Vol.08 DJI製品が大人気!ワンオペの定番、電動ジンバル[映像人のカメラ・アクセサリー2022]

電動ジンバル所有率は7割超え

電動ジンバル登場以前までの移動撮影は、レールドリー、ジブ、クレーン、ステディカムといった特機でカメラワークを作るのが一般的だった。しかし特機はトレーニングが必要で、セットアップに時間がかかるという悩みがある。その一方、数年前に登場を迎えた電動ジンバルはワンオペ撮影が可能で、セットアップに手間もかからない。しかも誰でも移動ショット撮影が可能になるという、夢のような機材である。撮影現場への浸透も早く、アンケート調査ではジンバル所有率は7割を超える結果となった。

Q.電動ジンバルはお持ちですか?

映像人のカメラアクセサリー電動ジンバル説明画像

ジンバルメーカーで特に有名なのは、DJI、Zhiyun、Feiyu Tech、MOZAで、すべて中国メーカーで構成されている独特の業界である。その四大メーカーの中でも、DJIは飛び抜けた存在であり、アンケート調査でもDJI製ジンバルを所有していると回答した人は7割を超えた。

Q.所有している電動ジンバルのメーカー名を教えてください(複数回答可)

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DJI製ジンバル人気の秘密は、ドローンで培われた高い技術にあると言えるだろう。2013年発売の初代Phantomはオプションで2軸のジンバルが用意され、2014年発売の「Phantom 2 Vision+」から自社開発カメラと3軸のジンバルが搭載された。さらに4K撮影に対応した「Phantom 3」でも高いジンバル精度を実現し、安定した空撮を可能としていた。

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自社製カメラと3軸ジンバルを搭載したPhantom 2 Vision+

ジンバルを手持ちで使用可能になったのは2014年に登場した「Ronin」からだ。初代Roninは競合製品よりも大幅に値段が安く、7.2kgのペイロードを実現。しかも、3軸にも対応しており、マイクロフォーサーズからRED EPICを手持ちで運用可能だ。ドローンでお馴染みのDJIが手持ちジンバルで映像業界参入とあって大変大きな話題となった。

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2014年に発売したDJIの手持ちジンバル「Ronin」

片手ジンバルの登場と進化

DJI製品の所有機種のアンケート調査では片手ジンバルのRS 2が最も多く、Ronin-Sが続く結果となった。ライトユーザー向けのRSC 2やRonin-SCよりも、プロ向けで一眼レフ系の重量に対応するRS 2やRonin-Sが選ばれる結果となった。

Q.DJI機種所有の方は、機種名を教えてください(複数回答可)

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最もユーザーが多かったのはDJI RS 2で、2020年に発売したRONIN第2世代ジンバルだ。ジンバル重量1.5kg、最大4.5kgのペイロードを実現し、マニュアルフォーカスレンズをAFに変えるフォーカスシステムや映像伝送システム「RavenEye」対応が特徴だ。RavenEyeは遠隔でカメラ映像の表示やパラメーター制御が可能で、最大200mの距離から1080p動画を60msの遅延のみで伝送可能としている。

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2020年に発売したDJI RS 2

次に多かったのはRonin-Sで、2018年に発売したDJI初の片手ジンバルだ。ワンマンオペレーションでも滑らかな撮影の実現や、10万円を切る価格が当時大変話題となった。ジンバル重量1.84kg、最大3.6kgのペイロードで、キヤノンの5Dシリーズ、パナソニックのGHシリーズ、ソニーのαシリーズに対応。ただし、片手ジンバルといっても一眼レフカメラと組み合わせることでかなりの重量になる。長時間の片手での運用が困難という方は、オプションパーツのデュアルハンドルキットを用意して、工夫して運用していた。

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2018年に発売したDJI Ronin-S

アンケートの調査期間(2022年2月18日~3月18日)後になるが、DJIは第3世代の片手ジンバル「RS 3 Pro」と「RS 3」を発売した。RS 3 Proは、ジンバル重量1.5kgで、最大4.5kgのペイロードを実現。重量とペイロードはRS 2から変っていないが、それ以外の細かい部分をブラッシュアップしている。大きく変ったところでは、ワイヤレス映像ソリューションの「DJI Transmission」対応で、レシーバー、モニター、コントローラー、レコーダー機能の統合が特徴だ。

