トレンド100選三回目である。「カメラ」、「三脚・カメラサポート」、お届けしてきて、今回は、第一部最終章「ビデオレコーダー」である。後僅かで2009年も終了するが、2009年を振り返りながら来年に思いを馳せていただければ幸いである。
ビデオレコーダー
ビデオの記録がファイル化されることにより、レコーダーはテープからハードディスクへ、さらに半導体メモリーに記録する時代になってきた。まだ、コストと容量の関係からハードディスクを採用したものも多いが、来年辺りから逆転しそうな気配である。特に収録に使用する小型レコーダーは、耐震性や消費電力、小型軽量などを要求されるため、圧縮系のフォーマットでは、メモリーカードに記録する方向に向かっている。
アスク
PRONEWSAWARDでもノンリニア部門でシルバー賞のKiPro。AJA KiProは、ポータブルではあるが、小型ビデオカメラと組み合わせて使うにはちょっと大きめ。ただ、HD-SDIやHDMIなど様々な入力と出力に対応しており、デッキとして使用する事もできる。現状では、コントロール系に未対応の部分があるが、対応するようになれば、9ピンコントロールなどが可能になる。記録媒体はハードディスクパックの他、SSDパックやメモリーカードも使用することができる。
国内の代理店であるアスクでは、KiProを中心とした各種セミナーを開催しており、FCPでの編集ワークフローを紹介している。記録フォーマットがProRES422なので、編集ソリューションが限定されてしまうが、動作検証などが単純化できるため、安心して使用できると思う。いままで、VTRを製造していたメーカー製の製品で同様のタイプのものはあるが、サードパーティ製でこのようなデッキタイプは初めてで、今後の普及がどのようになってゆくのか興味深い。
芙蓉ビデオエイジェンシー(FVA)
芙蓉ビデオエイジェンシーH.264/AVCレコーダーHDR1000。制作用のレコーダーではなく、イベントやIP伝送時のレコーダー/プレーヤーとして開発されているようだ。記録媒体はiVDR規格のカートリッジ式のハードディスクを採用しているが、iVDRにはSSDタイプのパックもあり、それにも対応可能である。1920×1080の映像を最大20Mbpsで記録可能。120MBのディスクパックで約11時間の収録ができる。記録しながら再生できるほか、オプションでRS-232CやRS-422コントロールが可能。
アストロデザイン
RGB 4:4:4 Dual Link HD-SDI対応の非圧縮ハードディスクレコーダーHR-7401。ハードディスクは、交換可能でRGB 4:4:4 Dual Link時約30分、Single Link(YPbPr4:2:2)では、約60分の記録ができる。DC12Vでの運用もできるので、撮影時の収録レコーダーとしても使用出来そうだが、すでにRED ONEのようなカメラが普及している現状では、かなり特殊な用途に限られそうだ。
www.astrodesign.co.jp/アミュレット
CitiDISK HDVは、バッテリーを内蔵しながらも小型軽量なレコーダーとして特異な存在だったが、ハードディスクの大容量化にともない、内蔵バッテリーの容量が不足する傾向があり、内蔵バッテリーだけで、ハードディスクの容量(160GB)いっぱい記録できなくなってきた。そこで、外部バッテリーを用意したのだが、これを使うと特徴の一つである小型軽量という利点が失われてしまうことになる。また、ディスクのみ交換したいという要望もあり、iVDR規格のディスクパックを利用したモデルCitiDISK VC102が開発された。iVDRは、民生機器メーカーにより策定されたものだが(iVDRコンソーシアム)、業務用としては中国のメーカーHDAV社がこのディスクパックを利用したカメラレコーダーとデッキを開発している。ただし、メディアとしての互換性はあるが、フォーマットの互換性はないようだ。
カノープス
据え置き型VTRの置換えのほか、様々な用途に使用可能なデジタルディスクレコーダーT2は、コンポジット、HD/SD-SDI、DVI-I(DVI-DおよびYPbPr)といった入出力をもち、Canopus HQ、MPEG-2、WMV、QuickTimeといったフォーマットをCanopus HQに変換し記録および出力するといった機能をもつ。編集用中間フォーマットをレコーダーの記録フォーマットに採用するという発想はAJA KiProと同様だが、KiProが収録用ポータブル機、カノープスのT2はデッキタイプを志向しているという点が異なる。なお、T2、T2 RAID、T2 SSDの3モデルがラインナップされており、T2以外は2.5インチのメディアベイを装備しており、ハードディスクやSSDが装着可能となっている。
http://www.thomson-canopus.jp/
テクノハウス
