txt:石川幸宏 構成:編集部
キヤノン
EOS C300 Mark II用に設けられたスタジオセット。codexのOn-Set Colorシステムとともに、カメラ側からCinema RAWを受けて、オンセットカラーグレーディングが出来るデモも行われていた
CINEMA EOS SYSTEMシリーズの中心的存在である、今秋発売予定のEOS C300 Mark IIの展示を中心に、NABに引き続き4K HDR展示の次世代映像システム展示でブース構成。
キヤノンの4K HDR展示コーナー。最近のハリウッドのメジャープロダクションでは、すでにカラーグレーディングシステムのスタンダードとなっている、SGO「MISTIKA POST」を使用した4K HDRの本格的なグレーディングデモが行われていた
EOS C300 Mark IIは、新コーデックのXF-AVCの採用により、CFast カードによるカメラ内4K収録(30pまで)を実現、またさらに本格的なカラーコレクション表現が可能なCanon Log2の搭載と、昨年のEOS 7D Mark IIやEOS C100 Mark IIより搭載された、キヤノン独自のオートフォーカス機能であるデュアルピクセルCMOS AFに加えて、業界最先端と言える数々の高性能AFサポート機能が搭載されており、4K撮影をスムーズに行うための機能が満載されたハイエンドシネマカメラに仕上がった。
デモ撮影のコーナーでは、陰影部でのCanon Log2によるオンセットグレーディングシステムが設置され、codexのOn-Set Colorシステムと24インチ4Kディスプレイを組み合わせたシステムや、LiveGradeのシステムで、撮影現場を想定したオンセット・カラーグレーディングのデモが行われていた。
参考出品された輝度2,000nitsの30インチの4K業務用ディスプレイ
4K HDRのコーナーでは、NABと同様にCanon USAが制作したEOS C300 Mark IIの作例「TRICK SHOT」をモチーフに、4KのHDR表示が可能な24型の4Kディスプレイ「DP-V2410」によるHDR表現をデモ。さらに、色情報をOpenEXRなどの非破壊の状態で取り扱える、SGOのカラーグレーディングシステム“MISTIKA”を設置し、詳細なカラーグレーディングデモも行われていた。また新たに2000nitsの輝度で表示可能な30インチ4Kディスプレイが参考展示されていた。
今年のIBCのキヤノンブースで4K HDRとともに大きな注目をあつめていたのは、同社初のISO400万相当の超高感度でカラー撮影が可能な多目的カメラ「ME20F-SH」だ。
実機としては初めて一般公開された同機は、EFマウントのボックス型カメラで一辺が19μm(マイクロメートル※)の巨大な画素を持ち、画素部および読み出し回路に搭載した35mmCMOSのフルサイズセンサーによって、被写体の最低照度を0.0005lux(最低ゲイン75dB時、ISO400万相当)の超高感度撮影を低ノイズで実現した。これまでは低照度環境における撮影は、IR(赤外線)投射による単色(モノクロ、グリーンなど)撮影になっていたが、この「ME20F-SH」は赤外線投光なしでフルHD動画のカラー撮影が可能だ。
※1μm=100万分の1メートル
監視・観察向けと思われがちなこの手のカメラだが、一般プロダクション向けのカメラとしても使いやすいシンプルなキューブ型の筐体にデザインされているため、すでに多くのテレビ局やドキュメンタリー系、映画系プロダクションからの引き合いがあるという。
注目の超硬感度カメラME20F-SH。実機展示と世界各所で撮影されたサンプル映像上映に加えて、実際に真っ暗闇の中でどれだけ映るのか?の実撮映像が観られるボックスコーナーも用意された
会場のデモ映像では、ノルウェーのオーロラを専門に撮影しているプロダクションが制作した高感度映像が上映されており、これまで通常のカメラだと、オーロラとミルキーウェイ(天の川)、そして流れ星(彗星等)を同時に映像に納めることは不可能だったが、このME20F-SHによってそれが可能になったとされる映像が映し出されていた。
