InterBEE2009で見た2010年注目100アイテムを!

年の瀬である。今年の映像業界を振り返ってみたい。今年のInterBEEはリーマンショックの影響からか放送局が軒並み減収減益。よって、出展社数こそ昨年を上回る数になったものの会場全体は縮小方向であった。大手を含め出展コマをダウンサイジングしての展示会になったものの新製品や参考出品など例年に増して多くの出品があったようだ。とりあえず制作に必要な機材は一通りそろい、周辺機器や通常の撮影以外で差別化を図る時期に来ているのかもしれない。放送の世界ではハイビジョンでの通常制作は当たり前になり、もっと特殊な撮影機材や周辺機器を使い番組制作の幅を広げていこうということのようである。

さて、すでにPRONEWSでは、動画取材ブースレポートなどで、主だったメーカーの機材は、幾度となく紹介済みだが、ここでは地味ながら有用と思われる機材を中心に独断でジャンル別に数回に分け紹介してみようと思う。「カメラ」、「三脚・カメラサポート」、「レコーダー」、「ノンリニア・オーサリングターンキーシステム」、「ストレージ外部記憶装置」、「オーディオ機器」、「照明機器」、「3D対応機器関連」、「DSLR デジタル一眼レフカメラ関連」、「伝送装置関連」、「エンコーダー・デコーダー・トランスコーダー装置」、「測定器」、「電源系」、「その他設備機器関連」、「収納ケース・ラック」等カテゴリーは、枚挙するが残りモノには福がある!ということで取りこぼした宝の逸材を紹介しよう。今回は、「カメラ」、「三脚・カメラサポート」、「レコーダー」編である。年末年始にかけて、2009年を振り返りながら来年に思いを馳せていただければ幸いである。

伏兵ここにあり!まだまだ紹介したいカメラたち「カメラ」編

まずはカメラである。幾度となく紹介しているカメラ群ではあるがまだまだ紹介しきれないモノが多い。カメラというと小型ビデオカメラが話題になることが多いが、放送で使われるカメラはもちろんそれだけではない。特にハイビジョン関係だけでもスタジオカメラや中継用カメラなど、そのラインナップは様々であり、ハイスピードカメラなど特殊用途の製品も充実してきた。RED ONEに代表されるようなハイビジョン以上の解像度も有するカメラや赤外線サーモグラフィーカメラなどレパートリーは広い。さあ、早速見ていこう!


アストロデザイン

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アストロデザインが独自に開発した4k×2k 解像度のビデオカメラAH-4410。モックアップかと思ったが、このカメラで撮影した映像を同社ブースの2k4kディスプレーで公開しており、かなりの完成度のようである。型番まで付いているので、仕様をたずねてみたが未公開ということであった。見たところ、レンズはニコンの一眼レフカメラ用のものが使われているので、マウントはニコンマウント、イメージャーは35mmフルサイズかAPSサイズではないかと思われる。カメラのサイズ的には3坂式もありうるが、そうなるとスチールカメラ用のレンズを使うために光学的な補正が必要になることから単板式ではないだろうか。

同社はシンセビジョンというハイビジョン用クロマキー装置を20年近く前にNHKと共同開発していることから、NHKが開発した8kのカメラに搭載した撮像素子の技術をもとに開発した素子を採用している可能性が高いように思う。ちなみに4kのカメラは、NHK技研展などで、パナソニックやビクターが出展しているほか、オリンパスはRED ONE以前からOctavisionという4kのカメラを開発しており、制作用のカメラに最適なイメージャーが調達できれば、4kカメラの開発は技術的にはそれほどハードルは高くないのかもしれない。あとは、記録系や後処理の問題だが、記録系はすでに同社がレコーダーを開発しており、後処理関係もRED ONEの影響もあり、現在ではそれほど困難ではない。

アストロデザインは3Dカメラも取り扱っていることから今後この分野への参入も本格化する可能性があると思う。おもしろいのは彼らがこれをビデオカメラと銘打っていることである。

http://www.astrodesign.co.jp/

キヤノン

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キヤノンがいままで発売したビデオカメラは記録媒体にテープを採用していたが、テープを使わないファイルベースビデオカメラが出展され注目を集めていた。まだモックアップの状態ではあったが、1/3光学系を採用し、メモリー記録可能なビデオカメラとのことである。XH G1SやXH A1Sに近いフォルムだが、細部は微妙に異なり、メモリースロットが2基装備されているほか、入出力はコネクターの形と数から推察するとHDMIとHD-SDI、ゲンロック、TC、アナログコンポーネント、IEEE1394あたりではないだろうか。レンズは、XH G1SやXH A1Sが20倍であの大きさなので、それ以上のたとえば26倍あたりを狙っていそうだ。記録フォーマットも不明だが、HDVではなくEOSと同様なMPEG-4 AVCになると思う。年明けのCESにもこのようなモックで出展するのか、撮影できる状態のものがでるのか興味のあるところだ。