ConvergentDesignのHDポータブルフィールドレコーダーFlash XDRは、ソニーのMPEG2 CODEC(MP@HL: XDCAM HD)を採用したレコーダーだが、記録媒体として汎用性のあるコンパクトフラッシュメモリー(CFカード)に記録するタイプのレコーダーである。本体に4基のCFカードスロットを装備しており、32GBのCFカードを4枚で、1080i/60フォーマット、100Mbpsのビットレート(422P@HL)で約142分間の連続録画が可能。記録フォーマットは、XDCAM HDのほかに422P@HL: 100,160Mbps VBR (1920×1080i/p, 1280×720p, 4:2:2, I-Frame Only)やHDV(MP@H-14: 25Mbps CBR 、MP@HL: 19.7Mbps CBR)などにも対応している。なお、入出力はHD-SDI。
nanoFLASHは、Flash XDRと同様CFカードを記録媒体として採用しているが、本体が小型ということもあり、スロットは2基となっている。記録フォーマットは、マスタークオリティーとして、I-Frame Only(160Mbps 4:2:2 I-Frame Full-Raster; 1.24GB/分)、Long GOP(100Mbps 4:2:2 Long-GOP Full-Raster; 0.8GB/分)が、ブロードキャストクオリティーとして、50Mbps 4:2:2 Long-GOP Full-Raster; 0.4GB/分、プロキシークオリティー19Mbps 4:2:0 Long-GOP 1440×1080; 0.15GB/分となっている。入出力はFlash XDRと同様HD-SDIが装備されている。
パナソニック
メモリーカードポータブルレコーダーAG-HMR10は、ソニーのまめカムとよく比較されるが、カメラ部はあくまでもレコーダーのオプションで、ソニーのまめカムのようにケーブル固定ではない。HD-SDI入出力を装備しているので、ほとんどのHDカメラに接続することができるところが大きな特徴だと思う。記録フォーマットは、AVCHD方式最大ビットレートの24 Mbps(平均21 Mbps)に対応しており、1920×1080や1280×720で記録することができる。オプションのカメラAG-HCK10G接続時には1080/60i、1080/50i以外にも1080/30p、1080/25p、1080/24pなどの収録が可能。カメラ部はAG-HMC45と同等のようだが、仕込みカメラとして使うには少々大きい。レンズ部をCマウントにした小型なモデルの開発に期待したいところだ。
レコーダー部は、記録開始の操作をした時点より約3秒前からの映像と音声を常時記録するプリRECや映像データに作成日時や作成者、撮影場所、タイトルなどを付加できるメタデータ記録、波形モニターやベクトルスコープ簡易機能など充実している。
計測技術研究所
UDR-D100の4Kバージョン(参考出展)で、4k×2k(3840×2160)での再生デモを行っていた。既存のUDR-D100との差別化か海外の展示会で目立ようにかは分からないが金色の筐体かかなりの存在感がある。もちろんこのカラーリングで商品化するつもりはないそうだ。3GのHD-SDIを2系統装備しており、4kのカメラとはデュアルリンクで接続される。なお、UDR-D100と同様に記録媒体として、HDDを使用したディスクパックとSSDを使用したフラッシュパックの2種類をARRIFLEXD-21、パナソニック3700、ソニーF23,F35の各種カメラに対応できるようだ。
新輝
Codex Portableは、JPEG2000を採用したデジタルディスクレコーダーで、約3:1~8:1で圧縮率を設定できる。入力は、HD-SDIデュアルリンク2系統同時入力ができ、3D収録が可能なほか、4:2:2モードでは4台までの同時収録ができる。なお、ファイル出力はDPX&MP4へダイレクト出力が可能なほか、CodexTransferまたはLabを使用することでDPX、MXF、DNxHD、AVI、QuickTims、JPEG、BMP、BWFなど複数フォーマットに対応できる。メディアはリムーバブルで、ハードディスクタイプのほかSSDタイプも用意されている。
報映産業
小型デジタルビデオレコーダーのメーカーとしては老舗といえるFocus社のFS-5。CitiDISKと同様、カメラとはIEEE1394と接続するタイプで、SDIやコンポーネントなどのビデオ入出力には対応していない。その分小型軽量というメリットがあるものの、HDV 1080iで最大7.5時間の長時間記録に専用バッテリーでは対応しきれないというCitiDISKと同様のジレンマがある。とはいっても標準バッテリーで3時間の撮影が可能なので、充分ともいえる。操作表示LCDはカラーで見やすく、情報や操作ボタンなども整理されているので扱い易いと思う。記録フォーマットは、.m2t HDV (720p 24/25/30/50/60, 1080i 50/60)、MXF HDV (720p 30, 1080i 50/60)、QuickTime (720p 30, 1080i 50/60)で、内蔵の1.8インチ100GBに記録される。
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