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Anime Expo 2022の会場、ロサンゼルス・コンベンションセンター

はじめに

いつだったか、ダウンタウンLAに住むアメリカ人の同僚はこう語っていた。

朝起きてね、ボーっとしながら、外を見てコーヒーを飲んでいたら、表の道路を大量のアニメ・キャラクター達が全員、同じ方向に向かって突き進んでいるんだ。

普段はありえない、すごく異様な光景だよ(笑)。「何事だろう?」と思って調べてみると、「ああ、今日はAnime Expoの日か!」と。

今や、夏の風物詩だよ。

ここロサンゼルスでは、日本のアニメとポップ・カルチャーのコンベンション「Anime Expo」が毎年開催されている。

今年はアメリカ独立記念日の連休に合わせて7月1日から4日まで開催され、会場のロサンゼルス・コンベンションセンターには、全米から10万人以上のOtakuの皆さんが集まり、大盛況であった。

今回は、その模様を簡単にレポートさせて頂くことにしよう。

※Otaku:英語圏における、アニメやポップ・カルチャーなどのマニアの総称。もちろん日本語の「おたく」が語源であり、言ってみれば「米製和語」である。アメリカ人のマニアの間では、"Otaku"と呼ばれることは一種の誇りであり、ステータスでもあるらしい

Anime Expoとは

Anime Expoは、日本のアニメとポップ・カルチャーに特化した、全米で最大規模のコンベンションである。1992年より毎年1回開催されており、昨年で30周年を迎えた。SPJA(The Society for Promotion of Japanese Animation)が主催しており、基本的には非営利のボランティアによって運営されている。

当初はカリフォルニア州のサンノゼ、アナハイム、オークランドなどのホテルを会場に開催されていたが、規模が大きくなるに従い、2008年以降はSIGGRAPHの会場としてもお馴染みの、ロサンゼルスのダウンタウンにあるコンベンションセンターで開催されている。ちなみに、過去にはカリフォルニアでの開催と並行して、NY(2002)や東京(2004)で開催されたこともある。

過去2年間はコロナの影響でオンライン開催だったため、今年は2年ぶりの実地開催となった。

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ルパン三世も人気

多くの訪問者が訪れる大規模なコンベンションだけに、アニメ関連企業がブースを並べる展示販売ホール、著名ゲストを迎えてのパネルセッション、アニメ作品の上映やプレミア上映、コンサートや多岐に渡るイベントなどなど、盛りだくさんの充実した内容になっている。

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悔しいことに、SIGGRAPHの3〰4倍はあろうかという参加者の密集度(笑)

今年の著名ゲスト

Anime Expoは、毎回アニメ業界の著名人をゲストとして迎えている。

今年の著名ゲスト(敬称略)は、石川光久(Production I.G.創設者)、寺島真樹子(Production I.G. USA社長/プロデューサー)、神山健治(アニメーション監督)、荒牧伸志(監督、メカニックデザイナー)、飯島真理(シンガーソングライター、「マクロス」でおなじみ)、「Obey Me!」から古林裕貴(マモン役)+山下和也(ルシファー役)+矢口恭平(ベルゼブブ役)+加田智志(レヴィアタン役)+角真也(サタン役)、柴山智隆(アニメーション監督/スタジオコロリド)、四戸俊成(「神在月のこども」原作・コミュニケーション監督)、オシアウコ(「神在月のこども」統括プロデューサー)他、非常にバラエティに富んだ顔ぶれで、アメリカにおけるアニメファン層の幅の広さを伺わせる。

どのようなイベントなのか

さて、Anime Expo 2022では、どのようなイベントが開催されたのであろうか。その一端を、公式サイトで紹介されていた内容の中から、興味深いものをいくつか抜粋してみよう。

地下アイドル:Underground Idols in Japan

長年のアイドルオタクとして有名なパネラーが、日本の地下アイドルの世界を紹介するパネルセッション。

ULTRAMAN ARRIVES IN THE UNITED STATES IN PERSON FOR THE FIRST TIME

ウルトラマンは世界で最も有名なキャラクターの1つであり、シリーズは合計1,400話を超え、数十本の長編映画が存在する。最近では、2022年5月に映画「シン・ウルトラマン」が日本で劇場公開され、30億円以上の興業収入を記録している。

今回、アメリカ合衆国史上初めて、ウルトラマン本人が北米大陸にやってくる!さぁ、みんなで会いに行こう!

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ショーにて、バルタン星人を撃退し、観客の大喝采を浴びるウルトラマン
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アクション満載で大迫力のショーに、観客は大喜び

Production I.G. USA Industry Panel with Maki Terashima-Furuta & Guests!

