2005年のSHOWESTで、ジェームズキャメロンやスティーブンスピルバーグ、ジョージルーカス、ロバートゼメキスなど名だたる映画監督やプロデューサーが、3D映画制作への支援を表明。3D作品の興行成績も好調なことから、映画産業から現在の3D映像制作がはじまったといえる。

当然、大きな収益の一つとなっているDVDなどへも3D化は波及し、家庭用の視聴へもつながっている。3D映像は今に始まったものではなく、これまでにも何度かブームになり、すたれてしまっている経緯があるが、今回はちょっと事情が異なるように思う。というのも赤青めがねのアナグラフ式や偏光眼鏡式のような、チラツキがあったり、視聴位置によって効果が異なったりする従来方式ではなく、REAL DやDolby 3Dといった、新たなテクノロジーによって実現していることや制作環境がデジタル化することで、フィルムに比べランニングコストが抑えられるといった要素があるだろう。また、シネマコンプレックスを利用した、スポーツ中継やコンサートのライブ中継など、従来の3Dとは違った展開の方法もあり、今後が期待できるといえよう。この分野では、ソニーが非常に意欲的で、フットボールの試合やサッカーの試合などを衛星でライブ中継するといったトライアルも実地している。3Dは今までのように一時期のギミック的な客寄せで終わってしまうのか、今度こそ定着するのかは、ひとえに魅力的なコンテンツを継続的に供給できるのか、シネコンなどへの導入やそのコスト、更には一般家庭への普及が鍵を握っているといえそうだ。

ソニー

ソニーは、展示会場のほか、国際会議場会議室で3D制作ワークフローを中心とした出展を行った。展示会場では、正面のイベントスペースでマルチパーパスカメラHDC-P1を2台専用のリグに搭載した3D撮影システムや3D対応スイッチャーMVS-8000G、参考出展の280型2D/3D LEDディスプレーによるライブ上映が行われた。ソニーは、IFA2009の一般公開に先立って開催した9月2日の記者会見において、2010年に家庭へ3Dコンテンツを届ける計画を発表しているほか、10月に開催されたCEATEC JAPAN 2009でもSony brings 3D home in 2010と題し、3D関連の展示を行っている。さらに、12月17日にはソニーの3Dに関する取り組みをエレクトロニクス、コンテンツの両面からご紹介するWebサイトを開設したり、ソニープロテクノサポート社にデジタルシネマ事業推進部を新設し、2009年10 月より、国内映画館のデジタル化を包括的に支援するデジタルシネマソリューションサービスを開始している。

国際会議場会議室では、3Dカメラシステムや、L/Rの2系統のストリーム記録と再生を可能にするHDCAM-SRデジタルレコーダーSRW-5800とAutodesk、Avid、Quantelのノンリニア編集機システムを連携させ、撮影からスイッチング、編集、送出までの3D高付加価値映像制作ワークフローを提案したほか、デジタルシネマプロジェクターとRealD社の3Dデジタルシネマシステムを用いた3Dコンテンツ上映も行った。ソニーは、2010年以降本格的に3D市場に参入しようという戦略のようだ。

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展示会場正面のイベントスペースで行われた3Dデモンストレーションを視聴する来場者。偏光メガネによる3D視聴方式で、マルチフォーマットプロダクションスイッチャーMVS-8000Gによるライブスイッチングによるデモが行われた。ディスプレーは280型の2D/3D LEDディスプレーで、参考出展のもの。

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マルチパーパスカメラHDC-P1を2台専用のリグに搭載した3D撮影システム。リグはソニーPCL製だった。

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ブース正面で行われた3Dデモンストレーションで使われていたマルチフォーマットプロダクションスイッチャーMVS-8000G

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国際会議場会議室での3D制作ワークフローのデモ。マルチパーパスカメラHDC-P1をソニーPCL製リグに2台取り付けた3Dカメラシステム。中継にも適した3Dカメラシステム。

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立体視の確認、および補正を可能にするステレオイメージプロセッサー。2台のカメラ出力を入力。左右の映像の差分やベクトルスコープなどを確認しながら、視差調整をすることができる。

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3D制作用プロセッサーは、3Dカメラの光軸ズレやリグの調整ズレを電気的に補正できるもので、3Dカメラから出力されるL/Rの信号を補正し、3Dカメラの設置時間の短縮を実現している。

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MVS-8000Gは、3Dユーティリティーソフトを追加することで、2本のHD信号を同時に処理可能なほか、DMEプロセッサーやプラグインエディターを組み合わせ、3DによるDME効果の付加やリニア編集も行うことができる。

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HDCAM-SRノンリニア制作として、Autodesk、Avid、Quantelのシステムによる3D、Tele-File、2倍速インジェスト、S-Log、RGBの各制作ワークフローを披露した。

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SXRDデジタルシネマプロジェクターSRX-R320による3D映像体験シアター。デジタルシネマプロジェクターとRealD社の3Dデジタルシネマシステムを用いた3Dコンテンツ上映システムで、1台で3D上映を行うこともできる。

http://www.sony.jp/professional/

アストロデザイン

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同社の3Dカメラで撮影した映像を上映した3D映像liveの実演デモ。

http://www.astrodesign.co.jp

パナソニック

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NAB2009参考出展された3Dカメラレコーダーや3Dモバイルエディター、3Dポータブルレコーダーなどを出展。3Dカメラレコーダーは1台で3D映像を撮影でき、とかく大掛かりになりがちな撮影システムを手軽にしている。記録方式は、現在策定中のAVC Intraの上位規格であるAVC Ultraが採用される予定。

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http://panasonic.biz/sav/

西華産業

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ハーフミラー型のステレオリグP+S Technik社Universal Mirror Rig。HDVから4Kまで様々なカメラに対応することができる。

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ICONIX Video社2K超小型デジタルシネマカメラ Studio 2Kによる3D撮影システム。カメラ部分が小型なので、大掛かりなリグを使用しなくても手軽に3D撮影を行うことができる。

http://www.seika-di.com

FAシステム

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3D-Clini Camシステム。医療分野での利用を中心に考えられており、会場でも手術の様子を収録した画像をデモしていた。1つのボディの中に2台のカメラを組み込み、同期のとれたHD-SDIの出力が取り出せる。写真は民生機のカメラ2台を1つの筐体に組み込んだ撮影システム。

http://www.fase.co.jp/

池上通信機

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HDL-45Aを2台使用した3Dカメラシステムを参考出展。カメラが小型かつ集中コントロールができるため、大掛かりになりがちなリグを使用しなくても3D撮影ができる

http://www.ikegami.co.jp

ナックイメージテクノロジー

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ソニーPMW-EX1を2台搭載した3Dカメラシステム。ハーフミラー方式のリグで、R chのカメラを上下反転させずに取り付けられる機構となっており、2台のカメラから出力される画像時間差を低減できるという特徴がある。

http://www.nacinc.jp/

アスク

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Redrover 3D撮影雲台SDC-M300A。カメラのセッティングがしやすいように調節機構が工夫されている。KONAやMac OS X Snow Leopardのパワーをフルに活用したQTAKE HDと組み合わせにより、効率的な3D映像の撮影とキャプチャーが可能。

http://www.redrover.jp/
http://www.ask-dcc.jp/

北海道日興通信

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三次元映像通信・放送のための中核的要素技術の展示。デプスカメラ合成裸眼立体表示装置で、MESA社のデプスカメラSR-4000とポイントグレーリサーチ社のIEEE1394カメラFlea2の画像情報をリアルタイムで合成し、フィリップス社の多眼立体ディスプレーに表示するデモが行われた。

http://w3.hnikko.co.jp/



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