NANLITE JAPAN公式アンバサダー就任のご挨拶
気づけば久々のコラムになってしまいました。ご無沙汰しております。鈴木佑介です。
まず、最初に報告があります(今回はちょっといつもと論調を変えています)。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが私のかねてからのNANLITE愛が通じ、2022年4月より、私、鈴木佑介がNANLITE JAPANの公式アンバサダーに就任しました。
普段からTwitterなどでNANLITE製品の情報を色々と発信していますが、それ以上に皆様に良質な情報をお届けできるように頑張りたいと思います。よろしくお願いします。
ついに登場720WクラスのLEDスポット
NANLITEのLEDスポットライト「Forza」シリーズに最大出力となる720・720Bが加わった。NANLITEユーザーの方にはおなじみかもしれないが、「B」は「バイカラー」を意味し、2700K~6500Kの間で色温度の変更が可能なモデルだ。どちらも消費電力は800Wとかなりの高出力なライトになっているが、無印の720(デイライト5600K固定)の方が明るい(リフレクターを使用し1mの距離でForza 720で124000ルクス。Forza 720Bで84460ルクス)。
出力の話となるとForzaシリーズの上にNANLUXのEvoke 1200がある。筆者も映画や広告の撮影で使用している素晴らしいライトなので別の機会に紹介したいと思うが、Evoke 1200にフレネルレンズをつけるとかなりの大型でスタンドへの装着、スタンドの上げ下げなど2名がかりでないと取り扱いが難しいのが正直なところ。スタンドも通常のライトスタンドではなく、コンボスタンドでないとライトが装着できないので、個人ユースの場合のハードルが高い印象だった。
その点このForza720・720BはForza500が2台分程度の質量でかなりコンパクト。NANLITEの特徴だが灯体自体が軽量・コンパクトなので取り扱いしやすい。個人所有できるサイズのLEDスポットの最高峰なのではないだろうか。今回発売に先駆けて720Bを触ることができたので、そのインプレッションを皆様にお届けする。
テストしてみる
まず部屋のベランダにライトを立て、窓外の明かりを作ってみた。
自然光と比較して絞りにして2段明るくなった。無印の720であればバイカラーよりも光量があるので、もう少し明るさが稼げるであろう。筆者は「可能ならバイカラー派」なので選べるときはバイカラーのライトを使用するのだが、「圧倒的な明るさ」が欲しい人は無印の720という選択肢が良いだろう。
ひとまず、テストとして部屋の明かりは消し、窓外に立てた720B+フレネルレンズの明かりを白カーテンをしてディフューズ。窓際のテーブルに置いたマカロンの商品撮影的なシチュエーションでのテスト。窓外のライトの他にV-FLAT(カポック)でフィルを作っている。
室内でISO100 シャッター1/100で5.6というF値ということでいかに720Bがいかに明るいか分かっていただけたと思う。ベース感度が640のS-Log3で撮影するとなると、NDフィルターで減光も必要となってくる明るさだ。Forza 300やForza 500だともう一つ足りなかった明るさがForza 720Bひとつで補える、というか「きちんと光があり、照度もある」という状態を作ることができる印象だ。2発あれば大きめの窓でも埋めることができるだろう。
ついでに、というか光を作った状態で手持ちのコンデジ(FUJIFILM X100V)でなんとなく写真を撮ってみた。きちんと「光がある」状態なのでただシャッターを切るだけで映える画が生まれた。きちんと自然光に見える上、馴染みも良い。
窓外の光に対して今度は人物を立たせてみた。白レフ、黒レフ無しに自然光だけで適正露出を取ろうとすると、どうしても全ての明るさがオフセットされてしまうのでコントラストが無い画になってしまうが、窓外に高出力のライトを置くことでコントラストのある画を任意の絞りに近いところで作り、コントロールすることができる。