毎年恒例、Production I.G. USAの社長そしてプロデューサーの寺島真樹子によるパネル。Production I.G. USAがプロデュースしているアニメ作品、そして現在制作中のプロジェクトの中から「C団地(Housing Complex C)」、「FLCL:Grunge」、「FLCL:Shoegaze」、「うずまき(UZUMAKI)」等を紹介。今回は特別ゲストとして、石川光久(Production I.G.創設者)、神山健治(アニメーション監督)、荒牧伸志(監督、メカニックデザイナー)の各氏が登壇。

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左から、寺島真樹子(Production I.G. USA社長)、石川光久(Production I.G.創設者)、神山健治(アニメーション監督)、荒牧伸志(監督、メカニックデザイナー)の各氏
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パネル終了後は、大勢のファンに囲まれサインや記念撮影

Maid Cafe

我らが聖地☆秋葉原から本場のメイドカフェが会期中に限定オープン!入場には別途チケットの購入が必要。ドリンクとインタラクティブなショーをお楽しみあれ。また、帰りにメイドさんに感謝することもお忘れなく♪

The Music of Yoko Kanno

数々のアニメーション作品にオーケストラやJazzの名サントラを生み出してきた作曲家、菅野よう子の音楽の世界を語るパネルセッション。

Behind the Scenes Look at the World of English Dubbing

お気に入りのアニメを、英語に吹き替えるプロセスを探求したいと思ったことはないだろうか?その専門家チームがADR/吹き替えの世界の舞台裏をご紹介。英語版吹き替えのディレクター、エンジニア、制作スタッフに会おう!

Kaguya-sama:Love Is War-Ultra Romantic-Festival

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」から、四宮かぐやを演じる声優の古賀葵と石川達也プロデューサーが登壇する、アニプレックス・オブ・アメリカによる超ロマンチックな特別イベント!

Studying in Japan:How to make it happen

憧れの日本に長期間滞在し、アニメを継続的に研究してみたいという夢を持つアナタの悩みにお答え。このパネルでは、パネラー本人が日本滞在中に得た実経験や、日本で夢を実現するための多くの方法についてご紹介。高校から語学、大学、文部科学省の奨学金制度まで、日本の教育プロセスとストーリーを詳しく解説。Q&Aのコーナーもあるので、ぜひ質問のご用意を!

Otaku Parliamentary Debate Signups

あなたが持つアニメやオタク文化に関する高度な知識を、トーナメント戦でぶつけてみよう。AXオタク議会のディベート・チャンピオンになるのは誰だ!さぁ今すぐ登録を!

The U.S. Premiere of "The House of the Lost on the Cape"

映画「岬のマヨイガ」の北米プレミア上映会。会場近隣のRegal Cinemaにて。

熱気に包まれた展示販売ホール(Exhibit Hall)

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来場者でごった返す展示販売ホール

展示販売ホールはすさまじい熱気に包まれており、アニメグッズ、キャラクター商品等を販売するブースには大勢のファンで賑わっていた。また「新世紀エヴァンゲリオン」、「ガンダム」、「ONE PIECE」、「鬼滅の刃」、「ウルトラマン」の関連ブースは軒並み大人気であった。

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ガンダムは不動の人気
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全米でも公開され話題を呼んだ「鬼滅の刃」のブース
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東映アニメーションのブース
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少年ジャンプのブース

各展示ブースに並んでいる作品の中には、プロの日本人である筆者ですら見たことがないような作品もあり(笑)、この世界の奥深さを痛感させられる。

会場の中のモニターにアニメ作品が流れていると、その前には人だかりができていた。例えそれが日本語の作品でも、一生懸命に理解しようと、熱心に見入っている姿を目にした。アニメファンの中には、アニメ好きが高じて日本語を勉強し、日本語が話せたり、日本の文化を研究している人もいる。思わぬ所で日米文化交流が進んでいるようだ(笑)。

なんでも、"通"の間では、「日本のアニメは、英語吹き替え版ではなく、日本語のオリジナルを観るに限る」とも言われているらしい。

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アニメセルを販売するブースでは、1枚100ドルという高値で取り引きされるセルも

アメリカ人のコスプレ

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ピース♪

さて、日本でゲームショウやコミコン等が開催されると、必ずコスプレ族で賑わうが、ここAnime Expo 2022でも、アメリカ人の「コスプレ根性」(笑)に圧倒された。

初音ミクはいるわ、セーラームーンはいるわ、ワンピースのルフィはいるわ、ジオン軍の将校はいるわ、ルパン3世はいるわ、意味不明のキャラクターはいるわで、もう大変な騒ぎであった。

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サウスホールのロビーにはコスプレが集結
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気合入りすぎ(笑)。通りすがって、驚いて見上げる人も

会場のあちこちで、カメラに囲まれたり、コスプレ仲間同士で写真を撮り合ったりする光景も見られた。またコスプレのコンテスト等も実施されていた。

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コスプレイベントのパネル

おわりに

職業柄、筆者が訪問する映像関連イベントは、SIGGRAPHやVESなど、「映像を作る側」を対象としたコンベンションやイベント等が多い。しかし今回、久しぶりに「映像を観る側/ファン側」のコンベンションに参加してみて、とても新鮮な感覚を覚えた。

参加者の熱意、目つきがまるで違う(笑)。コスプレ1つにしても、それぞれが独自に工夫を凝らし、作り込んだレベルの高い作品も多く、自分が好きな作品に対する深い愛情が感じられた。また、みんなとっても楽しそうである。

アメリカの地で、日本のアニメーションやポップ・カルチャーに対して、これだけ大勢の人々が集い、楽しんでいる姿を目の当たりにして、筆者はなんとなく嬉しく思ったのである。

来年のAnime Expoは、また、ここロサンゼルスはダウンタウンのコンベンションセンターで開催予定である。興味のある読者の方はLA観光も兼ねて、一度訪問してみてはいかがだろうか。

WRITER PROFILE

鍋潤太郎

鍋潤太郎

ロサンゼルス在住の映像ジャーナリスト。著書に「ハリウッドVFX業界就職の手引き」、「海外で働く日本人クリエイター」等がある。