DSLR動画撮影の弱点と言われていた「音」
作品づくりにおいて映像と同じく音も重要だ。意図する映像をより綺麗に撮るために色々な課題をクリアして成し得ているのと同様に、意図した音を的確に録ることは難しく、奥が深い。音を何のために、どのように録るのか。ストーリー、演出意図に合わせて、映像と音をどうリンクさせるのか。撮影シーンやディレクターの采配、その方法によって音の録り方は無数にあるだろう。
特に映画やTVドラマなどの場合、視聴者層のターゲット(女性か男性か、大人か子供か、若者向けか年配者向けか、等)に合わせて、音選び、音色、音質、音量等、細かく設計して作り上げると聞く。
撮影現場(前工程)での録音とポストプロ(後工程)での編集では処理や役割が違ってくるので分けて考える必要もあるが、音を録るということは、映像におけるフレームワークやフォーカシング、色味、解像度、ダイナミックレンジ、記録形式の選択とコントロールに似ていると感じる。
「どの種類(仕様)のマイクを使い、何をどのように収音するのか」「収音したものが意図したものになっているか」「収音する大きさや質をどうするか」「収音したものが複数ある場合、どうミックスするか」「ミックスした音をどのような形式で記録するか」など。撮影のシーンごとに速やかに決定し、実行する必要があるのでそれだけ熟練の業が必要となる。対象が映像か音かの違いだけで、映像を撮ることと同じくらい音を録ることは難しく、奥深いことではないだろうか。
少し大層な話になったが、今回はミラーレスカメラやDSLR撮影シーンでの録音についてに絞りたい。特にミラーレスカメラやDSLRは小型軽量である利点を活かして、ワンマンもしくは小規模オペレーションをしているユーザーが多いので、そのあたりを中心とした話になる。映像人がどのようなマイクや機材を使って、意図する良い音をいかに記録、残しているのかを紹介していきたい。
DSLRの動画撮影において音が弱点だと言われてきた。DSLRは基本的に静止画撮影のための機器であり、静止画性能に関しては競合製品としのぎを削って向上してきたのに対し、動画機能がはじめて装備されたのは2008年で、そこではじめて音を録る機能がついたわけだから、歴史が浅いし、無理もない。
現在のミラーレスカメラでは動画機能は一般的になり、性能は向上し、機能も充実してきているが、DSLR時代では動画機能はある意味挑戦的な機能であった。「とりあえず動画機能を入れてみた」からスタートし、実際にユーザーに使っていただいた後の要望を集めながら、技術的、予算的な事情と相談しながら取捨選択し、ブラッシュアップされてきた。
ミラーレスカメラになってDSLR時代に弱点と言われてきた音の部分はどのように改善されてきたのか、見てみたいと思う。
ミラーレスカメラユーザーの外付けマイク動向
マイク
まず、カメラ本体の内蔵マイクは相変わらず無指向性のマイクが付いているだけで、意図した音をしっかりと録るには不向きだ。ここは別の方法で自己解決するしかないだろう。そのひとつが外付けマイクを使うことだ。今回、ミラーレスカメラユーザーにマイク所有の有無を聞いてみたのでご紹介したい。
Q.ミラーレス一眼カメラ用のカメラマイク(外付けマイク)はお持ちですか?
Q.ワイヤレスマイクはお持ちですか?