ちなみにこのカメラもCINEMA EOSのラインナップ同様、Canon Log/Wide DRガンマを搭載、3G/HD-SDI、HDMI出力端子や、遠隔操作のためのカメラコントロールによるリモート端子も装備している。「ME20F-SH」の国内販売は今年12月上旬を予定しており、価格は税抜300万円。
カールツァイス
Milvusは、Oyus同様スチルとムービーの同時撮影も意識した流線型の滑らかなフォルムが特徴的だ
カールツァイスからは、オーバー6Kの高解像度デジタルカメラに最適化した、マニュアルフォーカスの35mmフルサイズ対応のレンズ新ラインナップ、Milvus(ミルヴァス)が登場。外観は「Otus」シリーズからの滑らかなフォルムが特徴的で、21mm/f.2.8、35mm/f2、50mm/f.1.4、85mm/f1.4の標準レンズ4種に加えて、50mm/f2の標準マクロレンズ、100mm/f2の中望遠レンズの全6種がラインナップ。
ニコンFマウントモデルには、絞りリングのデクリック機構を装備。付属の専用キーで調整ネジを回転させると、無段階のリング操作が可能になる
レンズマウントはキヤノンEFマウント(ZE)とニコンFマウント(ZF.2)の2種のマウントが用意されている。
そのうちニコンFマウントシリーズには、先行発売されているソニーEマウント仕様の「Loxia」シリーズ同様に、クリック回転式の絞りリングを、無段階でスムーズなアイリス調整に出来るデクリック機構を装備。Eマウント同様、付属の専用キーでマウント部の調整ネジを回転させると、無段階のリング操作が可能になり、動画撮影時等の際のスムーズな絞り操作に有効だ。
ツァイスのブースには、会場内唯一のRED 8K WEAPONが展示。なぜかRED本体のブースには展示されていなかった
ブラックマジックデザイン
相変わらずの人気を誇るブラックマジックデザインのカメラコーナー。中央奥には新発表のB4マウントを装着したURSA miniが。日本の放送、メーカー関係者も興味津々のようだ
今年のIBCでは同社にしては大きな新製品の発表は無く、地味な印象だったブラックマジックデザイン。今回は春のNABで発表したカラーコレクション編集ツール、DaVinci Resolve 12の出荷開始をメインに、Blackmagic URSA Mini B4 Mountの発表や、Teranex Mini 12G-SDIコンバーターの新モデル、DeckLink Quad 2 PCIeキャプチャー・再生カード、Teranex 4.2アップデート、MultiViewのメジャーアップデートなどを発表した。
DaVinci Resolve 12は、本ソフトウェアにとっては過去最大規模のアップデートということで、複数トラックのタイムラインにコンテクスト・センシティブの編集ツールを搭載。またリアルタイム・マルチカム編集、非対称/動的トリム、新しいミキサー、オーディオプラグイン、オンスクリーン・モーションパス対応キーフレームアニメーション、高度なプライマリー/セカンダリーカラーコレクション、Power WindowsTM、オブジェクトの動きや遠近感を追跡する新しい3Dトラッカー、驚異的な新3Dキーヤーなど、新しいメディア管理ツールを含めた多くの機能を搭載した
DaVinci Resolve 12の発表をメインに、今回も会場各所に巨大なバナー広告を展開するブラックマジックデザイン。すでに見慣れた光景になってきた
DaVinci Resolve 12はMac、Windows、Linuxに対応する3つのバージョンで登場。無償でダウンロード可能だ。また有償版のDaVinci Resolve 12 Studio は$995(日本円:税抜121,800円)で発売。無償バージョンのすべての機能を搭載し、さらにマルチGPU、4K出力、モーションブラーエフェクト、時間的/空間的ノイズ除去、3Dステレオスコピックツール、リモートレンダリング、さらに複数ユーザーが同じタイムラインで同時に作業できるコラボレーションツールを搭載している。
Blackmagic URSA Mini B4 Mountは、他社のレンズアダプターの使用とは異なり、レンズマウント自体を交換して、精密なレンズおよび球面収差補正機能を搭載。レンズコントロールの接続は、電源供給、収録開始/停止およびレンズコントロールの制御に使用可能だ。
txt:石川幸宏 構成:編集部