ジンバルは滑らかな映像撮影やカメラアングルのコントロールに始まって、フォーカスコントールや映像転送技術など、撮影現場の求める機能をどんどん集約する存在になりつつあるようだ。

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2022年に発売したDJI RS 3 ProとRS 3。右はDJI Transmissionで、映像レシーバー、モニター、コントローラー、レコーダーを組み合わせた一体型ソリューションを実現している

最後に、実際のユーザーにもリグがなぜ必要なのか、おすすめブランドと選定のポイントをインタビューしてみたので紹介したい。

「私が電動ジンバルを選んだ理由」インタビュー

DJI RS 2を選ぶ理由

DJI RS 2を選んだ理由

伊丹迅

綺麗め女子、ネコ、風景を写真・映像で素敵に表現する作家、ドローンパイロット。「Panasonic S5/S1/S1R/S1H User’s Information Board」「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K&6K info」「DJI RS 2/RSC 2、RONIN、RONIN 4D使用者懇談会」「DJI MAVIC・SPARKオーナーズ」などのFacebookグループを管理運営する。徳島ドローン協会 設立者/事務局長。正体は悪魔音楽集団「ギロチン伯爵」主宰/ヴォーカリストの悪魔、デーモン獄長。

ビデオグラファー、カメラマンの御多分にもれず、筆者もジンバルを使用することが少なくない。使用しているジンバルはDJI RS 2だ。

搭載するカメラはZ CAM E2-M4、レンズはSIRUI Anamorphic 1.33xシリーズとコシナVoigtlander NOKTON F0.95の各画角のものだ。これら組み合わせにおいてはどこをえぐっても手ブレ補正という概念は存在しないので、すっきりジンバルや三脚の必要があるというわけだ。

数あるジンバルの中からDJI RS 2を選択する理由は、古くからのDJIドローンユーザーとして同社のジンバル技術に信頼と馴染みがあることだ。具体的仕様として重視する点は、ハンドリングが軽快で長時間や頻繁な使用においてユーザーが疲れないこと、セットアップが単純でクイックなことだ。

DJI RS 2では筐体の一部がカーボン製で比較的軽く、追加ハンドルにより両手持ちや吊り下げもラクな感じで運用できる。セットアップ面においては、ロックスイッチがあるので1軸ごとのバランス調整が行いやすい。また、カメラ側に取り付けるスライドプレート裏にギアレール、それが差し込まれるジンバル側にギアとダイヤルがあるので、前後バランスの細かい調整がラクだ。

筆者にとってDJI RS 2において「これは決定的」と感じた仕様は、先述のZ CAM E2-M4搭載時にほぼ必須となる追加パーツのスマホホルダーだ。

プラスチック製で軽く、装着するスマートフォンや周辺の機器をキズ付ける心配がない。ホルダー側、ジンバル側とそれぞれに取り付け回転軸をもつ取り付けパーツを有し、脱着がクイックでホルダーの角度調整が容易。取り付けたスマートフォンのロール、タテ・ヨコ回転が可能で、回転時には気持ちのいいテンションがかかりつつ、タテ・ヨコ所定の停止位置でピタッと留まる(ZCAMアプリは縦画面モードと横画面モードがあるのでこの仕様は重要、便利)。

目下、まずは満足して使用しているDJI RS 2だが、ギア、ダイヤルによるバランス調整が全軸でおこなえること、さらに進んでバランスが自動調整されることをジンバル開発各社に期待したい。

EOS R3 + DJI Ronin RS 2を選ぶ理由

DJI Ronin RS 2を選んだ理由

Nick Tsutomu

レストランシェフ引退後、IT系制作会社を経て2022年で個人事業10年目を迎える撮影監督兼カメラマン。ホテル、レストラン、ウエディング、不動産、舞台、イベント、芸能、映画、CMなど多ジャンルにて商業記録問わず小中規模の撮影をメインにスチルからムービー空撮までフレキシブルかつ的確な監修を強みとしている。美容学校写真講師を兼任していた経験やブライダルメイク室との人脈から各ジャンルに適したヘアメイクの斡旋なども行なっている。サウナとビールが好き。