ショットガンタイプのマイクとワイヤレスマイクは上記の通りとなったが、大方予想通りといったところだ。7割弱の方がショットガンマイクとワイヤレスマイクの両方を所有している結果となったが、撮影対象や目的に応じて使い分けていることが予想される。インタビューやドキュメンタリーなど人物の声を確実に録るにはワイヤレスマイクで胸元に仕込んでおく方が良い。
また、ショットガンマイクについてはステレオマイクとモノラルマイク、鋭指向性や単一指向性、全指向性マイクを複数持っていて撮影内容によって使い分けるユーザーもいるようだ。
DSLR動画の黎明期から製品を供給してきた定番のメーカーだけでなく、ここ最近は中国メーカーを中心にいろいろなメーカーがコスパの高い製品を供給してきている。ユーザーからすると選択肢が増え、安くて性能が高い製品を使えるようになっていることは大歓迎だろう。
どんなブランドの製品をお持ちなのかも聞いてみた(※アンケート期間2022年2月18日~3月18日)。
Q.お持ちのカメラマイク(外付けマイク)のメーカー名をお教えください(複数回答可)
Q.お持ちのワイヤレスマイクのメーカー名をお教えください(複数回答可)
カメラマイクでもっとも所有されているブランドはRØDEであった。DSLR動画向けのカメラマイクを黎明期から供給してきた実績もあり、ブランド浸透が進んだ結果ではないか。その後はゼンハイザー、ソニー、オーディオテクニカ、アツデン、Shureと定番どころが続く。
ワイヤレスマイクについてはソニーが強い。UWP-D11、UWP-D21あたりが支持されているのではないか。もともと、従来からの放送業務用ビデオユーザーから支持も高かったが、ビデオグラファーからYouTuberまで幅広いユーザーへ支持が広がりヒット商品になっている。その現れだろう。次にRØDEが続き、Hollylondがゼンハイザーをかわして3番目になっているのが興味深い。放送用ワイヤレスマイクでお馴染みのRAMSAが5番目と健闘して続く。
ミラーレスカメラにおすすめの最新マイク
最近のモデルを中心にミラーレスカメラユーザーにおすすめのマイクの一例を紹介したいと思う。あったら便利、撮れ高アップ間違いなしの機能についていくつか挙げてみた。
■おすすめ機能
- 小型軽量で高音質
- タッチノイズを抑制する機構
- ステレオ/モノラル切り替え式
- アッテネーター機能
- マイク本体の首振り機構
- 鋭指向、単一指向、全指向の切り替え式
- ケーブルレス、デジタル伝送
- アイソレーション(バックアップ)機能
上記おすすめ機能をいずれか装備している5つの製品を具体的に挙げてみたので、今後の機材選びの参考にしていただけるとうれしい。
ゼンハイザー オンカメラショットガンマイクロホン「MKE 400-II」(第2世代)
マイクの老舗メーカーであるゼンハイザーから2022年1月から発売されたオンカメラショットガンマイクロホン「MKE 400-II」(第2世代)。特徴としては指向性の強いショットガンタイプで、カメラに直接取り付けることを想定して小型軽量化されている。ハンドリングノイズを最小限に抑制するにショックマウントカプセルを採用している。
RØDE「VideoMic Go II」
DSLRの外付けマイクとして早くから発売していた豪州のメーカーRØDE。モバイルフォン向けのマイク含め、豊富なラインナップを揃えている。画像は2022年1月に発売されたRØDE「VideoMic Go II」は、本体重量33gと小型軽量を実現したショットガンマイク。3.5mm TRS端子のアナログ出力のほか、USB-C端子からのデジタル出力できるのも特徴。
アツデン「SMX-30V」
国内のマイクメーカーであるアツデンから2020年9月に発売されたステレオモノラルミックスマイクロホン「SMX-30V」。ステレオとモノラルの二つのマイクが一体型となったモデルで、単なるステレオ、モノラルの切り替え式ではなく、調整ボリュームでステレオとモノラルの比率を調整でき、映像を見ながら収音する音を作り込むことができるのが特徴。
