txt:鈴木佑介 構成:編集部
筆者のカメラバッグを集合させてみた。カメラバッグは全てThinkTANKPhotoを使用している

“収納”。何かに物を収め、取り込む、しまう、という意味だ。筆者は「収納」が好きだ。部屋の中でも引き出しの中でも、PCのデータですらどこに何があるか分かり、使いやすく、取り出しやすくなっていないと気がすまない。

撮影機材も一緒だ。ハンドヘルドカメラとマイク程度であれば一つのバッグに詰め込んで三脚を背負っていけば済む話だったが、一眼やシネマカメラなど、レンズ交換式のカメラが主流になった今の時代はそうはいかない。

ボディ、交換レンズ、マイクはもちろん、ジンバル、ドローン、スライダーなどの撮影機材だけならまだしも、ある程度の照明や録音機材も所持し、自分で使うのが当たり前になった今、能率良く、かつ、効果的に収納をしなければ電車移動や飛行機移動、山の中や雪の中、様々な撮影現場への移動に対応ができない。

そう、今回は「カメラバッグ」の話だ。紹介すべき事が多すぎるので何回かに分けてご紹介したいと思う。

(1)「最高のカメラバッグ」を求めて

筆者が最強のカメラバッグと愛して止まない。ThinkTANK PhotoのAirPortRoller Derby。カメラバッグで迷っている人は是非検討してもらいたい。アウトドアは厳しいが、収納力とフラットな場所の移動時の快適さは随一だ

最高のカメラバッグとは何だろう?これはとても難しい。容量、運びやすさ、堅牢性、デザイン、価格、優先する要素は使う人によって様々だと思う。カメラマンにとって理想のカメラバッグと出会える事は一生を添い遂げるパートナーを見つける事より難しいと思う。

今年、筆者はフリーランス丸15年。16年目のキャリアに突入した。その歴史の中でも様々なメーカーのカメラバッグを使ってきたが、正直、ピンと来るものは少なかった。そもそも2009年以前はハンドヘルドカメラを主に使用していたため「ビデオ」のカメラバッグと言うと大抵の形が決まっており、選択肢も少なかったが前述のように使用するカメラが一眼やシネマカメラになってから、レンズを含め収納すべきものが小型化し、増えた事でスチルカメラのバッグを選択できるようになった。

そんな背景の中、ここ約5年に渡り愛用し続けているカメラバッグがある。ThinkTANK photoのエアポート・ローラーダービーAirport Roller Derbyだ。特徴としては4輪型のトローリーカメラバッグということ。最近は使用している人がだいぶ増えてきたが、まだまだ収納術を含めカメラバッグ探しで彷徨っている人が多いので是非このAirPort Roller Derbyの事を知ってもらいたい。

2019年現在も撮影の度に出動し続けているカメラバッグで、筆者は二個所持している。

Airport Roller Derby収納例。カメラ2台、レンズ9本、ジンバル、マイク、予備バッテリーまで入ってしまう

外側ポケットにはラップトップPCも収納可能

AirPort Roller Derbyの魅力は3つ。「四輪であること」「飛行機内に持ち込めるサイズ(重量は注意)」「必要なものが大抵入る許容量」という事だ。かなりの量の機材を一つにまとめられ、都内のやたら広いホームや空港などを移動する際、本当に楽である(階段は少しやっかいだが)。

4輪なので、そのまま転がして移動ができ、また外側に小型の三脚を装着できる。工夫すれば一脚でも大丈夫

重量さえクリアすれば飛行機でも機内持ち込みが可能なサイズ

(2)AirPort Roller Derby七変化

ThinkTANKphotoのカメラバッグはもともとフォトグラファー向けのもので、一眼カメラ類を収納するのに向いている。セパレーターがたくさん付属していてかなりの自由度で自分で仕切りをアレンジすることができる。現在はバッグの厚みを強化したビデオグラファー向けのカメラバッグラインも存在するが、筆者は状況や収納するものによって両方を使い分けている。そして、AirPortRoller Derbyはセパレーターのアレンジ次第で汎用性が高まる。

複数台のカメラやアクセサリードローンや
ジンバルなども入れ方次第で多数収納可。

  • Sony α7S II×2
  • Sony α6500
  • ZEISS Loxia 21mm/35mm/50mm/85mm
  • ZEISS Touit 12mm
  • 予備バッテリー×10本
  • ドローン DJI Mavic Pro
  • ジンバル(Pilotfly H2)
  • NDフィルター類

大型のレンズ類もアレンジ次第で収納可能。

  • Sony α7 III
  • Sony α6500
  • FE 12-24mm F4
  • FE24-105mm F4
  • FE 100-400mm F3.5-F5.6
  • E PZ 18-110mm F4
  • 予備バッテリー×8本
  • ジンバル(Nebula 5100)

