今、良いモノは中国製
コロナ対応、開会式をめぐる五輪騒動、目に見えてきた日本の国力の無さ。政治的発言をするつもりは無いのだが、自分が住んでいる国に落胆している人が増えたと予測される2021年。カメラが発売されてもメーカーが世界的に設定した価格に対して「高くて買えない」という感覚は日本の経済が落ちている一つの証拠でもある。モノの物価が上がりながら賃金は上がらない。
従来の「映像制作」と別軸の「動画制作」というインスタントなものが増えたこともあり、制作人口は増加したが、単価はどんどん下がっているようだ。こんな状況の中、今までのように「メイド・イン・ジャパン」の製品はいつまで頑張れるのであろうか。もちろん、良いモノもたくさんあるので、応援というか、自分も一緒に頑張っていきたいと思う。
さて、そんな我が国に懸念しながらも、ここ最近目に止まるのは中国製機材の躍進だ。ジンバル・ドローンといえばDJI、カメラケージといえばSmallRig、TILTA。LEDライトといえばAputure、NANLITE、シネレンズならMeike、カメラもZ CAMが日本でもユーザーを広げつつある。
写真の世界でもフラッシュライトやストロボならGodoxなど、その他の安価な類似品も含め、気づけばほとんどが中国製の機材だ。どうであろうか?前述したブランドの機材の1つや2つ、あなたも使っているのではないであろうか?筆者をはじめ、40代以上の人間であれば「中国製」と聞くと粗悪なもの、という印象を持つ人が多いと思うがそんなことは無いということは誰しもわかっているであろう。
今や「良いモノはたいてい中国製」なのだ。中国内でも若者を中心に機材だけでなく、洋服、コスメなども「国産」のものを選ぶ人が増えている、というのが裏付けだ。「安かろう、悪かろう」はもう昔のことで「安くて良い」のが今の中国製機材のスタンダードだ。
今一番アツいPortkeysのモニター
外部モニターといえば、SmallHD?ATOMOS?多くの人が聞かれて頭にパっと浮かぶブランドがこの両者であろうか。両社ともに使用している筆者だが、ここに並びにきたのが「Portkeys」だ。
初めて聞いた人は覚えておいて欲しい。縁あって出会い、現在現場で使っているのだが、かゆい所に手が届くモニターだ。今回紹介したいのはPortkeysのBM5-WR。最大輝度2200nitの5.5型のオンカメラモニターだ。解像度は1920×1080。HDMIとSDI入力、スルーアウト可能な(LUTのON/OFFも可能)SDI出力ポート(1系統)、さらにモニターからカメラや周辺機器に給電もできる(後述する)。
3D LUTのモニタリングやSDI出力もでき、波形表示も完璧。さらにWi-Fi搭載、内蔵のBluetoothモジュール、とカメラ制御ポートがあり、カメラ制御が可能。筆者が普段使用しているSony、Blackmagic Design(Bluetooth接続)をはじめ、Canon、Panasonic、Z CAMなどにもカメラ制御が対応している。また、REDのKOMODOをワイヤレス(Wi-Fi)で制御できる。
細かい仕様はWebサイトなどで見て頂きたいのだが、とにかく便利極まりない機能を盛り込んでいるのに、お値段およそ85,000円。安価なオンカメラモニターを探せばもちろんあるが、ここまでできてこの価格はすごい。最先端の映像制作機材が集まるホットスポット、LANDSCAPE(東京・大阪)が日本で代理店を行っているのでサポートもバッチリ。安心して使用できるのも嬉しいポイントだ。
多機能だけどシンプル
前述したようにBM5-WRは多機能だ。ただ操作は至ってシンプル。一度タップしてアイコン表示がされたら上下左右にスワイプすることで操作できるメニューが変更される。たとえば1度タップして左にスワイプするとディスプレイ設定、右にスワイプすると画面表示設定、下にスワイプするとカメラコントロール(ズームや露出、REC操作も可能)、上にスワイプするとフォーカスコントロールができる(後述するがTILTAのNucleus-Nanoと組み合わせることで画面上でフォーカスコントロールができるのだ)。
1:ディスプレイ設定(左にスワイプ)