さらに、被写体となる人物や楽器などの向きに応じてマイク本体を左右に約30°動かすことができる首振り機構もあり、意図する音をしっかりと録ることを可能にしたマイクだ。
ソニー「ECM-B10」
ソニーショットガンマイクロホン「ECM-B10」。純正品ならではの特長を活かし、ソニーのカメラの共通インターフェースであるマルチインターフェースシューに対応し、バッテリーレス、ケーブルレスを実現。デジタル伝送に対応したカメラとの組み合わせで、音声をデジタル信号のままダイレクトに伝送することができる。
また、鋭指向性、単一指向性、全指向性の3つの指向性を切り替えることができ、撮影対象や目的に応じて使い分ける事が可能だ。2022年7月29日発売予定。
DJI Mic
DJI初のワイヤレスマイクではあるが、ドローン製品で培ってきた無線技術を応用した製品なので、高音質で飛びも良い。トランスミッターにアイソレーション機能もあり、使用しながら録音することも可能。
また、メイントラックとは別のトラックで-6dB下げた状態でバックアップ録音するSafety Track機能も便利でユニークだ。発売は当初より遅れて2022年5月に出荷開始された。
インターフェースとマイクアンプ問題
DSLR動画撮影において弱点と言われてきた音の問題の二つ目がインターフェース(音声入力)。ミラーレスカメラ本体の音声入力は3.5mmステレオミニジャックしかついていない。先にマイクの選択肢が増えているし、最近のモデルであればプラグインパワー対応のカメラがほとんどなので昔ほど困らなくなってはいるが、より高音質の業務用のマイクを使いたい場合や外部から音声信号をもらう場合などはXLR(キャノン)端子が必要になる。
また、3つ目がカメラ本体のマイクアンプの問題だ。基本的に各社マイクアンプに関してのスペックは公表していないので、どの程度のものなのかはわからない。レベルの違う入力に対してGAIN調整できなかったり、入力のレベルを細かく調整できなかったり、高音質の信号を扱えなかったりとDSLRの時代からこれまでいろいろと課題が多かった。
ミラーレスカメラになって動画機能にも本腰を入れてきてから、音の問題もモデルを追うごとに改善、解決されてきている。インタフェースの問題はXLRマイクロフォンアダプターを各社オプションで提供するようになり、XLR端子を扱えるようになり、48Vファンタム給電もできる。
入力レベルもマイク/Lineの受けができるようになり、アッテネーターで調整、ダイアル式のレベル微調整もできるようになった。また、動画に関する処理エンジンも高度化や記録メディアの大容量化や高速化により、記録コーデックも高品位なものも扱えるようになった。それにつれ、音声回路やアンプも質を上げていったと思われ、モデルを追うごとに音声信号の高品位化や機能充実が図られてきている。以下、一例としてLUMIXのGシリーズの最新モデルGH6について説明したい。
パナソニックXLRマイクロホンアダプター「DMW-XLR1」
LUMIX GH6の音声ダッシュボードメニューと別売のXLRマイクロホンアダプター「DMW-XLR1」。本体記録で4ch対応が可能。レベルメーターも25段階でモニターしながら細かくレベル調整ができる。信号品質もXLRマイクロホンアダプターとの組み合わせで48KHz/24bitの4ch収録ができ、さらに96KHz/24bitのハイレゾ収録も出来るようだ。その他、Low cutやオートレベル制御(ALC)のスイッチもある。
ソニー「FX3」
ソニー「FX3」はハンドルとマクロフォンアダプターが一体化されているが、標準でXLRハンドルユニットが付属している。ミラーレスカメラというよりもCinema Lineという業務機の位置づけではあるため、より業務ユースを意識した機器構成であろう。
ここでミラーレスカメラユーザーのXLRマイクアダプターの所有をご紹介したい。
Q.ミラーレス一眼カメラ用のXLRマイクアダプターをお持ちですか?
