IBC2025のキヤノンブースでは、映像制作の多様なニーズに応える新製品やソリューションが多数展示された。特に注目を集めたのは、CINEMA EOS SYSTEMの最新モデルやレンズ、そしてシリーズ最広角・最軽量の「CINE-SERVOレンズ」である。
新製品として発表されたデジタルシネマカメラ「EOS C50」は、CINEMA EOSラインにおいて最小・最軽量を実現したモデルである。高い機動力とプロフェッショナルが求める画質、機能を両立させている。新開発の7KフルサイズCMOSセンサーを搭載し、7Kでの内蔵RAW記録や、オーバーサンプリングによる高画質な4K動画記録に対応する。また、CINEMA EOSとして初めてセンサーの全領域を記録するオープンゲート機能に対応した。
さらに、横長のメイン映像を撮影しながら、同時にソーシャルメディア向けにトリミングした縦長や正方形の映像を同時記録できる「縦横同時記録」も搭載しており、撮影後の編集作業の工数削減に貢献する。インターフェースにはフルサイズのHDMI端子や、マルチカメラ撮影に不可欠なタイムコード端子を備え、アサイナブルボタンも14個搭載するなど、高い拡張性を持つ。同梱のハンドルユニットには録画ボタンやズームレバーが装備されており、手持ちでの撮影スタイルにも対応する。
記録フォーマットの多様性も紹介された。EOS C50が対応するオープンゲート機能は、2025年下期に予定されているファームウェアアップデートにより、上位モデルの「EOS C400」でも利用可能になる予定である。このほか、12bitのCINEMA RAW LightやCanon Log 2/3、10bit 4:2:2といった多彩なフォーマットでの記録が可能で、幅広い映像表現の要求に応える。
バーチャルプロダクションとの連携も大きなテーマであった。キヤノン独自の「CVプロトコル」を用いたデモンストレーションでは、レンズのフォーカス、ズーム、絞りといった情報をリアルタイムでバーチャルシステムに伝送し、物理的なカメラの動きとバーチャル空間内のカメラが完全に同期する様子が示された。この連携は多くのバーチャルシステムベンダーと事前に行われており、従来は設定に多くの時間を要したレンズキャリブレーションなどの工程を大幅に短縮できる点が強調された。
レンズ製品では、CINE-SERVOレンズシリーズの新製品として、シリーズで最も広角となる焦点距離11mmを実現し、かつ最軽量となるモデル"CN5×11 IAS T/R1"(RFマウント)と"CN5×11 IAS T/P1"(PLマウント)が発表された。既存の広角モデル(15mm)よりもさらに広い画角での撮影を可能にし、ステディカムを用いた撮影などスペースが限られた現場での活用が期待される。軽量であることから、クレーン撮影などでの運用性も向上する。
PTZカメラのコーナーでは、2025年夏のファームウェアアップデートで追加された新機能が紹介された。これまでの1人の人物を追尾する機能に加え、新たに複数対象の機能が搭載された。これは、フレーム内にいる複数人をカメラが自動で認識し、全員がバランス良く画角に収まり続けるように、ズームイン・アウトやパン・チルトを自動で制御する機能である。これにより、少ないオペレーターでの効率的な撮影が可能になる。