宿泊出張撮影で複数台のカメラとバッテリー、
さらにチャージャーが必要な時も機材数は
確保しつつ、収納可能。

  • Sony α7S II×2
  • Sony α7 III
  • Sony α6500
  • FE 16-35mm F4
  • FE 24-105mm F4
  • E 10-18mm F4
  • E 16-70mm F4
  • 予備バッテリー×15本
  • チャージャー類

イベント撮影で音声のライン録りや
ラベリアマイク、レコーダー類、
XLRケーブルなどかさ張るものも
アレンジ次第で収納できる。

  • Sony α7S II×2
  • Sony α6500
  • FE 16-35mm F4
  • FE 24-105mm F4
  • FE 24-240mm F3.5-6.3
  • E 10-18mm F4
  • ジンバル(Nebula 5100)
  • Zoom H6
  • TASCAM DR-10L
  • XLR→フォーンケーブル×2
  • 予備バッテリー×13本

シネマカメラ(FS5)もバラして収納可能。

  • Sony FS5×1
  • Sony α7S II×2
  • Sony α6500
  • FE 28mm F2
  • FE 24-240mm F3.5-6.3
  • E 10-18mm F4
  • E 16-70mm F4
  • RODE VideoMic Pro(ケース内)
  • 予備バッテリー×15本
  • チャージャー類

FS5よりも大型なFS7もバラして収納が可能だ。

  • Sony FS7×1
  • E 10-18mm F4
  • E 18-105mm F4
  • チャージャー
  • 予備バッテリー×4本

どうであろう?かなりの数と様々なカメラが収納できる事がわかって頂けたかと思う。ただ最近収納するのが難しいものが増えてきた。代表的なものとしてDJIのジンバル「RONIN-S」だ。もともと巨大な上、複雑な形をしているRONIN-S。付属している専用ケースに入れて持ち運ぶ人が多いようだが、それだとどうしても荷物が増えてしまう。どうにかRONIN-Sを既存のカメラバッグもとい、AirPort Roller Derbyに収納ができないものか考えてみた。

(1)まずRONIN-Sを最低限バラしてみる。バッテリーにもなっているグリップ部分と三脚を外し、バッグのセパレーターに自然に合う形で合わせてみる。窪みがあるセパレーターのおかげでぴったり合わせる事ができた。

(2)RONIN-Sが収まったところで撮影に必要なカメラやレンズを入れてみる。グリップや三脚はRONIN-Sの下に入れる事にした。ただ、このままではアクセサリー類が入らない。

(3)余ったセパレーター(他のバッグのものでも可)でRONIN-Sの上をカバーをする。要するに二重底を作るイメージだ。

■収納例

  • SONY α7 III
  • SONY α7S II
  • SONY α6400
  • FE 24-105mm F4
  • ZEISS Touit 12mm F2.8
  • SIGMA Art 18-35mm F1.8
  • SIGMA Art 50-100mm F1.8
  • SIGMA MC-11×2
  • ジンバルDJI RONIN-S
  • ZOOM H6
  • TASCAM DR-10L ×2
  • ZOOM H 1n ×1
  • XLR→フォーンケーブル ×2
  • Peak Design SLIDE ×3
  • Table Dolly
  • 予備バッテリー 14本

(4)その上にレコーダーやXLRケーブル、ラベリアマイク類やストラップ、予備バッテリーなどを置いていく。いつも通りの収納ができた。

(3)どうする?複数台のシネマカメラの収納

筆者はFS7を2台所持している。そのため、マルチカム撮影をする際はAirPort Roller Derbyを2台にそれぞれ1台づつ分けて収納して現場へ向かっていたのだが、人間とは贅沢なもので「FS7をまるっと2台収納できるカメラバッグはないのかな?」と模索を始めた。

FS7を2カメで使いたい時はAirPort Roller Derbyを2台を活用。4輪なので一人で2つを転がす事もできる。片方にボディ、片方にレンズという場合もある

録音機材など足りないものがある時はさらに録音機材バッグを追加。きちんと区分けできているので便利だが、バッグの数が増えてしまうのが難点

筆者はAirPortRoller Derbyを購入して以来、バッグはThinkTANKと決めていたため、ThinkTANKphotoのビデオカメラ用バッグである「Video Transport」や「Video Workhorse」「Video Rig」などを試してみたが、さすがにFS7が2台と周辺パーツがきちんと入るバッグは無く、途方に暮れていた(上記バッグは後日別途使用例を紹介する)。ThinkTANKphotoで一番大きい「Production Manager」では大きすぎてハンドリングがしにくい。