Q.お持ちのXLRマイクアダプタのメーカー名をお教えください(複数回答可)
ソニーが最も多く50%を超える所有率となっている。2番目に比べて比率が高いのはFX3ユーザーも含まれているのでその影響があるかもしれない。パナソニック、オーディオメーカーのタスカム、アツデンと続く。また、XLRマイクアダプターの代わりにZOOMやタスカムのオーディオレコーダーをXLRマイクアダプター兼ねて使っているユーザーも多いようだ。
XLRマイクアダプターの選択肢としてはカメラメーカー純正品か、オーディオメーカーの製品かの二択であるが、タスカムからは汎用品ではなく、メーカー専用に近いモデルとしてリリースしているので少しご紹介したい。
2021年8月に発表され、同年12月から出荷されたミラーレスカメラ対応XLRマイクアダプター「CA-XLR2d」だ。今のところ、キヤノン、富士フイルム、ニコンの3社向けに出している。「メーカー専用に近い」と歯切れの悪い表現になっている理由はこうだ。
下の画像を見ていただいてわかるようにCA-XLR2d本体は同じで、カメラに取り付けるシューの部分が変えられる仕様になっている。カメラのアクセサリシューでデータ通信や電源供給のない一般的な物理シュー、つまりコールドシュー向けのマウントアダプターが一つ付属していて、さらにキヤノン、富士フイルムのデータ通信に対応したアクセサリーシュー(ホットシュー)に合わせたアクセサリーシューマウントアダプターをそれぞれ追加で付属させているのだ。
カメラがホットシュー対応のモデルであれば、シューを各社のホットシューに変え、対応していなければ、コールドシューに変えてカメラにマウントして使用するのだ。コールドシューの場合、オーディオ信号は3.5mmのステレオミニケーブルでカメラとつないで送る。
ニコンは今のところダイレクトデータ通信や電源供給ができるマルチアクセサリーシュはないのでコールドシュー、ケーブル接続で使用する形だ。ショックマウントマイクフォルダがあり、必要な機能が物理スイッチとして装備されていてマイクアダプターとしては十分だ。
さらにオーディオメーカーが作る安心感もあり、高音質、低ノイズ、広いダイナミックレンジを実現する高性能マイクプリアンプ「HDDA」や高性能ADコンバーターの搭載されているのは心強い。
DSLR時代から弱点と言われてきた音の部分が、ミラーレスカメラ時代になって色々なアプローチから改善され、より使いやすくなっているのを感じていただけただろう。今回説明しなかったが、撮影案件や予算によっては、カメラマンとは別に音声マンがマイクプランをしっかり立てて別録りする方法もある。
その場合はフィールドミキサーやオーディオレコーダーで収録するかたちになるが、DSLR撮影の場合はどうしても同期問題があった。それも、ミラーレスカメラ時代になってタイムコード入出力対応のモデルも増えてきて、さらに小型で安価なタイムコード同期システムもサードパーティからリリースされているので、組み合わせることで映像と音声をしっかりと同期させることができるようになっている。しかもワイヤレスで同期できるモデルもあり有難い。
最後に、実際のユーザーにもリグがなぜ必要なのか、おすすめブランドと選定のポイントをインタビューしてみたので紹介したい。
ECM-B1MやZOOM F3を選んだ理由
渡辺健一
録音技師・テクニカルライター。元週刊誌記者から、現在は映画の録音やMAを生業。撮影や録音技術をわかりやすく解説。近著は「録音ハンドブック(玄光社)」。ペンネームに桜風涼も。
オンカメラマイクはソニー「ECM-B1M」。画角がオムニ(無指向)、カーディオイド、スーパーカーディオイドの3種類が選べ、ノイズキャンセル機能も搭載されている。音量はマニュアルとオートが選べるが、ノイズキャンセルと併用することで、背景ノイズがオートで上がり下がりするのが抑えられるので使いやすい音になる。
XLRマイクアダプターは使っていないが、その代わりに「ZOOM F3」を使っている。32bitフロートで録音できるので失敗がない。また、2chあるのでステレオ録音用にも活用。同社の「ZPC-1」(ステレオペアマイク)を組み合わせて使っている。
ラベリアマイクは「Hollyland Lark 150」。デジタル無線式で、2ch搭載。カメラ側のボリュームを一定のまま、受信機のボリュームで音量調整が可能なのが選択理由。マイクは安っぽいが、(おそらく)カーディオイドなので環境ノイズに強い。
「ZOOM ZPC-1」も気に入っており、非常に周波数特性がよく、AB方式のステレオマイクレッティングにおいて、マイク角度の自由度が非常に広い。マイク角度を大きく広げても中抜けがほとんどない。映像用の環境音を録音するのに、非常に適している。
RODE VideoMic Go IIやTASCAM Portacapture X8を選んだ理由
