14,000円
――X200はフジノン製の17倍ズームでX180はソニー製の25倍ズームという点も幅広い使い方を考慮してのことと思いますが、業務用のカムコーダーで広角から25倍ズームというのは今までなかったのではないでしょうか。
松舟氏:そうですね。光学25倍のレンズを搭載したのは少なくともソニーの業務用機では、初となります。
カムコーダーシリーズで最高倍率となる25倍ズームを搭載している
ズーム、フォーカスともにマニュアルレンズと同様な操作を実現している
――X180とX160ですが、ネットワーク対応の有る無しで12万円の差は大きいですね。これは、ネットワーク用のコーデック回路の有る無しの影響もあるのでしょうか?
松舟氏:ネットワーク対応に関しては、例えば機能を実現するためのオプションとしてワイヤレスアダプターCBK-WA100という製品があり、価格は19万円となっています。それを考えるとネットワーク対応のX180の価格は、リーズナブルということになります。
X180は、ユーザーの間では、一部重いとか大きいと言われいる。しかしながらF1.6の広角25倍ズームを搭載していることを考えるとむしろよくこの大きさ・重さに収まったともいえる。その辺りを聞いてみた。
――X180の筐体といえば、重いとか大きいと言われますが、レンズ性能に対してこのサイズに収められたのは非球面レンズの採用やレンズも含めて自社開発した結果といえるのでしょうか?
福田氏:そうですね、複数の非球面レンズを採用しています。また、ズームは複数のレンズ群を動かす光学系を採用しており、それぞれ別体のサーボモーターを使って駆動しています。これにより、機能や性能を維持しながらの小型軽量化に貢献しています。また、X180のズームリングには焦点距離が刻まれていて、両端に終点があることでマニュアルレンズのような操作性を実現していますが、実際はサーボで電気的に行っています。これを従来のマニュアルレンズのようにカムなどを使ってやろうとすると重くなってしまうので、ここでも軽量化に貢献しています。
――ちなみに歪曲収差などは電気的な補正をすることで性能を確保するような仕掛けもあるのでしょうか?
福田氏:電気的な収差補正は行っています。組み立て調整の時に組み合わせたレンズに合わせた調節を行うことで、高い精度で性能を確保できるというのもレンズを含めて自社開発しているメリットですね。
ワイコンを装着した場合のNX3との重量比較
X180/X160はバリアブルのNDフィルターを搭載しており、NDの微調整が可能なので、被写界深度を固定して撮影するときに便利だ。今回のバージョンアップにより、プリセット毎に色温度を設定できるようになった。室内のタングステンから屋外のデイライトへNDのプリセットを操作するだけで対応可能だ。
――昨年あたりからXAVCフォーマットに対応したカメラが一気に増えてきた感がありますが、今後はすべてXAVCになっていくのでしょうか?XAVCは4Kからスタートし、ProxyからIntra422など0.5から100Mbpsまで広い転送レートに対応していますが、更に広がっていくのでしょうか。
松舟氏:長いスパンでみるとメインの制作フォーマットはXAVCへ統一されていくという方向性です。現状はより上位のフォーマットにSStPがあり、編集等の後処理が軽いMPEGベースのものもあり、市場のニーズを見ながらということになるでしょうね。
今後もXAVCに対応したカメラがどんどん増えていくだろう
X180は昨年8月に発売され、10月にバグフィックスを含めたVer1.12のアップデートを行い今年の1月にはPicture Cache RecやWhite BalanceのNDフィルター連動/非連動対応、Live Streamingなどに対応したVer2.0のファームウェアが公開されその利便性が上がり最適化された。
――今後もX180はファームのアップデートで機能追加などが行われる予定はあるのでしょうか。
松舟氏:今後もアップデートを行う予定はあります。様々なご意見を受け、社内で色々検討しておりますが、いつどのような機能追加のアップデートを行うかは随時お知らせしていく予定です。
日本語表示になっているメニュー。AVCHDにも対応しているので、6つの項目が並んでいる
総括
発売当時の不具合もファームウェアアップデートにより解消され、現場で活躍するPXW-X180/X160についての再評価の声も高い。再確認の意味も込め、今回は直接ネガティブなことも含め話をぶつけてみたが、純粋に不具合は解消され、進化を遂げている。また時期を置いてPXW-X180/X160について取り上げてみたいと思う。