txt:石川幸宏 構成:編集部

「Beyond Definition」をテーマにIBCに臨むソニー

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ソニーブースは例年通り12ホールの3/4を使用して展示。NABに比べてコンパクトにまとめられているので、各テーマ毎に見学しやすい作りだ

ここ3年連続で「Beyond Definition」をメインテーマに掲げてIBCに臨んでいるソニー。今年も4K対応の新製品ラインナップを中心に、欧州だけでなく世界的なトレンドになっている、ネットワークIPソリューションや、今年がまさに旬と言えるHDR(ハイダイナミックレンジ)などの展示を行った。

初日のIBC開催前に行われたプレスカンファレンスにおいて、Sony Europe Ltd.Professional Solutions Europe VICE PRESIDENTの山内勝則氏のプレゼンテーションでは、今回の展示発表の3つの柱として「Image」「IP」「WORKFLOW」を掲げ、それは実はユーザーが自分のビジネスにおいて、いま最もコアとなる3つ領域であり、その各分野においてソニーが果たして行こうとする役割として、今まで通りのユーザーにとってのテクノロジーイノベーターとしての存在と、その製品をどう使ってもらうかまでを考えるソリューション・プロバイダーとしての立場が明確に示されるなど、今後の放送界においても技術分野のリーディングカンパニーであることが意思表示された。

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今回の3つのテーマである、「Image」「IP」「WORKFLOW」を提唱・要説する、Sony Europe Ltd.Professional Solutions Europe VICE PRESIDENTの山内勝則氏

また今年はこれまでにないアプローチとして、ブース中央にステージを設け、先述の3つの各テーマに沿った題目で業界関係者のスピーカーが連日登場し、20分間のプレゼンテーションが行われていた。

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IBC開催初日の朝のプレスカンファレンスで発表された、PXW-FS5とα7S II。どちらもミドルレンジユーザーに魅力的なカメラ。ここ欧州でも多くの注目を浴びていた

注目の新型4レンズ交換式の4Kカムコーダー「PXW-FS5」

気になる新製品では、ソニーは大手メーカーで唯一、このIBC期間中に新型4Kカメラを発表している。レンズ交換式の4Kカムコーダー「PXW-FS5」は、昨年のIBC2014で発表された「PXW-FS7」の弟分に当たるハンディサイズの機種で、スーパー35mm CMOSセンサー(総画素数約1160万画素、有効画素数約830万画素)搭載、収録フォーマットはXAVC(LongGOP 4:2:2/Long GOP 4:2:0)、AVCHD(Ver2.0)、XAVC Proxyに対応、14ストップのダイナミックレンジと100MbpsでUHDサイズ4K(3840×2160)/30p・24pのカメラ内収録に対応、HDサイズでは240fpsまでのハイフレームレート撮影(最大8秒)にも対応(最大10倍速までのスロー映像に対応)している。

手のひらサイズの本体重量がわずか0.8kgと非常に小型軽量に設計され、ワンタッチで脱着できる専用グリップハンドルなど、手持ちから三脚撮影、またドローンやジンバルを含む特機を使用した撮影など、様々な撮影スタイル時でも汎用性の高い筐体が秀逸に設計デザインされている。ハイスピード撮影機能としては、NEX-FS700と同機能であり、ある意味で同機のリプレース版とも言える。

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このモデルの特徴的なのは、PXW-X180に採用された、電子制御によるシームレスな濃淡調整が可能なソニー独自開発の可変NDフィルターが内蔵されていること。PXW-X180が1/3型センサーであったのに対し、PXW-FS5はスーパー35mm大判センサーで世界初となるこの可変NDフィルター装備を実現。これにより絞りを固定した状態で、被写界深度を一定に保ったまま露出調整が可能で、大判センサーならではボケ味表現により一層の深みが出せる。

ボディのみのPXW-FS5のほか、レンズ付属キットPXW-FS5Kには、Eマウントの18-105mmズームレンズ「SELP18105G」が付属される。このレンズは従来同型から改良進化しており、「SELP28-135G」にも備えられていた、ズームの回転方向を逆回転できる機能も標準で装備された。また3.5型LCDのモニターとは別に、本体後方部にビューファーが装備され、ここには1.0cm(0.39型)144万画素のOLED(有機EL)が採用されている。

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PXW-FS5は、ボディ本体が0.8kgの小型軽量ながら、4K30pまでのカメラ内収録が可能。Eマウントレンズのバリエーションが増えたこともあり、今後FS7とともに使用範囲が拡大しそうだ

今回、世界同時発表となったこのPXW-FS5は、日本での希望小売価格はボディ本体のみで税抜68万円、SELP18105GレンズがついたPXW-FS5Kが税抜74万円となっており、価格帯からもウエディングなどのDSLRムービー制作者向けのステップアップ機として、またドキュメンタリー、ENGやディレクターカメラなど幅広い層での活用が見込まれる。

勢いが止まらないα7シリーズ「α7S II」登場!

これと同時にIBCに会わせて欧州では先行発表された(日本は後発)、ミラーレス一眼タイプの35mmフルサイズ動画撮影カメラ、α7Sの後継機「α7S II」。先に発売された同型のスチル用カメラα7R IIの動画撮影タイプとなる。

前モデルからの進化として、14bit非圧縮RAW記録、そしてカメラ内での4K(UHD=3840×2160)動画記録に対応、ハイスピードAFなどAF機能の大幅向上、さらに堅牢性を追求したボディデザインに一新された。シリーズスタンダードモデルの「α7 II」高画質記録の「α7R II」と同様に、ボディ内での5軸手ブレ補正機構も装備。4K撮影では4K 24p/30pで100Mbps XAVC Sフォーマットで記録、HDでは120fpsのハイフレームレート記録にも対応している。

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α7S IIは、4Kカメラ内収録を可能にしたことで前バージョンから大きく進化した。またボディの堅牢性が増したことで、多くの過酷なプロ現場の仕様にも適応できそうだ

また今回はS-Log2に加えて、S-Log3ガンマカーブも搭載、色域もS-Gamut3とS-Gamut3.Cineにも対応した。この新製品2機種については、プレス関係者ほかVIPユーザー向けに、開催初日の11日のみハンズオンとデモンストレーションの特別スイートが設けられた。

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地味な展示ながらも、放送局等のカメラマンからは大きな注目を集めたOLED VF「HDVF-EL30」。上部に前後回転が可能なLCDモニターが装備され、サンシェードフードも付属。4K収録には大きな武器となりそうだ

その他の注目新製品として、NABで参考展示になっていたOLEDのフルHDビューファーが「HDVF-EL30」として正式に製品化。フルHD解像度の0.7型OLEDを採用し、NAB時点より大きく進化した部分として、上部にQHDのLCDモニターが設置されたのと、LCD用の遮光フードが標準装備されている。さらに、光ディスクのアーカイブシステム「ODA」の次世代機となる、上下にピックアップがついた新製品の技術参考展示もあった。

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参考展示されていた、次世代型のODA・光ディスクアーカイブシステム。光ディスクから上下のピックアップでデータを読み書きすることで処理スピードの大幅アップを実現するという


txt:石川幸宏 構成:編集部


Vol.00 [IBC 2015] Vol.02