駿河由知
官公庁、国連、国際会議等の各国多拠点接続会議、教育機関の入学式、卒業式等 各種インターネットライブ中継の企画制作。
SIGMA fpと組み合わせて使用しているのはRODE VideoMic Go IIです。自分のテーマである小型軽量を満たしている素晴らしいマイクです。とにかく軽量で、音質はベスト。iPhoneにも専用USBケーブルを使用することで、デジタル接続ができることも気に入っています。
1台の受信機で、2台の送信機からの受信が可能です。マイク内蔵の送信機の音質も十分。この小さい送信機にVideoMic Go IIをワイヤレスショットガンマイクとして使用することが可能です。簡単なインタービュー収録などで、小さくて軽いスマホ伸縮ポールにVideoMic Go IIとWireless Go IIの送信機を取り付けて使用しています。また、TASCAM ラベリアマイクロホン「10LB」との相性が良く、10LBをWireless Go IIの送信機の外部マイク入力への接続も可能です。
またカメラへの接続は、2台の送信機から受信した音声信号を、1台の受信機で受信し、その受信機の3.5mm外部出力からカメラのマイク入力に接続します。受信された信号は、カメラのLとRの音声へ、2台の送信機からの音声をモノラルにミックスまたは2台の送信機からの音声Lch、Rchそれぞれへ録音できるように受信機側で設定が可能です。Wireless Go IIは、受信機本体での録音も可能なので、バックアップとしての録音は安心です。
XLRマイクアダプターにはTASCAM「Portacapture X8」を使っています。SIGMA fpと有線ケーブルで接続しています。6chの入力をミキシングできますので現場での音声の入力に対応できます。カメラ内蔵の音声とは別に、Portacapture X8での各チャンネルでの録音をしておくことで、編集作業を効率的に行うことができます。
「32bit float録音」対応の利点を活かし広いダイナミックレンジが長所です。同梱されるXYマイクがとても軽く、取り回しが楽になります。また、同梱されるXYマイクの入力端子が3.5mm端子のため、RODE VideoMic GO IIに付け替えることが可能です。
ラベリアマイクは何本か実際に聴き比べてみた中で、TASCAM「TM-10LB」ラベリアマイクが好きな音でした。マイク自体がとても小さいので目立たないところも好みです。
上記の中でも特に気に入っているのはVideoMic Go II用の「ウィンドウスクリーンWS12」です。しっかりしたつくりで長持ち感がある。VideoMic Go IIはショットガンでありながら、短い筐体なので、小さなミラーレスカメラに装着しても、カメラレンズの前に飛び出すことがないので安心して撮影ができます。
ソニー製マイク「ECM-77BMP」やソニー製レシーバー、トランスミッターを選んだ理由
猿田守一
企業、CM、スポーツ配信など広範囲な撮影を行っている。PRONEWSではInterBEE、NAB、IBCなどの展示会レポートを行った経験を持つ。
ミラーレス用オンカメラマイクは特に所有していない。XLRのマイクアダプターに関しては、パナソニックの「DMW-XLR1」を所有している。筆者所有のGH5とGH5Sの専用アダプターで、とても親和性が高くて使いやすい。特に操作性はハンドヘルドカメラのオーディオ部とほぼ同じなので、現場での操作ミスが起こりにくい。
ラベリアマイクはソニー「ECM-77BMP」を使用している。普段インタビュー収録の割合が多いので、B帯ワイヤレス「URX-P03D」 (レシーバー)+「UTX-B40」 (トランスミッター)を使うことが多い。このシステムで使用しているECM-77BMPは3.5Φのミニジャック形状なのでUTX-B40に直接接続することができる。ECM-77は音質もさることながらマイクコード、コードとジャックの接続部分などの強度が強いため信頼性が高い。またマイクカプセルも小型なので演者さんに装着しても目立たないという利点が選んだ理由といえる。
現場によってはワイヤレスが使えない場合がたまにある。最近は少なくなったが、高層階のビルでの収録時には思わぬ混信が入ることがある。収録を止められない現場、例えば時間に追われている企業の社長や政治家などのインタビュー時など、もし混信などのトラブルが起きた場合に大変なことになるので、そのような録り直しがきかない案件ではあえてECM-77Bなどのワイヤード接続のマイクを使用することがある。
放送業界では一般的なECM-77シリーズは、やはり長年定番ということだけあってそれなりに選ばれている理由があると感じる。自分の中では現場でのトラブルを未然に防ぐという意味での保険という位置づけなのかもしれない。