http://cweb.canon.jp/

エルグベンチャー

NECAvio赤外線サーモグラフィーカメラ。赤外線は、-273℃以上の全ての物から放射されているそうで、対象物から自然に出ている赤外線放射エネルギーを検出し、映像化することで肉眼では見えない熱を見ることを可能とするカメラ。インフルエンザの流行を阻止するために、熱のある人物を海外からの帰国者から空港で特定したり、科学番組などでよく使われる

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TVS-500EXは、非冷却二次元赤外線センサーを採用。鮮明でハイクオリティな熱画像を表示可能な赤外線サーモグラフィーカメラ。記録はCFカードに静止画像記録されるが、NTSCの映像出力をもっている

Thermo Shot F30は、デジカメの様に使いやすいデザインで、従来の計測器のイメージを一新。可視画像と熱画像の同時保存機能をもつ。記録はSDカードにJPEGで保存される

http://www.erg-ventures.co.jp/

日立国際電気

パナソニックのP2HDを採用したカメラを共同開発し、SK-HD1000という型番で出展。

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SK-HD1000は、カメラ部とアダブター部を分離できる構造とし、P2記録、光ケーブル、トライアックス、ワイヤレスといったアダプターを組み合わせることにより、様々な用途に対応できるようにしている。また、写真のようなクレードルSA-1000に装着することで、スタジオ仕様として運用できる。周辺機器として、CCU(CU-HD1000)やリモートコントロールパネルRU-3400、セットアップユニットSU-1000などが用意されている

Z-HD5000は、先のNABで日立国際電気USが発表したカメラで、型番からすると、SKが日立製作所由来の、Zが日立電子由来のカメラのようである。Z-HD5000は、国内で言うところの業務用という位置付だが、海外ではローコストバージョンということになっているようだ。SK-HD1000と同様に、CCU(CU-HD1000)やリモートコントロールパネルRU-1000といった周辺機器が用意されている

http://www.hitachi-kokusai.co.jp/

ナックイメージテクノロジー

フィルムの時代からハイスピード撮影のできるカメラを開発してきた同社は、MEMRECAMシリーズとして、スタンドアローンタイプのMEMRECAM Hi-MotionやMEMRECAM Xtremeなどを出展。

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MEMRECAM Hi-Motionは、最大600コマ/秒までの撮影が可能で、本体内のメモリーに22.5秒までの映像を記録できる。バッテリー駆動が可能なほか、リターンやタリー、SDI出力を装備、CCUなども用意されており、通常のカメラと同様に扱うことが可能

MEMRECAM Xtremeは、100~10000コマ/秒の撮影が可能なほか、1/200,000秒までのシャッターを搭載しており、高速で動く被写体を捉えることができる。記録時間は1000コマ/秒時で約13秒となっており、付属のコントローラーで0~60コマ/秒までの無段階再生などを行うことが可能。出力はHD-SDI

http://www.nacinc.jp/

NEC

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既発売のNC-H1000を元に制作用カメラとして開発されたHDTV高感度ポータブルカメラNC-H1000P。写真の超小型FPU仕様と光伝送仕様の2タイプがある。高感度CCDと近赤外波長帯透過フィルターの組合せ、およびカメラ設定の最適化で、夜間の更なる高感度撮影が可能となった。220万画素(1080フルHD)CCDを採用し、HDTV本来の映像を表現しつつ高感度撮影も可能とした。

http://www.nec.co.jp/bv/hoso/

パナソニック

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AG-HPX305は、2009年2月に発表されたカメラだが、撮像素子にCMOSを採用していることから、ストロボのように1フレーム撮像以内の閃光が撮影中にあった場合、フレーム内の画像の明るさが上下で分割された画像が生じることがある。こうしたフラッシュバンドと呼ばれる現象を解消するため、7月出荷分から高精度フラッシュバンド検出および補正ソフトウェアが搭載された(ソフトウェアのバージョンアップでそれ以前のカメラも対応可能)。

