txt:石川幸宏 構成:編集部

パナソニック

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欧州で実機初公開となったAG-DVX200はブースでも人気集中

予定よりも前倒しで出荷が始まったAG-DVX200の実機展示およびハンズオンを中心に展開。2002年の初代DVXのAG-DVX100は、24p収録を可能にしたことで誰でも映画が撮れる“DVシネマ黎明期”を牽引したが、今回のAG-DVX200は、スタンダード4K撮影時代におけるクリエーティブな撮影を睨んだ仕様が際立つ。特に固定レンズによるカメラ内4K収録をメリットとした、汎用的な4K業務用カメラとしての期待が大きい。

シネマカメラ全盛となった昨今において、さらに4K撮影という点では、ピントのシビアさなど撮影者のスキルに大きく依存する部分も大きく、特にレンズ交換式カメラでは、過度に使用頻度が増したり、経年変化によってフランジバックの微妙なズレが生じ、4K解像度には極めて不利になることも多い。固定レンズによるAG-DVX200はそうしたリスクを軽減し、固定レンズタイプの従来機のビデオカメラの手軽さと、4K収録→HD納品の今のニーズに応えるカメラとして期待を集めているようだ。

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サイズ感も日本人には少し大きく感じるが欧米人にはちょうどいいサイズ?!

また一般ユーザー層や機材レンタル会社、IBC開催地の欧州での反応を聞いてみても、ドキュメンタリーカメラとしての可能性、機動性というところに期待が集まっており、特にイベントやライブ収録など複数台のカメラが必要な現場では、カメラオペレーションも容易で、しかも他のシネマカメラよりも価格的にもリーズナブルなので、複数台のレンタルにも需要がありそうだという。

NABでの発表後、「パナソニックがこのクリムゾンレッドの筐体カラーリングに決めた経緯は?」「本発売では色を変えてくるのでは?」といった質問がやはり相次いだようだが、このデザインとカラーリングはそのまま今秋出荷された。同社の新たな意気込みも感じる今後のDVX200の躍進に注目だ。会場ではIBCに向けて熊本・阿蘇で撮影・制作されたV-Log収録の初のデモ映像「A Day of Life」も上映された。

A Day of Life

A Day of Life:Behind the Scene

VARICAM 35は、ファームウエアv4.5を発表。CodexのV-RAWレコーダーへの正式対応や、アナモフィックのサポート、ProRes4444のサポート、新たなプリREC機能がバージョンアップされ、また20mのエクステンションケーブル(AC-VCBL20)の発表もあった。VARICAM専用の撮影コーナーではハンズオンの他、クロアチアで撮影されたV-RAW収録の新しいデモ映像も上映されていた。

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CodexのV-RAWレコーダーで撮影された、V-RAW撮影のデモ映像。制作はパナソニック映像で、クロアチアの世界遺産プリトヴィッツェで撮影された

またパナソニックはこのIBCで、グラスバレー社とIP分野での共同開発に関する業務提携を発表している。11日のプレスカンファレンスでは、グラスバレー社のチーフテクノロジーオフィサーであるCHUCK MEYER氏も登壇し、今後はともに提唱する放送のIP化へ向けて、同社が提唱する“VIDEO OVER IP WORLD”を推進していく。

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グラスバレー社とIP分野での技術開発アライアンスを発表した、パナソニックBU長の宮城邦彦氏(写真左)とGrass ValleyのCHUCK MEYER氏(写真右)

グラスバレー

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10月末にリリース予定のEDIUS Pro v8.1のデモンストレーション

EDIUSの次期バージョンのデモを展示。今回は10月末にもリリース予定のv8.1のデモが中心だが、今回はIBC2015用にさらにその次に向けた特別バージョンを参考展示した。

新機能としてWindows 10への正式対応、そして、Apple ProRes、Avid DNxHD、DNxHRの再生に関する最適化を行い、従来比で2倍程度の処理速度になっており、他社コーデックでも簡易的にリアルタイム編集できる処理環境を提供。またサードパーティのプラグインの共通規格である“Open Effects Bridge”が追加対応となり、SAPPHIREやBorisなどのエフェクトプラグインをEDIUS内で使用できる。

