NFTマーケットの今
本コラムのVol.22でも取り上げたNFT(Non-Fungible Token)市場ですが、昨年から更に勢いを増して成長を続けており、まさに今一大ブームとなりつつあります。NFTの特徴は、ブロックチェーンによって複製可能なデジタルデータにも唯一無二の所有権を持たせることができる点にありますが、この特性を利用して、自分のアートワークをプロフィール画像用のNFTコレクションとして発表するクリエイターが続々と誕生しています。これらはPFP(Profile-Picture)コレクションと呼ばれ、新たなトレンドを生み出しています。
ブロックチェーンや仮想通貨の界隈では、唯一無二のキャラクター画像をNFTで所有し、自身のSNSのプロフィールアイコン的に使用することがステータスになっているようです。同じく昨年から話題になっているメタバースと掛け合わせると、バーチャル世界で活動する自分のアバターは、「他人と絶対に被らないように」唯一無二のNFTコレクションを所有する事が普及していくかもしれません。まさに「ステータスの未来」と言えるでしょう!
このように、メタバースの実現に向けて今後ますます加速していくであろうNFT PFPコレクションの先進事例をいくつかご紹介します。
NFT PFPコレクションの先進事例
NFTコレクション:CryptoPunks
カナダのソフトウェア開発者二人組のLarva Labsによって、2017年6月に発売された最初期のNFTコレクションのひとつがCryptoPunksです。人間・猿・ゾンビ・エイリアンをモチーフとしたシンプルなドット絵が特徴で、全部で10,000体の異なるデザインのキャラクターが存在しています。これまでの総取引金額は日本円換算で3,000億円以上、最も高額なキャラクターは30億円相当での売買が記録されています。
NFTコレクション:Bored Ape Yacht Club
10,000体の様々な恰好をした類人猿のイラストのNFTコレクション。アメリカの女性イラストレーターSenecaによるアートワークで、2021年4月に1体約3万円で発売されましたが、現在では最も安いキャラクターでも1体約3,000万円という価格に高騰しています。アメリカではプロスポーツ選手やミュージシャン等のセレブの所有者が多く、人気となっています。
NFT所有者はメンバー専用のコミュニティ「Bored Ape Yacht Club」に入る事ができるという設定で、インターネット上の仮想クラブにログインする事でメンバー同士で交流したり、限定のアートグッズを購入できたりといった特典が用意されています。
NFTコレクション:0N1 Force
7,777体のキャラクターのNFTコレクションで、0N1 Force(オーニーフォース)と読みます。Webサイトには彼らの暮らす架空の世界「Ethereal Enclave」に関する設定や、生き残りをかけて戦う事になるキャラクター達の物語の序章が描かれており、日本のマンガやアニメ作品にも影響を受けたような世界観が展開されています。
追加要素として0N1 Framesと呼ばれる装備品を購入できたりと、今後はRPGゲームのように楽しめるNFTコミュニティを目指していくようです。
NFTコレクション:Cool Cats
2021年6月に発売された9,999体のかわいらしい青い猫のイラストのNFTコレクションで、これまでに合計約400億円の取引額を記録しています。猫だけに留まらず、Cool Petsと呼ばれるポケモンのような育成型ゲーム、独自の通貨「$MILK」によるアイテムの購入等、NFT所有者に対してバーチャルペットアプリやゲームコミュニティとしての展開を予定しているようです。
NFTコレクション:Doodles
カナダのイラストレーターBurnt Toastによるキャラクターイラスト10,000体のNFTコレクション。2021年10月に発売され、オリジナルグッズを販売するshopDoodlesや、自身のアバターを宇宙船に乗せて旅をするゲームSpace Doodles等、複数のコンテンツを展開しています。
SXSW2022では独自の世界観を表現した展示スペースを設置し、有名DJによるNFT所有者限定のパーティーを開催するなど、大々的なプロモーションを行って注目されていました。
NFTコレクション:FLUF World
ニュージーランドのクリエイティブスタジオNon-Fungible Labsによる、10,000体の人型ウサギのNFTコレクション。メタバース時代の到来に向けて、3Dアバターとしての使用を想定しているようです。ウサギの他にも、クマのParty Bear、クモのTHINGIESなど他の動物キャラクターも展開しています。
オンラインだけではなく、所有者限定のリアルイベントやパーティーの開催等、NFT所有による付加価値を強化しています。SXSW2022にはXR関連のスポンサーとして参加し、オンラインとリアル会場の両方で存在感を放っていました。
まとめ:NFTの本質はアートワークよりも所有者限定のコミュニティにあり
今回紹介した以外にも、NFTが話題となった昨年1年間で非常に多くのNFTコレクションが発表されています。各コレクションはそれぞれのイラストレーターの作風によって差別化されていますが、調べてみるとNFT所有者は作品自体のアートワークにはそこまで関心がないように感じました。
それよりも限定数のレアリティに対する人気や、セレブと同じNFT所有者コミュニティに入れるというステータスの方に魅力を感じているようです。値段がどんどん上昇しているので、投資目的でNFTコレクションを所有する人も多いようです。個人的には、まるで日本のバブル期のゴルフ会員権のような仕組みだなと感じました。
これからは単にクリエイターの収益化方法の一つとしてNFTを活用するのではなく、そこからコミュニティをどう育てていくか、それをメタバースのような次の構想につなげていけるかどうかが、NFTコレクションが本当の価値を生むカギになってきそうです。