「ここ、本当にSSDの展示ブースなんですか?」
──毎年そんな声が聞こえてくるSamsung SSDブースが、今年のInter BEEでもひときわ異彩を放っている。
単に製品をショーケースに並べたり、SSD単体のベンチマーク値を誇示したりする展示とはまったく違う。Samsung SSDのブースには、シネマカメラ、リグ、ワークステーション、クラウド運用など、映像制作の"現場機材"とSSDを組み合わせた実戦仕様のワークフローが丸ごと構築されている。
そして、その構成はいずれも「現場で確実に使えるかどうか」を基準に入念に検証されたもの。撮影・転送・編集・バックアップ──制作工程で発生する"無駄な待ち時間"を徹底的に削るソリューションが、すべて"実働デモ"として体験できる。
今年は特に、制作現場で常態化していたコピーやバックアップの時間的ボトルネックに切り込む展示が多く、映像クリエイターから放送局関係者まで、幅広い来場者を惹きつける内容となっている。
"収録から時短は始まっている" SSDダイレクト収録の最前線
Samsung SSDブースの入口でまず目を引くのは、シネマカメラやスマートフォンを使ったSSDダイレクト収録の実演だ。iPhone 17 Pro、パナソニックLUMIX S1IIなどの最新機種から、アップデートでProRes RAW/Blackmagic RAW対応になったBlackmagic Designのカメラやレコーダーまで、ポータブルSSD「T9」「T7 Shield」、そして内蔵タイプのNVMe SSD「9100 PRO」に"直接"収録するワークフローが紹介されている。
高ビットレート・大容量収録が当たり前になった今、制作現場のボトルネックは"撮影後"に集中しがちだ。SSDダイレクト収録は、その渋滞を入口から解消するアプローチだ。SSDに直接記録されたデータは、収録直後から高速転送で取り込み可能。T9ならUSB 3.2 Gen 2×2、9100 PROならGen5クラスの転送速度により、バックアップ作業時間は従来と比べて飛躍的に短縮される。



撮影と編集が"同時進行"するマルチカム&クラウド制作
ライブ収録&編集のコーナーでは、Blackmagic CloudとSamsung SSDを組み合わせた、"撮影しながら編集を行う"ワークフローが披露されている。
収録には複数台のスマートフォンが用いられ、各端末にはBlackmagic Cameraアプリをインストール。スマホをマルチカムとして運用し、撮影したプロキシデータが数秒後にはクラウド経由で編集者の元へ届き、即座にDaVinci Resolveで編集を開始できる。
現場では撮影を進めつつ、届いた映像データをリモート側で同時並行的に編集していく──まさに"ライブで動くワークフロー"だ。
オリジナルデータは、並行してSamsung SSDを搭載したマイクロデータセンターに格納されるため、高画質データでの最終納品にも対応できる。撮影現場と編集現場がシームレスにつながり、即日納品を含めた高速な制作環境が実現している。
しかも、このワークフローを実際にもちいて、Inter BEE会場のSamsung SSDブース紹介の映像を制作しており、会期前日にはYouTubeに公開されているので、ぜひご覧いただきたい。
Samsung SSDブース紹介映像


放送・ライブ配信の中核を担う、コンパクトなリプレイシステム

ライブ配信や番組制作の多様化が進む中、リプレイ運用の重要性は増す一方だ。
ブースでは「Blackmagic Replay × Samsung SSD」によるコンパクトなリプレイパッケージが展示されている。
スロー再生、リプレイ、簡易スイッチングなど、通常は大型システムが担う機能を、Blackmagic Designの「HyperDeck Studio」や「Cloud Dock」、そして安定したスループットを誇る「870 EVO」を軸に、わずか10インチ幅の小型ラックへ凝縮した実戦的構成だ。
スポーツ中継、ライブステージ、イベント配信など、「限られたスペースと予算で、放送品質のリプレイ環境を導入したい」という現場にとって魅力的なソリューションだ。


50GB/秒を超える"異次元コピー"──9100 PRO 8TB RAID × FastCopy実演

Lenovo「ThinkStation P8」とHighPoint RAIDカードを組み合わせた超高速ワークステーションが展示のハイライトだ。HighPoint「Rocket 7604A」にGen5 SSD「9100 PRO 8TB」を4枚装着したRAID構成により、実測で50GB/秒を超える転送速度を記録。
デモでは、ニコンZ 9で収録したN-RAW 8.3K 60p映像(約14分・554GB)をわずか9.5秒でコピーする圧倒的な速度を確認できた。高速RAID向けに最適化された「FastCopy」を採用することで、Windows環境においてベンチマーク速度だけでなく、実際の大容量データ転送においてもSSDの性能を最大限に引き出している。
さらに、8K RAW編集でもコマ落ちを起こさずに処理が進むなど、大容量データを扱うワークステーションとしての実力を実演を通じてダイレクトに体験できる。



進化したThunderbolt 5環境で、大容量データの高速バックアップを実現
高速バックアップのコーナーでは、次世代インターフェイスを活かしたワークフローとして、OWC「Express 1M2 80G」と「9100 PRO 8TB」を組み合わせたデモが展開されている。
TB5/USB4の80Gbps帯域を活かす高速なSSDにより、大容量データのバックアップは、従来のUSB 3.2 Gen 2 SSDと比べて実測で6〜8倍の高速化を実現。コピーに30分以上かかることが珍しくない現場では、「バックアップが驚くほど早く終わる」という強いインパクトを与えるだろう。
さらに、発売直後の最大800MB/秒を誇るmicroSD Expressカード「P9 Express」も展示。アクションカムやドローン撮影における「撮って→即バックアップ→次の収録へ」のテンポを大幅に改善する。



"SSDを並べるだけ"では決して見られない、実戦ワークフロー主義のブース。
Samsung SSDブースの最大の特徴は、「SSDの性能を見せる場」ではなく、「SSDを組み込んだ現場ワークフローそのものを見せる場」として作られている点だ。
SSD単体の速度アピールではなく、
- どのカメラやスマホと組み合わせて安定して使えるのか
- どのワークステーション構成で最大性能を発揮するのか
- 撮影やバックアップに適したシステムはどれか
- クラウドと連携した際にどの工程が加速するか
といった"現場が本当に知りたい情報"が、すべて動作デモとして用意されている。
だからこそ毎年、来場者から「ここはSSDブースなの?」「実際に現場で試してみたい」という感動の声が上がるのだ。制作工程で発生するムダな時間を徹底的に削り、撮影から納品までのテンポを大きく変えてしまう。
Samsung SSDのInter BEE 2025展示は、その一貫したワークフロー設計を体験できる貴重な場となっている。