進むファイルベース化の現状を会場で見てみると…
主にAndroidやiOSなどに対応した機能強化が行われたAdobe CS5.5。Illustratorなどはバージョンアップされず、アプリケーションの足並みがそろっていない
会場では昨年まではかろうじてVTRの姿を見ることができたが、今年は皆無であった。それだけ、ファイルベース化が進み半導体メモリーやハードディスク、光ディスクへ記録することが当たり前になったといえる。ビデオカメラはもちろん後処理もファイルベースで行うなど、ワークフロー全体が様変わりしている。そこにはコーデックという新たな問題があるものの、すでに編集システムも様々なコーデックへの対応のほか、非圧縮や4k、3Dまでも守備範囲に収めつつある。
EDIUSはカノープス時代にキャプチャーボードのソフトとして開発。その後編集ソフトとして独立し、現在に至っている。当時ハードとソフトを分離したのは現在のようなファイルベース時代を見越した戦略ではなかったと思うが、ある意味正解だったといえる
カノープスやAdobe、Autodisk、Quantel、Avidといったノンリニア編集の老舗はAVCHDや2k4k、さらには3Dへとその対応の幅を広げ、プラットホームもWindowsやMacといった一般的なマシーンでも稼動するようになってきた。
アナログにしろデジタルにしろVTRの時代は、編集システムに取り込むためのインターフェースが不可欠であったが、ファイルベースになり、これらのハードが必ずしも必要なくなり、ハイエンドの編集ソリューションを提供してきたAutodeskやQuantel、Avidなども編集ソフトを提供するベンダーとなりつつある。こうした状況の中、効率的に作業を行うためのシステムや環境をどのように構築できるのか、限られたコストの中で最大限のパフォーマンスを求めて各社がしのぎを削っているといった状況だ。
AJA Ki Pro。Miniが発売になってからも生産が追いつかないほど売れているという
一方、既存のカメラの延命を図るためか、ファイルベースの弱点として神話のように語られている記録データーの消失の不安からか、Ki Proのような外付けのレコーダーが売れているという。もっともKi ProはProResという編集コーデックで記録できることから(RED対応の近い将来出るらしい)、編集など後処理の作業の効率も考えてのことかもしれない。
いずれにせよファイルベースでのワークフローは撮影から編集まで一貫して行わなければ意味がなく、まだまだこれからも様々な機材が開発されていくことだけは間違いない。今年のNABは本格的なファイルベース時代の到来を決定付けたといえそうである。
Autodeskは今回のNABを期に出荷されたAutodesk Flame Premium 2012とAutodesk Smoke For Mac OS X 2012の新機能のデモが行われた
QuantelはEnterprise sQによって強化されたメディアアセットマネジメントシステムをQTubeとともに紹介