Vol.16 新世代LEDチューブライト登場。NANLITE PavoTube II Xが広げる表現領域[鈴木佑介のLook Ahead-未来に備える映像制作-]

NANLITEと私

「NANLITE」、LEDライトを所持する人が増えてきた昨今、気になるワードではないだろうか。筆者は知る人ぞ知るNANLITEフリーク。今年2021年に日本に正規代理店(VANLINKS)が誕生する数年前から個人輸入であちこちからライトを購入していた。

NANLITEヘビーユーザーの筆者。自分で機材を用意する場合の現場はほとんどNANLITE製品を使用している

日本でLEDライトといえばAputureというイメージがあるかもしれないが、そこにNANLITEという選択肢を持っていると撮影の幅が広がることを知ってもらいたい。

先にお伝えしておくと、Aputure、NANLITEどちらが優れている、とかはなく、どちらも良い製品を扱っており、撮影の用途に応じて優位性は異なる。筆者も現場によって使い分け、両方とも使用している。その上で今回は大好きなNANLITEの話をお伝えしたいと思う。

NANLITEは今年でなんと29周年。長い歴史を持つメーカーだ。NANLITEの一番の魅力は「灯体が小型」で「高出力」、その上「安価」というのがウリだ。点光源のLEDの代表格であるCOBタイプのLED、Forza(フォルツァ)シリーズなどが顕著で、例えば現時点で最高出力のForza 500で約17万円、Forza 60という小型のものでも約4万円と、他メーカーの高出力LEDと比較した際に魅力的な価格に感じるのではないだろうか。そういう面でも駆け出しのクリエイターにもピッタリのライトだ。

小型のForza 60 1灯でもかなりの光量を持つ
Forza60 1灯でのスチルカット

筆者はこのForza 500を3台所持しており、さまざまな現場で運用している。他にも300/300B(バイカラータイプ)、最近発表された150、最小容量、サイズの60/60Bなど、ラインナップも充実しているので、ぜひ一度チェックしていただきたい。

ライト自体が小型なゆえ、カメラバッグに収納しやすい
コンパクトな装備で3点ライティングができるのでインタビュー現場などで重宝する

特に「ライト自体が軽い」というのは、高い位置に設置したり、スタンドで被写体の頭上などに飛ばしたりする際に非常に便利で安全なのが良い。そしてコンパクトゆえ、カメラバッグにも収納しやすいのが嬉しいポイントだ。今回のタイトルにもなっているPavoTubeと組み合わせることでシンプルかつ、映像の表現領域を広げてくれるであろう。

HSIを変更できるPavoTubeと組み合わせると簡単にカラーライティングが可能に

LEDチューブライトの魅力

さて、NANLITEのLEDの中でも魅力的に映るのはチューブライト「PavoTube」であろうか。筆者世代の方だと「LEDのキノフロ(蛍光灯ライト)」と思って頂くのが早いと思う。

NANLITEのPavoTube IIシリーズ(左から6c、15x、30x)。色温度のほか、色相や彩度を変更でき、点滅などのエフェクトも可能

従来の蛍光灯ライトと違い、倒しても中のガスが破裂することなく、さらにデイライト、タングステンの切り替えはおろかHSLモードで好きな色相・彩度へ変更可能だ。そしてバッテリー内蔵なので、電源が取れない場所でもフル発光で1時間くらい使用できる。筆者がNANLITEに夢中になったきっかけがこのPavoTubeで、財布に余裕があるとこのPavoTubeを増やしている。

キノフロもとい、蛍光灯ライトの系譜を受け継ぐこのPavoTubeの魅力はデフォルトでの明かりの柔らかさとそのサイズ感ならではのフレーム内への仕込みやすさ、それに加えて画面内での「見せライト」としても使えることであろうか。筆者の過去作品にもPavoTubeは何度も「出演」している。

光が柔かいので 人物撮影のほか、ブツ撮りにも最適
「出演者」としても役目を果たすPavoTube

参考映像

参考映像

パワーアップしたPavoTube II X

さぁ、私がいかにNANLITEのライトを愛しているかは伝え終わったところで本題に入ろう。PavoTube II Xだ。

現行のPavoTubeは30と60というサイズに6cという小型タイプが展開されているが、その後継機としてPavoTube II Xが発表された。現行の30・60というサイズに加えて80という長いタイプが登場。デザインやUIも6cと同じようになり、USB-Cでの充電が可能となった。またエフェクトの種類が増え、レインボーカラーのような複数の色を混ぜてループさせたり、一つの色を走らせたりと、さまざまなエフェクト操作が可能になった。使い方は状況次第だが、かなり自由度が高い印象だ。

変更点として一番のニュースは「NANLINKS」というスマホアプリでBluetooth制御ができるようになったことであろう。DMXでも運用でき、DC15vでの給電も可能だ。

    テキスト
スマホアプリ「NANLINKS」で好みにグループ分けを行い、色温度、色相の変更、エフェクトなどさまざまな操作が可能となった
※画像をクリックして拡大

これで複数のチューブライトをグループ化し、光量や色相を一斉に調整できる。これだけで持っているPavoTubeを総入れ替えしたくなった(現行のものは1本ずつ手で調整するか、マスターとスレーブモードを使って、有線接続しかできなかった)。

本体のほか、スタンドに装着するためのシングルブラケット、アイボルトと呼ばれるネジ式のワイヤー止め、ACケーブル類が1セットになっている
30と15のサイズ感は見ての通り。15が60cm。30で120cm。写真には無いが60という240cmのさらに長いタイプも発表された
旧式と比較すると光源面が広くなっている(下がPavoTube II X)
旧型はボタンと側面のダイヤルで調整を行なっていたが、PavoTube II Xは背面のボタンだけで操作できるUSB-C端子もあり、USBメモリを挿すことで本体のアップデートができる
1/4のネジのほか、DCとDMXの端子がある

一番の大きな変化は従来のRGBのみだったのに対し、今回のPavoTube II XではRGBWW LEDチューブライトになったことだ。36000もの色を再現できるとのことで、旧型と比較してみると、精細というか、同じ白を出した時に美しく感じる。

実際問題色の精度もCRI97、TLCI98という高い数値である。また、色温度の変更は2700k~12000Kの間ででき、グリーン/マゼンダの調整もできるため、ほかのライトと合わせる際にも微調整が可能だ。

また旧型のモデルは筒の中にLEDのツブツブが見えるタイプなので、状況によっては中のLEDが見えてしまったが今回のモデルは筒全面が発光する。

旧式
PavoTube II X

アクセントとしてのPavoTubeはもちろんのこと、キーライトとしてもPavoTubeは利用できる。

    テキスト
※画像をクリックして拡大

さすがに日中の撮影では光量的に霞んでしまうが、ゼロから生み出すものであれば、脇役にも主役にもどんな仕事でも対応できる、そんなライトがPavoTubeだ。カラーライティングも含め、さまざまなバリエーションに対応できる。PavoTubeを一度体感してほしい。20年前、キノフロに魅了された筆者のように、チューブライトに抱く魅力は永遠に普遍のはずだから。

WRITER PROFILE

鈴木佑介

鈴木佑介

日本大学芸術学部 映画学科"演技"コース卒のおしゃべり得意な映像作家。専門分野は「人を描く」事。広告の仕事がメイン。セミナー講師・映像コンサルタントとしても活動中。