Inter BEE 2025の会場において、ATOMOSのCEOであるピーター・バーバー氏が、日本国内では初公開となる最新の製品群を紹介した。今回の展示では、モニターやレコーダーといった既存の主力製品の刷新にとどまらず、オーディオアクセサリーを含めた包括的な「カメラエコシステム」の構築が提示され、多くの来場者がその新機能を体験していた。
展示の目玉の一つとなったのが、ワイヤレス時代を見据えた映像伝送ソリューションである。新たに発表された7インチオンカメラモニター「Shinobi 7 RX」は、SDIとHDMIのデュアル入力を標準で搭載することに加え、Wi-Fiによるワイヤレス映像受信に対応した点が大きな特徴だ。

これと対になる映像伝送デバイス「ATOMOS TX」は、SDIおよびHDMI入力された映像をWi-Fi経由で伝送する機能を持ち、最大で約300メートル(約1,000フィート)離れた場所へのリンクを実現する。一つのトランスミッターから、Shinobi 7 RXや専用のRXボックス、あるいはiPadやAndroid端末など、最大4台のデバイスへ同時に映像を配信することが可能である。IBCで発表されたこれらのモデルは4K伝送にも対応しており、現場におけるケーブルレス化を推進する仕様となっている。
同社の主力であるレコーダー製品「Ninja」シリーズも大幅な進化を遂げた。新登場の「Ninja TX」は、同シリーズの中で最も強力なモデルと位置づけられ、最大8K RAW収録に対応するとともに、HDMIとSDIの両方のRAW出力をサポートする。収録フォーマットはProResやAvid DNxにも対応しており、記録メディアには高速かつ大容量なデータの取り扱いに適したCFexpress Type Bが採用された。さらにUSB端子を用いた外付けSSDへの収録や、カメラコントロール機能も搭載され、現場のワークフローを拡張する構成となっている。また、兄弟機としてHDMI入力専用の「Ninja TX Go」もラインナップされた。こちらは最大6K RAWまでの対応となるが、より軽量な筐体設計により、小型カメラやジンバルを用いた撮影など、機動性が求められるシーンでの運用に適している。
さらに、映像制作の周辺機器への本格参入として、「Studio Sonic」シリーズも紹介された。交換可能なプラグに対応し接続性を強化したヘッドホンや、オンカメラとブーム収録の双方で活用できるフレキシブルな仕様のワイヤレスマイクなどが展開される。モニター、レコーダー、ワイヤレス伝送、そしてオーディオ機器にいたるまで、これらを一つのエコシステムとして統合することで、撮影現場のワークフローを再構築しようとする同社の方向性が示された展示内容であった。