2:表示設定(右にスワイプ)
3:カメラコントロール
ここで一つ例を挙げてFX6/FX3(α7S III)でのカメラコントロール接続方法を紹介しておこう。同じソニー製のカメラでもLANCで動かすタイプとUSBマルチで動かすタイプがあるからだ。
FX6の場合、BM5-WRのCAMERA REMOTE端子とLANCで接続する。BM5-WR側もSony(LANC)を選択。基本これだけでBM5-WR上で大抵のカメラ制御が可能になる。割とクイックに操作がしづらいFX6なのでモニター上で制御できるのはとても助かる。ちなみにZOOMという項目は超解像ズームをONにしておけば超解像ズームが作動する仕様。
FX3やα7S IIIを使用する場合、細かい設定が必要だ。まず前提としてUSB給電の設定はOFFにしておき、BM5-WRとUSBマルチのケーブルで接続。BM5-WR側の設定はSony MULTIに。MENUからネットワーク→PCリモート設定を「入」に、PCリモート接続方式をUSBに設定。
4:フォーカスコントロール(上にスワイプ)
動画で実際の動き。滑らかだ
前述の通り、TILTAのNucleus-Nanoと付属のケーブルでBM5-WRにを接続することでモニタータッチでフォーカスコントロールができる。画面下の横軸がフォーカスメーターで指でドラッグすることでマニュアル操作が可能。さらにA点とB点を設定し、その間を任意の時間設定でオートで動かすことができる。少人数オペの際に大きな力を発揮してくれそうだ。
「あんなこといいな」を叶えるTILTAケージ
知る人ぞ知るが、私はTILTAアンバサダー。というのは差し置いて、あたりを見回せば結構な数のTILTAユーザーが増えてきているようでとても嬉しい。BMPCC4KのケージとワイヤレスフォローフォーカスのNucleus-Nanoで一躍有名になったTILTAだが地味に毎回進化していて、SonyをはじめCanon、Panasonicなど様々なカメラのケージシステムを提案してくれている。
サードパーティ製なのに、オフィシャルさながらのカメラとの一体感、またカメラを手にしたときの「あんなことができたらいいな」を叶えてくれるのがTILTAだ。今回はFX3とFX6のケージを紹介したい。よくできているのはもちろん、なんとFX6でVバッテリーが使用できるキットもあるのだ。Vバッテリー運用できるおかげで純正バッテリーの呪縛から逃れられ、D-TAPからの周辺機器への給電もスムーズに行える。おすすめの逸品だ。
「使いやすさ」は自分(と中国製機材)で作るのがスタンダード
先日、都内で42ND ROYAL HIGHLANDさんが手がける42+というアパレルブランドのファッションフィルムの撮影を行った際、縦位置と横位置撮影、ジンバルワークをクイックに変更しながら撮影内容だったため、このTILTAケージ+Portkeys BM5-WRの組み合わせが大活躍した。特に縦位置撮影の際、カメラの露出操作系がし辛いが、モニタータップで変更でき、RECコントロールができるのは本当に便利だった。
またヒストグラムしか表示できないFX3やα7S IIIを使う時にはBM5-WRは重宝する。写真にもあるがHDMI入力からのSDIスルーアウトでの出力をHollyLandのMarsに接続し、ワイヤレスでSUMO19に飛ばしてモニタリング。手持ち撮影、ケーブルレスでのプレビューは現場の進行の効率化を計れるものだ。
ちなみにジンバルはDJIのRS 2にTILTAのデュアルハンドルで使いやすくし、照明は全てNANLITEのLEDで賄った。どうであろう、気づけばカメラの周辺機器のほとんどが中国製だ。そこまでナショナリズムは筆者には無いが、もう少し日本も頑張れないのかな、と思ってしまうのだ。
ある意味、そのあたりを中国メーカーに任しているような風潮もあるが、そもそも論で安さを求めているのではなく、我々ユーザーが便利、と感じるものをカメラメーカーがもっと汲み取れる(想像して創造する)ようになってくれると色々なことが幸せになるのだけどもな、と考える。がんばれ我が国。といいながら便利で良いモノを使う毎日。良いモノは良いのだ。それが正義。