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今回は、新発売の「Osmo Mobile 8」の先行レビューを行っていきたい。著者も過去のOsmo Mobileシリーズを複数台所有しているのだが、今回の進化には目まぐるしいものがあると感じた。

トラッキング精度の劇的な向上・水平に360°回転できるジンバル・ハンドジェスチャー・撮影時のスマホへの給電機能など、iPhone動画撮影を強力にサポートする機能が満載である。iPhone 16 Proとの組み合わせで行ったテストをレポートしていきたい。

驚くほどのトラッキング性能と360°パン軸回転

スマートフォンの下部に位置する多機能モジュールのレンズは、トラッキング専用である。DJI Mimoアプリを使用することなく、被写体を容易に追尾することが可能だ。実際に使用した感想としては、これまで様々な機器で瞳フォーカスやトラッキングを試してきたが、この多機能モジュールを用いたトラッキングは、「食らいついたら離さない」という言葉が相応しいほど精度が高い。これにより、被写体が画面外に出てしまうといった懸念は不要となる。

それをサポートするのが、「Osmo Mobile 8」の特長でもある360°パン軸回転だ。既存のスマートフォンジンバルでは、360°回転が不可能なためにエンドポイントで引っ掛かりが生じ、制御不能な状況に陥る場面があった。360°回転により、新しい撮影スタイルが生まれる予感もする。

トラッキングカメラなどを内蔵した「DJI OM多機能モジュール」を標準で同梱する

ハンドジェスチャーによりトラッキングと録画のオン・オフ制御が可能に

様々なハンドジェスチャーをすることでトラッキングのオン・オフや録画を開始・停止できる。場面によっては、トラッキングせずにカメラを定点で、パンせずに撮影したいというのは、どの動画クリエイターでも考えていることだ。また、数メートル離れていても、録画の開始ができるので、YouTubeやInstagramなどの制作を一人で行う人にとっても強い味方となる。

他のハンドジェスチャーとしては、構図調整できるものもあり、わざわざスマホの元に戻り画角を調整という手間が省ける分、撮れ高を上げることができる。補足としては、美肌機能・小顔機能などビューティー機能も充実している。

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01:トラッキングを有効にするには、カメラモジュールに手のひらを見せるか、トリガーを押す
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02:インジケーターが緑色に点灯する
03:動く被写体にスムーズにロックオンして追尾してくれる
トラッキングが有効か無効かにかかわらず、ピースのジェスチャーを使用して、写真撮影や録画の開始/停止のカウントダウンを開始できる

自撮り棒機能が内蔵されつつ、ローアングルも得意に

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延長ロッドを内蔵する

内蔵されている約20cmの自撮り棒を延長することで手持ちでは手が届かない画角から撮影することも可能となる。また、360°のパンができることにより、ローアングル撮影性能が格段と向上している。ペットをスマホ上でドラッグしてトラッキングを開始すれば、動物の目線の高さの映像を確実に狙うことができる。この機器が愛犬家の人にも外せない存在になるかもしれない。

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「Osmo Mobile 8」では、下部に三脚が内蔵されているのは便利だ。思い起こせば、これまではスマホジンバルとほぼ同じ大きさのケースに入るスマホジンバル用の三脚をよく持ち歩いていた。少しでも機材を軽くしたい人には嬉しい。

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コンクリートの上であれば安定してスマホを立てることができた。ただし、この三脚は若干柔らかさがあり、写真のように固い地面では良いが、芝生の上での固定には対応していなかった。「Osmo Mobile 8」の真下部分には、1/4のねじ穴もあるので、このビルドインの三脚はあくまでいざというときの選択肢として捉え、安定性を求めるのであれば、やはり小さな三脚に固定した方が無難ではある。

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サイドホイールを回すことでビデオカメラのようなスムーズなズームを行うことができる。0.5倍から15倍のズームに簡単に切り替えられ、その場での体験を阻害することなく、手のように扱えて撮影できるこのジンバルにハマりつつある感覚を覚えた。このボタンを押し込むことでマニュアルフォーカスに変更することもできる。それにより、ぼかした映像からフォーカスに合わせるといったシネマティックな表現をすることもできる。

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サイドホイールは、一回押すごとにフォーカス、ズーム、またはジョイスティックズームモードの切り替えが行える
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サイドホイールを使ってスムーズなズーム操作とマニュアルフォーカスの操作が可能
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ホイールを回してフォーカス位置を調整し、よりシネマティックな撮影が可能だ

簡単なペアリング作業で今回はDJI Mic Miniとワイヤレス接続することができた。接続成功するとこのモジュールとDJI Mic Miniが緑色に点灯した。河原でのテストだったが、風防を付ければ、問題なく音声収録をすることができた。また、暗い環境であれば、このモジュールはライトを内蔵しているので、8段階の補助光で明るさを足すこともできる。ついつい肥大化してしまう機材量を減らすには持って来いだ。

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多機能モジュールで拡張性アップ!DJI Mic 3/Mic Mini/Mic 2 などとも簡単にワイヤレス接続

この拡張モジュールでのワイヤレス音声を受信するときの注意点としては、iPhone 16 ProともUSB Cケーブルでの接続をする必要があることだ。また、その際に、「Osmo Mobile 8」からiPhoneに給電するには、ジンバル本体のMボタンをダブルクリックすることでモジュール経由からの給電が開始される。スマホでの映像制作の大敵であるバッテリー問題を解決してくれる心強い味方なのがこの多機能モジュールだ。

総評

この「Osmo Mobile 8」を購入する意味はあるのだろうか?著者はDJI Pocket 3およびDJI Osmo Action 5 Proを持ち合わせている。だが、この「Osmo Mobile 8」を購入する価値が十分にあると感じている。

VLOG機では実現していないズーム機能とアクティブトラッキングの組み合わせ、360°のパン機能など、他の機器では味わえない撮影体験を実現しており、十分住み分けができている。何よりも楽しく撮影レベルをワンランク押し上げてくれるこの機器は、これからのモバイルシューターの間で人気になりそうなアイテムである。

渡辺竜平|プロフィール

ハリウッドで映像制作を学び2013年よりセブンシーズピクチャーズとして活動。『書いて、撮って、演出する』映像作家兼スチルフォトグラファー。