富士フイルムXF18-120mmF4 LM PZ WR説明写真

私は現在メインカメラをEOS R3、合わせてジンバルはDJI RS 2で運用しています。以前はEOS R5とDJI RSC 2を使用しており、R3導入に伴い順当に同社のRS 2導入となりました。PILOTFLY社、Zhiyun社のジンバルなども使用してきましたが、ここでは現在最も信頼を寄せているEOS R3とDJI RS 2ペアでのご紹介します。

ジンバル撮影がロケである場合、その多くが移動を伴うシチュエーションであることが挙げられます。場所や構図によってはレンズを変え、都度バランスを調整する必要もあります。長いストロークのカメラワークを行うジンバル撮影ではカメラの背面モニターはもちろん、ジンバルに装着した外部モニターをクライアントやディレクターにリアルタイムにモニタリングさせるわけにも行きません。

そこで私が個人的に重要だと思っている点が

1.安定的なロック機構:現場で移動する際、ジンバルがブラついた状態では機材を痛めてしまう可能性が高く電源を入れたままではバッテリーが消耗する

2.リリースプレートの調整ギア機構:RS 2はギア機構により前後のバランス調整が非常に快適

3.ロール軸の微調整:ジンバルは水平軸が微妙に狂いがちでシビアな構図出しが必要な物件の撮影などでPilotflly H2、Zhiyun CRANE2、Ronin-SCでは困った経験があるがRSC 2では簡単に微調整可能

4.HDMIトランスミッターとの相性:RS 2はRavenEye装着箇所にTiltaの専用アクセサリーを装着することで他社製ワイヤレスHDMIを装着可能

5.拡張性:Tilta社との協業で様々な撮影支援アクセサリーを使用可能なのもポイント

特にカーマウントシステムは迫力のある映像表現をぐっと身近にしてくれるので個人的にも注目しています。 

ジンバルメーカーへのリクエストとしては DJI RavenEyeの高画質化、レシーバー側でのHDMI出力機能です。現状どうしてもモニタリング画質と安定性に拘るとレシーバーとセットの他社製HDMIトランスミッターに頼らざる終えません。カメラメーカーのキヤノンには、HDMI出力先の接続状況で本来の目的である録画が止まってしまう仕様の改善してほしいと思っています(HDMIトランスミッターや外部門モニターのバッテリー切れや配線の接続不良につられ録画が停止してしまう)。

Zhiyun CRANE 3Sを選ぶ理由

Zhiyun CRANE 3Sを選んだ理由

羽仁正樹

Saha Entertainment。東京を拠点にグローバルに活躍する映像クリエイター、写真家。自身が撮影し制作を手がけた映像・写真の作品は、TV番組や映画、世界各国で開催される展示会、ディスプレイ、TVCMやポスターなどの広告に多用された実績を持つ。

映像人カメラ・アクセサリージンバル編[映像人のカメラ・アクセサリー2022]説明写真

私が使っているジンバルはZhiyun CRANE 3Sです。大は小を兼ねるで、搭載荷重6.5kgとREDから小型ミラーレスカメラまで対応している点が気に入ってます。今までたくさんのジンバルを買い替えてきました。Nebula 4000 Liteから始まり、8機種くらい買い替えました。買い換えるポイントは毎回搭載荷重で、カメラボディやレンズの大型化に伴い、モーターパワー不足で使えなくなることが主な理由です。

また、筆者はヘリコプターで空撮する時などは、ジンバルを使って撮影します。しかしジンバルによってはヘリコプターの発する磁力の影響かGの影響かわかりませんが、ジンバルがバグって、うんともすんとも言わなくなる時があります。Zhiyun CRANE 3Sは問題なく運用できた点から、信頼度がとても高いです。SmallRigのハンドヘルドリング(両手グリップ)を使用することで、両手で安定した撮影ができるのと重くなったらすぐカメラを地面に置けるのでおすすめです。

映像人カメラ・アクセサリージンバル編[映像人のカメラ・アクセサリー2022]説明写真

ジンバルメーカーへのリクエストは、両手グリップを使った時に手元で操作できないので、DJI Ronin-MXで使っていたようなジンバルを操作できるリモコンが欲しいです。右手はジンバルの操作、左手はカメラの操作ができれば撮影に集中できます。

※インタビューは2022年5月時点の内容であり、記事掲載時点ではDJI RS 3 Proを導入済み