
国内最大級のICTイベント、Interop Tokyo 2025が開幕
6月11日(水)、幕張メッセで「Interop Tokyo 2025」が開幕した。ネットワークをはじめとした、クラウド、セキュリティ、データセンター、AIといった情報インフラに関わる技術を幅広く扱う国内有数のICT総合イベントであり、今年で32回目の開催となる。
Interopは、異なる企業やベンダーが開発したネットワーク機器・システムを、実際に会場内で相互接続・検証することで"本当に動くかどうか"を証明してきた、世界でも類を見ない技術展示会だ。
その起源は1986年の米国開催にあり、日本では1994年にスタート。現在ではInterop Tokyoが世界唯一のInteropイベントとなり、ネットワーク、クラウド、AI、セキュリティといったインフラ技術の実証と発信の場として発展を続けている。
Interopの最大の特徴は、会場内に実稼働ネットワーク「ShowNet」が構築される点にある。製品を"飾る"だけでなく、実際に"つないで動かす"ことを通じて、標準規格への対応状況や導入時の課題、設定ノウハウなどをリアルに検証・共有できる場となっている。

展示の主軸は通信・IT・システムインフラ分野だが、年々その対象範囲は広がっており、会場内では「デジタルサイネージ ジャパン(DSJ)」「アプリジャパン(APPS JAPAN)」「Vision AI Expo」など、多様な業種・技術領域に特化した展示会が同時開催されている。
中でもDSJではLEDディスプレイや映像表示技術の出展が多く、バーチャルプロダクションや空間演出に関心のあるメディア関係者にとっては、実務的なヒントが得られる展示構成となっている。また、日本データセンター協会と連携した新企画「Data Center Summit」も開催されており、AI時代の制作・配信を支えるインフラ技術に触れられる機会として注目を集めている。
さらに、放送・映像に特化した「Internet × Media Summit(IMS)」では、AI活用、IP伝送、クラウドネイティブ制作など、映像制作と隣接するテーマが網羅されており、現場視点でのヒントが得られる構成となっている。
制作現場のIP化、クラウドによる素材共有、配信インフラの最適化といった課題に向き合う中、これらの同時開催イベントは、単なる展示を超えた"実務課題を解決するための学びの場"として機能している。
ShowNet:動作検証型ネットワーク展示

Interopの会場全体に構築されるのが「ShowNet」と呼ばれる大規模ネットワークだ。2300を超える製品・サービスが接続され、SRv6、EVPN VXLAN、800G光伝送、ローカル5G、ゼロトラストセキュリティといった先端技術が、実際に稼働する形で紹介されている。
このネットワークは、単に製品を陳列するのではなく、「実際に動かす」「他社と接続する」「想定トラフィックを流す」といった検証の場として構成されている点が特徴だ。構築には延べ800人を超えるエンジニアが関わり、展示を通じて、仕様書には現れにくい運用上の工夫や実装課題を垣間見ることができる。
放送・映像の分野でも、ネットワーク設計や伝送構成の知識が求められる場面は増えており、こうした"動く展示"から得られる視点は、システム選定や構成の検討に役立つケースもあるだろう。
中でも注目を集めているのが、全国12の放送局と複数の通信事業者が参加する特別実証企画「ShowNet Media-X」だ。InteropのシンボルであるShowNetを活用し、系列や地域を超えた放送局同士のIP接続、リモートオペレーション、素材伝送のリアルな運用検証が行われている。
ST 2110、SRT、NDIなどの多様なプロトコルによる相互接続が試され、放送のIP化・クラウド化に向けた「使って試せる」検証環境が構築された。現場では来場者がアクリル越しに技術者の作業風景を見学できるようになっており、インフラとしてのShowNetが、いかにメディア運用に適用できるかを実感できる内容となっている。
同時開催イベント:Internet × Media Summit

Interop Tokyoの会期中は、複数の専門分野に特化した同時開催イベントも実施されている。そのひとつが、放送・映像に焦点を当てた「Internet × Media Summit 2025(IMS)」だ。
IMSでは、AI、クラウド、IP伝送、空間演出など、メディア業界に関係のあるトピックを扱う展示・セミナーが行われている。詳細は以下の公式ページを参照されたい:
映像業界がInteropを見る意味

Interop Tokyoは、放送・映像技術そのものを扱う場ではない。だが、映像制作に関わるネットワーク、配信、クラウド、セキュリティといった"下支えとなる技術"の現在地を知る場として、有用な視点を与えてくれる。
必要な情報だけを選び取って活用するという意味でも、特定の業種に限定されないInteropの構成は相性が良い。IMSを入口として、周辺のインフラ技術にも目を向けてみると、今後の制作環境や設備設計を考える上でのヒントが見つかるかもしれない。