もちろん自然光でも同じことができるが、もし曇天だったり、雨だった場合には再現ができない。自然光を再現するためには高出力のスポットライトが必要なのだ。
そしてバイカラーであれば、光の色をコントロールできるので曇天や雨の日はもちろん、時間帯を問わず夕日っぽい演出を作ったり、夜に朝のシーンを作ることもできる。デイライトにコンバージョンフィルターをかけて代用もできるが、その手間を考えるとスイッチを回転させるだけで色温度が変更できるバイカラータイプの利便性は何物にも変え難い。
NANLITEのボーエンズマウント用のプロジェクションアタッチメント「NANLITE PJ-BM」を使ってスポットライト演出。
上下左右のシェイパーを使って丸や四角に光をカットすることができる。業界標準のGobos(ゴボ)Type-B(86cmx64.5cm)を使った演出もできる(写真はブラインドのGobo)。
フロントレンズは19°と36°がある。テスト時は19°を使用したが、日本の狭い室内だと36°が良さそうだ。ちなみにこのForza 720/720Bは26VのVバッテリー運用が可能だ。
26VのVバッテリー2本を使用して、最大出力は65%になるが、それでも結構な明るさになる。屋外での撮影の補助光や暗所撮影でのライティングの強い味方になってくれるだろう。
Fozra 720で、ひとつだけ残念なことがある。冷却FANをオフにすることができるが、その場合出力が15%となる。このサイズでの高出力な故、仕方ないが、15%の出力は残念な印象を受けるかもしれない。最近はMAでファンノイズを取ることができるので、同録の場合はそのあたりを録音/MA担当と相談しておくと吉。筆者はファンをオフにせず、MAで対処する(してもらう)ことが多い。
バラストだけ部屋の外だけにおけるよう、HMIのようにライトとバラストの延長コードなどをオプション販売してもらえると嬉しい。
定常光でスチル撮影
余談だが、昨年末よりスチル撮影を始めた筆者。これだけの光量があればスチル撮影も可能なのでは?と思いテストをしてみた。
ファッションフォトやポートレート撮影を想定し、白のバックペーパーを使って撮影。150cmのソフトボックスを装着したForza 720Bを上手から当て、下手側にレフを置いただけのシンプルな1灯ライティングを組む。
ポイントは写真と映像を同じ光量、ライティングで行き来できるか?をテーマに映像撮影時をS-Log3だとしたときの基準感度でISO640で設定。シャッターは映像合わせで1/100固定。Forzaはどれくらいの絞りが取れたかというと、なんとF9。
ソフトボックスに入れて、被写体までの距離は1.5m程度だとしても、やはり明るい。写真撮影時にもう少しシャッター速度を速めたいとしても、まだ絞りを開ける余地が全然ある。ものすごく高速な動きの被写体を写真に収めたいとか、どうしても感度をISO100にしたい、などが無い限り全然定常光でも綺麗な写真が撮れる。
ちなみにフィルライトを白レフ、黒レフ、ソフトボックスにエッグクレートを付けたて撮り比べてみた。1灯ライティングでもフィルの扱いだけでこんなに変化する。
ソフトボックスを外して、ベアバルブの状態で天井バウンスで撮影してみたが、そこはさすが720。予想以上に光量がある。
また、ソフトボックスを80cmの小型に変え、ブームで吊りトップライトのみで撮影を行なってみたが、これも良い仕上がりだ(写真は全てS-Cinetoneで撮って出し)。
このForza 720・720Bは写真と映像の世界を器用に行き来する若い世代やこれからのクリエイターにもってこいのライトだと感じた。写真と同時に動画も撮りたい、という発信系、ファッション系、フード系のビデオ/フォトグラファーにもおすすめだ。ぜひ色々な方に一度試してもらいたい。
振り返ってみると数年前は300wで大騒ぎしていた「高出力のライト」の定義が今やもう720Wだ。これを良識的な金額で個人所有ができる時代ということに感謝をしたい。筆者は2~3台揃えるつもりだ。近々、現場運用もしてみるので、可能であれば追ってレポートしたいと思う。今年は色々と面白い製品が登場するらしいので、これからもNANLITEに注目だ。