結果、行き着いたのは「Logistics Manager 30」であった。AirPort Roller Derbyよりも高さが1.5倍程度で底が深く、4輪ではなく2輪だが、持ち運びができるギリギリのサイズ感だ。

筆者が複数台のシネマカメラ(FS7)を収納するのに選んだのが「Logistics Manager 30」。2輪タイプだが、一人で取り回せるギリギリのサイズ感であろう。なにより、セパレーターの量が収納欲を刺激する

結果から言おう。Logistics Manager 30は期待通りに最高の収納力を見せてくれた。FS7の本体、トップハンドル、アームグリップ、ビューファインダー、液晶モニター、を2セットづつ、さらに2連チャージャー、バッテリー6本、さらにレンズが5本、しかもレンズの下は二重底にし、サポートロッドとフォローフォーカス、レンズサポートが収納できた。蓋側にはメディアや保護フィルターなど小物も収納できる。しかも結構な重量となったが、ハンドル、ホイールがしっかりしているため、取り回しがしやすい。完璧だ。

AirPortRoller Derbyとのサイズ感。外側のポケットには長いロッドを入れてある

入れたいものが全部入った。シネマカメラの収納に迷ったらコレかもしれない

5本のレンズを収納
E PZ 18-110mm F4
E PZ 18-105mm F4
E 16-70mm F4
E 10-18mm F4
E 12mm F2.8

レンズの下はセパレーターで二重底に

ポケットも便利

かさ張るバッテリーもバッグの底が深いので6本くらい入る

ごく稀にだが一般的な「記録映像」を発注される事がある。筆者はハンドヘルドのビデオカメラを手放して以来、記録映像の制作は請け負っていないのだが、付き合いの流れ的には断れない事があるため、一眼(α)で記録映像の撮影を行っている。

記録映像の撮影は「複数台のカメラ」で「長時間記録」と「同録」と「電源確保」が重要になるため、αをケージで組み上げ記録撮影仕様に仕上げている。そうなると収納すべきものが増えていくのは自然な事だが、この「Logistics Manager 30」なら一式がまるっと収納できる。

特に色々な種類の撮影が日替わりで入っている時など、カバンごとに一式づつ整理できるのはとても素晴らしい。一眼をメインで使われている人にも「Logistics Manager 30」はオススメだ。

■収納例

  • SONY α7 III
  • SONY α6500
  • SONY α6400
  • E18-110mm F4
  • E16-70mm F4
  • E10-18mm F4
  • SONY KLR-K2M(録音ユニット)
  • Atomos NINJA BLADE
  • Atomos NINJA V
  • Vバッテリー 小×4本
  • Vバッテリー 大 ×4本
  • モバリルバッテリー×1
  • RODE NTG-3B
  • RODE VideoMicPro +
  • RODE VideoMicPro
  • サポートロッド類×2式

二重底を作って活用

(4)収納偏差値を上げてと用途による使い分けをする

筆者のカメラバッグ棚の一部。各バッグごとに決めた機材を入れて収納し、案件ごとに入れ替えて現場へ行く

収納力を上げる事と現場での取り回しを良くする、というのは別の話だが、筆者のように自宅をオフィスに映像制作業を行う人が多いこの時代、きちんと機材を収納する、という事はスペースの確保、機材の管理をする上で必要な事ではないだろうか。筆者は基本バッグごとに使用する機材を振り分け、保管、管理した上、撮影案件に応じてバッグを入れ替えたりして対応している。

例えば移動が多い撮影現場であれば、毎回綺麗に収納するのではなく、ある程度機材を組んだまましまう事ができるようにしたり、現場が山だったり段差が多い場所はリュックタイプのカバンにしたり、と状況に応じて使い分けている。

カメラもそうだが、一台でなんでも対応しようとする人が多い。「筆者は状況に応じて一番最適なものを選んで使う」のが大事だと思う。無駄なく、疲れず、最大限の機材を最小限の荷物にパッキングし、快適に撮影現場へ行き、撮影に集中し、足りない機材など無いのが一番なのだ。

なかなか収納について考える事がないかもしれないが、本記事が機材収納に対して興味を持つきっかけになってくれたら幸いだ。

次回も引き続き、ThinkTANKPhotoのバッグ収納例、活用例をシェアしたい。

WRITER PROFILE

鈴木佑介

鈴木佑介

日本大学芸術学部 映画学科"演技"コース卒のおしゃべり得意な映像作家。専門分野は「人を描く」事。広告の仕事がメイン。セミナー講師・映像コンサルタントとしても活動中。