作業の短時間化、さらなるツールの取り込み、8Kオーバー解像度に対応したポストプロダクションツール
ポストプロダクション用ソフトウェアは、業界定番のツールをすべてノミネートしてみた。
■Adobe Creative Cloud
アドビ システムズの「Adobe Creative Cloud」は、編集はPremiere Pro、合成はAfter Effects、サウンドはAuditionなどのツールをランナップ。NABとIBCの直前に動画編集ツールのバージョンアップ発表が定例で、9月のメジャーアップデートでは、動画とオーディオの制作ワークフローを高速化する機能を搭載した。
■DaVinci Resolve 15
Blackmagic Designの「DaVinci Resolve」は、4月のNABでメジャーアップデートが定例。今年発表された「DaVinci Resolve 15」では、合成ソフトウェアのFusionを統合。編集、カラーコレクション、Fairlightを採用したオーディオポストプロダクション、Fusionを採用したビジュアルエフェクトをひとつのアプリケーションでできるようになった。
■EDIUS 9
グラスバレーのEDIUSは、2017年11月にバージョン9をリリース。最新バージョンは9.31。EDIUSは国内で開発しているとあって、他社ツールよりも国産カメラメーカーのRAWや新ビデオフォーマットへの対応にアドバンテージがあるといった感じだ。また、今年2月にBeldenがSAMを買収してカラーグレーディング&フィニッシングシステムの「Rio」を統合。今後は編集はEDIUS、カラーグレーディングとフィニッシングはRioといった連携に期待だ。
左からPremiere Pro、DaVinci Resolve 15、EDIUS 9
■Media Composer
アビッドは、オーディオポストプロダクションからメディア管理、報道制作、ビデオポストプロダクションなどのメディア業界に関わるソリューションをラインナップ。その中のビデオポストプロダクションがMedia Composerだ。特に編集はMedia Composer、オーディオポストプロダクションはPro Toolsの組み合わせが有名だ。Media Composerは定期的にバージョンアップを行っており、4月のNABでは「Media Composer | First」「Media Composer」「Media Composer | Ultimate」の3グレードを発表。7月のアップデートでは16Kのメディアを作成および再生に対応。11月のアップデートではビンの保存がバックグラウンドで自動的に行われるようになった。
■Final Cut Pro X
アップルの「Final Cut Pro X」は、毎年10月または11月にカリフォルニア州パクチーノで行われる「FCPX Creative Summit」でアップデート発表が定例となりつつあるようだ。今年はFCPX Creative Summitに合わせて10.4.4を発表。Frame.io、Shutterstock、CatDVからの機能拡張に加え、バッチ共有、ビデオのノイズリダクションそして比較ビューアなどの機能が使えるようになった。
■4K Prunus
さくら映機は4K HDRリアルタイム編集システム「4K Prunus」を発売。「書き出しに時間がかかる」「再生中にコマ落ちする」など、4K映像編集の課題を克服し、HD同等のレスポンスを実現したターンキー編集システム。新開発のSDIボード「SKR-12GIO/EXP3」によって、4K HDRのモニタリングをしながらの編集が行える。
左からMedia Composer、Final Cut Pro X、4K Prunus
PRONEWS AWARD 2018 ポストプロダクション部門ノミネート製品
以上をまとめると、ポストプロダクション部門のノミネート製品は次のようになる。
- アドビ システムズ「Adobe Creative Cloud」
- Blackmagic Design「DaVinci Resolve 15」
- グラスバレー「EDIUS 9(9.3)」
- アビッド「Media Composer」
- アップル「Final Cut Pro X」
- さくら映機「4K Prunus」
何が受賞するのか…?発表は!
PRONEWS AWARD 2018 ポストプロダクション部門受賞製品発表
- ポストプロダクション部門
ゴールド賞 - DaVinci Resolve 15
Blackmagic Design
ゴールド賞はDaVinci Resolve 15。DaVinci Resolve 15は合成ソフトのFusionを統合。動画編集ソフトでありながら、モーションも同ソフト内でできるところが受賞理由となった。編集からFusionへの連携はページを切り替えるだけで、いちいちレンダリングをして別のソフトにもっていく必要がない。更新した作業はすべての各ページに反映されるところは大きなポイントといっていいだろう。
メモリを1本のソフトに振り切れる。処理をCPUやメモリではなくGPUに依存し、外付けGPUにより、ラップトップでデスクトップ並みの処理速度を実現するのも便利だ。
コスト的にもDaVinci Resolve 15は無料。フリー版でも映像編集は問題なくできる。税別33,980円のDaVinci Resolve 15 studioであれば、4K以上のフォーマットをサポート。120fpsまでのフレームレートに対応している。また、無償バージョンには含まれないイメージ処理機能やフィルターも数多く使用できる。
- ポストプロダクション部門
シルバー賞 - Adobe Creative Cloud
アドビ システムズ
シルバー賞はAdobe Creative Cloud。受賞理由は、映像制作のワークフローの革新だ。12月のPremiere Pro 13.0.2のアップデートでは、WindowsでのProRes書き出しに対応。このアップデートに映像業界は大歓喜だ。これまで、編集の納品ごとににわざわざMacでわざわざ変換していた人も多かったと思う。これからはそのような手間は必要なくなる。これからはWindowsでもProResが浸透しそうだ。
もう1つの受賞理由はモバイルへの対応だ。マルチプラット編集ソフトのPremiere Rushは、iPadやiPhoneで本格的な編集できるツールで、直感的に操作しやすく、動画編集が初めてでも簡単に行える。また、Adobe Premiere Rushで簡単に編集した結果はパソコンにも引き継がれる。Premiere Proで細かく編集することも可能だ。
Adobe Creative Cloud自体は、エンターテインメント作品を制作するハリウッドの制作会社でも活用が増加している。アドビは、ハイエンドの制作とより数多くのユーザーへの対応という2つに対応しつつある。今後、クリエイティブツールはPCからタブレットの比率が増えることが予想されるが、モバイルツールの時代になってもアドビのツールの快進撃は続きそうだ。