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また、Varicam機能も搭載しており、720モード時に20段階のバリアブル・フレームレート収録ができるほか、2種類のシネライクガンマを含め、7つのガンマモードも持っている。ビューファインダーとLCDモニターでアスペクト比16:9の採用やビューファインダーのカラー化、LCDモニター上に撮影中の映像の波形ベクトルスコープを簡易表示する機能やレンズ自体で補正しきれないわずかな色収差などが主な原因で発生するレジストレーションエラーをカメラレコーダー本体にて自動的に補正し周辺画像の色にじみを最小限に抑えるCAC(Chromatic Aberration Compensation)機能などを搭載している。記録フォーマットは、AVC-Intra 50モード、AVC-Intra100モードのほか、DVCPRO HDコーデック収録も可能。

http://panasonic.biz/sav/
http://panasonic.biz/broad/bc/

ソニー

ソニーは、AVCHDフォーマットを採用したNXCAMのほか、PMW-350やPMW-EX1の改良機PMW-EX1Rなどが話題となっているが、HDCAM-SRカムコーダーSRW-9000やデジタルトライアックスカメラHXC-100/HSC-300、マルチフォーマットスタジオカメラHDC-1000R、マルチパーパスカメラHDC-P1といったカメラも新製品として出展している。業務用から放送用途まで隙間なくラインナップされている。

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参考出展されたNXCAM。撮像素子は1/3インチExmor、20倍ズームを搭載。記録媒体は、メモリースティックPROデュオか新たに開発されたフラッシュメモリーユニットを使用。2つのメモリーに同時に収録することが可能

マルチフォーマットスタジオカメラHDC-1000R。新開発の広帯域プログレッシブCCDとDSPを搭載することで、IT型CCD搭載モデルとして従来比2dBの向上を達成、標準SN比56 dBを実現している。また、独自の信号処理技術によるノイズサプレッション機能により最大64dBまでの設定が可能

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2010年2月1日発売予定のマルチパーパスカメラHDC-P1。14ビットADコンバーターと独自開発のデジタル信号処理LSIを搭載することにより、HDシステムカメラと同等の映像が得られるほか、コントロールシステムは、HDC-1000Rシリーズと同一のシステムを採用

デジタルトライアックスカメラHXC-100。新開発のHDデジタルトライアックス伝送技術により、既設トライアックスケーブルをそのまま流用可能なほか、HXCU-100とHKCU-FP1を組み合わせることで、CCU本体からカメラコントロールすることができる

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デジタルトライアックスカメラHSC-300。大型レンズアダプターHDLA-1500シリーズにより大型レンズを着用したオペレーションが可能なほか、独自開発デジタルトライアックス伝送技術により、既存のトライアックスケーブルを用いてHD信号の伝送を実現

440Mbpsまたは880Mbpsの高い映像転送レートに対応することで、いままで以上の高画質制作が可能となったHDCAM-SRカムコーダーSRW-9000。オプションを追加することで、撮影コマ数を1~60コマまで選択することができるほか、S-Logでのワイドダイナミックレンジ記録やデュアルリンク出力などに対応可能

http://www.sony.jp/professional/

西華産業

アジア地区でのRED DigitalCinema社製4KデジタルシネマカメラRED ONEカメラの販売、アフターサービスを行なうことを発表した西華産業だが、RED ONE以外にも同社が映像業界へ進出したきっかけとなったハイスピードカメラKINORやP+S TECHNIK社WeissCam、PsiTech社スーパースローモーションカメラなども扱っている。

http://www.seika-di.com/

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P+S TECHNIK社WeissCam HS-2。デジタルシネマカメラにも対応できる高解像度・高性能スローモーションカメラで、2kで1500fps、HDで2000fpsまで対応可能。撮影中に任意のタイミングで撮影速度を変えることができるほか、オプションで光学式ビューファインダーを用意している

PsiTech社スーパースローモーションカメラSIROCCO POINT SIX。最大300コマ/秒の撮影ができるほか、約10分間の映像を記録できる。また、記録しながら同時に再生する機能をもっている。出力はHD-SDIで720p、720i、1080iに対応している

ノビテック

各種計測機器や放送機器を扱う同社はハイスピードカメラPhantomシリーズを大きく取り上げていた。Phantomシリーズはハイスピードカメラを中心に開発しているVision Research社の製品で、そのラインナップはデジカメ的に扱えるものから2kまで様々な製品がある。

http://www.nobby-tech.co.jp/

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Vision Research社Phantom HD GOLD。最大2048×2048ピクセルの解像度を持つハイスピードカメラ。1280×720のHD画質で1576fpsの撮影が可能。出力はコンポジットおよびHD-SDIに対応

Vision Research社PhantomV640。2560×1600ピクセルで1400コマ/秒、最高撮影速度30万コマ/秒を実現した、超高解像度モデル。 新型高感度センサーの採用、高速電子シャッター、大容量メモリー、HD-SDI映像出力などの機能をもつ



稲田出のトレンド100選 その2

WRITER PROFILE

稲田出

稲田出

映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチルカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。