キャッチライトを加えるだけで簡単に盛れてしまう事実
照明の世界は、奥深くて難しいものだと敬遠されがちだ。カメラ自体が高感度に強くなり、照明なしで撮影できることが増えているのも理由かもしれない。しかしながら、画に一味加えるのにライトは有効である。キャッチライトを加えるだけで簡単に盛れてしまうのも事実だ。
今主流となっているのはLEDライトである。逆に管球式のライトを入手する方が困難だ。近年オンカメラLEDライトがここまで市民権を得ている理由とはなんだろうか?
答えは明白である。これは、1996年の白色LEDが開発されたことが、現在のLEDライト隆盛のスタートとなる。わずか十数年で蛍光灯の効率に追いつくレベルにまで達した白色LEDの勢いは止まらず、2022年現在、オンカメラライトはほぼ全て、LEDライトであると言ってもいいだろう。LEDライトのメリットは電球の交換がいらない、低消費電力、発熱が少ない、軽い、安いなどユーザーにとっては良いことづくしだ。
また、最近のオンカメラライトは光量調節以外に色温度調整も可能なものが多く、いろいろな撮影環境に対応可能だ。RGB LED搭載で、自由に好きなカラーを選べるLEDライトも登場してきている。
メーカー所在地の多くは、中国深圳市となる。何年前からかLEDライトを供給していて馴染みのあるLPL、Sony、IDX、Litepanels、NEPといったメーカー以外にここ数年で台頭してきたAputure、NANLITEといった中国メーカーの他にも新興メーカーが散見される。
価格や機能面で日々進化するLEDライトは、ほぼ機能的に差は少なく、消耗品的感覚で使う機材ともいえるかもしれない。消耗品感覚であれば、創意工夫次第で映像人それぞれの使い方を試すこともできる。それでは、2022年のオンカメラライトについてみていこうと思う。
ミラーレスカメラユーザーのオンカメラライト動向
Q.ミラーレス一眼カメラ用のオンカメラライトはお持ちですか?
持っているが58%、持っていないが42%で、持っている人がわずかに上回る結果となった。
所有するオンカメラライトのメーカー名をお教えください(複数回答可)
オンカメラライトの所有ブランドは、幅広い回答となる結果となった。その中で最も所有率の高いブランドはAputureであった。2012年設立の歴史の浅いメーカーだが、最近は撮影スタジオや制作会社から高い支持を得ている。その後はNeewer、Ulanziと続く。
その他の結果には、SmallRig、Viltrox、FalconEyes、Cineroidなどのアジア系メーカーが多数となった。ハロゲン時代のビデオライトはLPL、アイ・ディー・エクス、NEPがお馴染みのメーカーだったが、最近は中国製LEDライトの台頭が著しい結果となった。
最後に、オンカメラライトがなぜ必要なのか、おすすめブランドと選定のポイントをインタビューしてみたので紹介したい。
Ulanzi「VIJIM VL81」を選んだ理由
前田進
1980年生まれ。卒業後は長野県小諸市のケーブルテレビ局にキャスター兼記者として就職。2008年からフリーランスして都内外のCATV局のニュース取材やリポーターとして活動を開始。現在はワンストップのライブ配信フリーランスエンジニアとして、年間100本以上の配信現場に当たっている。
今使っているのは、Ulanziの「VIJIM VL81」というものです。私が携わっている撮影現場の中には
- 人物の表情をくっきり収める
- 室内で大きな窓のある現場
- フリーハンドによるフレキシブルな撮影
などの条件下のものが多く、必然と「軽量」で「過度に眩しくない」照明が必要になります。これを考えた結果、リグ周辺のガジェットを多く販売しているUlanziにたどり着きました。とくにこの型番にこだわりがあるわけではありませんでした。
低出力であれば数時間の撮影は難なく使えますので、大変重宝しています。また、インタビュー時には三脚に固定しタッチライトとしても扱うこともあり、軽量ながらも小技を効かせた扱いができるのも気に入っています。USB-Cで充電できる部分も汎用性が高く、推せるポイントです。
ライトメーカーへの要望ですが、クリップオンのライトは基本的に軽量で持ち運びに優れて安価な反面、実はそれほど性能を求められないイメージがあります。しかし、実際被写体をよく見せるために照明を扱うとなれば、3点照明を準備したりしますが、その時はLEDの粒が通常よりも小さいビーズLEDで高輝度なものが理想的です。
あともし使うとなれば食事とかのSNSへの投稿などにも便利です。マグネットなどが裏面にあり、好きなところに設置してコンパクトに持ち運びができるものがあったら面白そうなことに使えるかなと思いました。
VIJIM VL64 Rechargeable Ring Lightを選んだ理由
川田弘之
学生時代にハンドベル奏者として活躍、旧アポロン音楽工業よりCD、レコード等を販売。その際のコンサート記録用としてビデオ撮影を開始。以降映像の道へと進む。東放学園放送技術学科卒業後、TV映像、CM音響制作会社を経て平成元年よりフリーランスとし活動開始。同年より成人向けコンテンツ撮影にも着手。
「VIJIM VL64 Rechargeable Ring Light」を使用しています。オンカメラライトというと語弊がありますが、通常のインタビュー等とは違い、成人向けコンテンツ撮影の場合、被写体になるモデルに極限までカメラで寄る(ズームではなく、カメラ本体で)傾向が強く、オンライトですとレンズ上からの光、特にワイドレンズ(16-35mm)の場合はレンズ影を出してしまうことに成りかねません。
そのために極力レンズ面と平行に光を照射する必要があります。その点、オンライトではなくリングライトを用いれば、かなりの範囲まで近づけるので現在の成人向け撮影に置いては必須アイテムの一つとなっています。
VIJIM VL64は、撮影中に調光が可能で、またLEDインジケータでライト内蔵バッテリーの残量が把握できます。3200~5600の色温度調整がバリアブルでできる点も気に入っています。USB Type-Cで充電可能なので、スマホチャージャーで追い充電が容易です。
2008年より国際放送機器展「BIRTV」にてライトメーカー数社と話しているのですが、「なぜリングライトが必要なのか?オンカメラライトで十分ではないのか」との意見で、一向に理に適ったリングライトが発見出来ませんでした。これは世界の需要のほとんどがオンカメラライトであることの証です。このため、便宜上ソニーのデジタルカメラ「Cyber-shot」ブランドのリングライト「HVL-RL1」をしばらく使用してきましたが、既に販売が終了し、代わりのライトを模索していました。
現在、Amazonにも相当数の中華製ライトが販売されていますが、どれも心躍るような製品はなく、業界関係者でも頭を悩ませていました。今回挙げたVL64リングライトは瞬く間に知人友人に知れ渡り、今ではFalcon Eyes、Aputure(Amaran)と並ぶ、業界照明三種となりました。
しかしながら、決してこのVL64も完璧な商品ではありません!あくまでもオンカメラライトに無理やりレンズを通してリング状に取り付けているに過ぎません。形状的にも無理があります。
成人向けコンテンツのほとんどはソニーFX3に代表されるミラーレス一眼にて撮影されている昨今、使用されるリングライトもミラーレスレンズに対応する必要があります。今回使用しているVL64も、バッテリーを内蔵している関係で重量が多少あり、また光量も強すぎます(実際に現場ではパーマセルテープを用いて減光しています)。少し光量を落としてよいので、ミラーレスレンズに見合うサイズ感と、特に絡みに使用するワイドレンズ(16-35)に合わせたサイズがあれば申し分無いのですが。