さらに新たに現在作業しているプロジェクトをテンプレートとして記録、その後EDIUSを起動した際にプロジェクトに再利用できる“プロジェクトテンプレート機能”が追加された。以前のように別名で保存するなどの面倒さを解消した。また技術プレビューとして、ネイティブでSony RAWファイルを取込み編集ができるデモが行われていた。

さらにこれに関連して解像度を下げて編集を行う“ドラフトプレビュー機能”のデモも行われていた。これらはRAWファイル編集の他、4Kそして8K編集のための機能で、EDIUS次期バージョンに搭載される見込みだ。これまでほとんどのファイルはフルレゾリューションでの編集を実現して来たEDIUSだが、これまでRED RAWファイルにしか対応していなかったドラフトプレビューが次期バージョンからは他のほぼ全てのファイルも対応することで、非力なマシンでも4K編集が出来るようになるなど、使用範囲が大きく広がりそうだ。

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RAWファイルや4K、8Kなどの高解像度=大容量ファイルをネイティブで扱えるドラフトプレビュー機能は、これからの4K、8K時代の必須機能。画像はSony RAWファイルを実際に処理するデモの様子

またグラスバレーも今回はHDRソリューションのデモを展示。同社のスタジオカメラ、LDX-86は通常でも10ストップのダイナミックレンジがあるが、HDR用のソフトウェアを搭載することで、一気に15stopまで拡張するという。これを同社では「XDR(eXtreme Dinamic Range)」と称して展示した。

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グラスバレーのスタジオカメラ「LDX 86」に装填されたHDRならぬ“XDR”のハイダイナミックレンジのデモ。下のモニターがHDR画像をライブで映し出しているドルビーのモニター

このXDR用のソフトウェアはオプションとして購入すれば、すぐに搭載可能だという。ただしモニターはSMPTE 2084対応モニターでないとHDR表示が出来ないが、会場ではドルビー社のDolby Visionを搭載したモニターでXDRの画面を表示。

同社のXDRはライブ中継向けを中心のソリューションがメインだが、すでに欧州の放送局からはスポーツ系などの番組でXDRの要望が高まっているということで、早くも商品化して標準普及に向けたプロモーションを行っているとのことだ。IP関係では、SDIと同じような方式で使用できる新たなIPルーター「GV Node」を発表。

DJI

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シックなデザインにまとめられたDJIのブース

すでにPRONEWSでもリリース発表を紹介しているが、DJIはこのIBCで空撮用カメラとしては業界初となるマイクロフォーサーズ採用のオリジナル4Kカメラ2機種を発表した。4K30p対応の「Zenmuse X5」(9月末発売予定)と、ロスレスで4K RAW記録が可能な「Zenmuse 5XR」(2015年末発売予定)の2機種。3軸ジンバル付属のマグネシウム合金製で、焦点距離は35mm換算で15mm、13ストップのダイナミックレンジ、感度もISO25600にも対応している。交換レンズとして前記の同社製ほか、Panasonic Lumix 15mm G Leica DG Summilux f/1.7ASPHレンズ、Olympus M.ZUIKO DIGITAL ED12mm f/2.0レンズ、 M.Zuiko 17mm f/1.8にも対応する。

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Phantom 3やInspire 1などのデモの他、新登場のMFレンズを搭載機のデモに人気が集中した

すでに全世界で毎日約3,000台が売れているという、ドローン業界ではチャンピオンのDJI。今回のIBCでも9ホールに大きなメインブースを出すほか、IBCの中央に設けられたDrone Zoneのメインスポンサーとなるなど、その存在感を増す一方だが、Phantom 3以降、従来までのGoProなどの他社カメラ装着型から、完全に自社製カメラ同梱・内蔵型のドローンに切り替えて来ている。

今年の2月にはマイクロフォーサーズ企画グループにも参加表明するなど、カメラ開発に余念がないようで、今後の空撮カメラ業界進出にも注目だ。



txt:石川幸宏 構成:編集部


Vol.01 [IBC 2015] Vol.03