グラスバレーブースでは、「AMPP」をはじめ、「EDIUS 11」の新機能(参考展示)や、多くの放送局で導入されている「T2/T3」を中心としたグループクリエイティブフローなどを展示していた。ブース全体からは、効率性・拡張性・創造性による業務革新を目指す方向性が感じられた。

AMPP

国内外で導入が進む仮想化メディア制作プラットフォーム「AMPP」は、ライブ制作からコンテンツ管理、自動化、配信まで幅広いニーズに対応できる柔軟性が特長だ。パブリッククラウド、オンプレミス、ハイブリッドなど、運用環境を問わず稼働できる点も強みで、ブースでもその汎用性を活かした構成が印象的だった。1時間単位または1カ月単位の従量課金制により、初期投資を抑えながら新規事業にも展開しやすい点が来場者の注目を集めていた。

展示は「ライブプロダクション」「アセットマネージメント」「プレイアウト」の3コーナーで展開。

ライブプロダクションでは、ビデオスイッチャーやリプレイ、オーディオミキサーを中心に、複数オペレーターによる本格的な運用ワークフローを紹介。加えて、1人のオペレーターで運用できる小規模配信向けのアプリケーションも提案されていた。

プロダクションスイッチャー「Maverik X」
リプレイシステム「LiveTouch X」
シングルシートイベントプロダクション「Event Producer X」

アセットマネージメントでは、素材のインジェストからAIと連携したメタデータ抽出、ブラウザベースでのカット編集、さらにワークフロー機能を活用した変換・転送の自動化まで、トータルな制作フローを実演。

アセットマネージメント「Framelight X」

プレイアウトでは、1つのコンテンツを複数の配信先へ効率的にデリバリーするアプリケーションが展示され、マルチプラットフォーム対応の柔軟性がアピールされていた。

プレイアウト「Playout X」

EDIUS 11

約20年にわたり業界標準として支持されてきたEDIUSは、最新バージョン「EDIUS 11」で新アーキテクチャを採用。次世代ワークフローに対応する直感的な編集環境を打ち出していた。

ブースでは、次期バージョン搭載予定の新機能を参考展示。「Quick Fix Export」では、テロップ差し替えなど修正箇所のみをレンダリングすることで、大幅な時間短縮を図れる。「Speech to Text」は音声からテキストを自動抽出し、メタデータとして検索等に活用できる機能だ。また、VST3プラグインに対応し、サードパーティ製アプリケーションとの連携性も高まるとして来場者から関心を集めていた。

EDIUS 11 新機能「Quick Fix Export」
EDIUS 11 新機能「Speech to Text」

T3

あらゆる制作現場に対応する多用途デジタルレコーダー/プレーヤー「T3シリーズ」は、録画・再生・トランスコードを1台で担える点が特長。ライブイベントやスポーツ、放送局向けに最適化された設計で、運用効率と堅牢性を兼ね備えている。

今回は上位モデルの「T3 Elite Max」が展示され、HD最大4チャンネルでの運用に対応する新機能が披露された。従来はHD最大3チャンネルまでだった構成を拡張したもので、今後のファームウェア更新で無償提供される予定だ。

また、新製品「T3 Pro」は、上位モデルの設計を継承しつつ、メディアスロットやリダンダント電源を省いた構成により、高いコストパフォーマンスを実現している。

一方、「T2 4Kシリーズ」は、従来の3モデル構成から「T2 4K Pro」の1モデルに集約され、価格も見直されたことで、より導入しやすくなったという。

上位モデル「T3 Elite Max」では、HD最大4チャンネルでの運用に対応

LDX 150

LDXシリーズの上位モデルとして、ハイスピード撮影にも対応する「LDX 150」も展示されていた。AMPPライブ制作コーナーでは、ライブ映像入力として実際に稼働していた。

LDX 150は、自社開発のグローバルシャッター付き2/3型3CMOSセンサーを搭載し、高感度・高S/N比・ワイドダイナミックレンジを実現。ネイティブHDR対応のほか、4K 3倍速、HD 6倍速/3倍速のハイスピード撮影に対応する。オプションライセンスにより、ハードウェアを追加することなくJPEG XS圧縮やIP接続にも拡張できる。AMPPライブ制作コーナーでは、このLDX 150がライブ映像入力として実際に活用されていた。

LDX 150 背面端子

また、同シリーズには今年のNABで発表された「LDX 180」というシネマティック・ライブカメラも存在する。こちらも自社開発のSuper 35mmイメージセンサーとPLレンズマウントを採用し、被写界深度の浅い映像によってライブの世界にシネマライクな画作りをもたらすことをコンセプトとしている。LDX 100シリーズと共通のルック&フィールや特長を持ち、アクセサリーも流用できるため、シリーズを混在させたプロダクションでも統一感のある運用が可能だ。

ACE-3901

従来のSDI機器とIPインフラを橋渡しするゲートウェイモジュール「ACE-3901」もモックアップ展示されていた。1枚のモジュールで32系統のSDI入力をSMPTE ST 2110へ、また32系統のSMPTE ST 2110を32系統のSDI出力へ変換可能。業界最高水準の高密度設計により、省スペース化とチャネル単価の低減が期待できる。

また、ライブプロダクションに最適な低レイテンシー性能を備え、GV Media Universeへの容易な統合にも対応。次世代のハイブリッド制作環境に向けた、柔軟な運用性が印象的だった。実機ベースのモジュールサイズやコネクターパネルも間近で確認でき、来場者が足を止めていた。

SDI 32入力をST 2110へ、ST 2110の32系統をSDIへ同時に変換できる32ch双方向ゲートウェイモジュール「ACE-3901」

ブース内プレゼンテーション

ブース内では、各製品の新機能や開発中機能に関するデモ・プレゼンテーションも定期的に行われている。スケジュールは以下の通り。

  • 10:30~ AMPP
  • 11:30~ EDIUS 11
  • 13:30~ T3
  • 14:30~ AMPP
  • 15:30~ EDIUS 11
  • 16:30~ T3

INTER BEE CREATIVE企画セッション「MXL:EBU DMFグループが規格化するメディア交換レイヤー ~ ライブ映像をベンダー間で相互運用」

会期中の11月19日(月)15:00~16:00には、展示ホール8・特別企画オープンステージ(CR-195)にてINTER BEE CREATIVEセッションも実施。スピーカーは、グラスバレー ソフトウェアアーキテクチャ バイスプレジデントのヴインセント・トラザール氏。

欧州放送連盟(EBU)が推進するソフトウェアベース制作インフラにおいて、DMFグループの中核技術として位置付けられる「MXL」をテーマに、プレゼンと質疑応答が行われる。次世代制作技術に直接触れられる機会として、注目を集めそうだ。