CES2025は「Tomorrow’s Tech 2025」で行こう!

世界最大級のテクノロジー見本市「CES」が、今年もラスベガスで開催される。1月7日からの開幕に先立ち、恒例のメディア向けテックトレンドセッションで掲げられたキーワードは「Tomorrow’s Tech 2025」だ。テクノロジーは単なるツールにとどまらず、私たちの日常を変革し、新たな可能性を切り開く存在であることを、データを交えながら示された。

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これを紹介したのは、CTA(Consumer Technology Association)のマーケティング担当VPメリッサ・ハリソン氏と、イノベーション・トレンド部門のシニアディレクターであるブライアン・コミスキー氏である。

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注目すべき6つの主要トピックとは?

今年の注目キーワードとして挙げられたのは、「テック・トゥー・テーブル(Tech to Table:農作物の育成から収穫、物流、さらには健康管理に至るまで、テクノロジーが生活全般を支えること)」や「デジタル共存」だ。これらのキーワードは、2025年以降の生活や産業の未来を明確に描き出している。

以下では、テックトレンドセッションで紹介された2025年に注目すべき6つの主要トピックを紹介する。

1.ジェネレーション別に見るテクノロジーの未来

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テックトレンドの恒例として、まずは世代ごとのテクノロジーに対する意向の変化が紹介された。注目すべきはジェネレーションZの影響力である。この世代は世界人口の32%を占め、OECD諸国の労働人口の27%を構成している。特に、南米・東南アジア・アフリカに多く存在し、デジタルネイティブとしてスマートフォンと共に育った世代である。この世代の消費行動に注目が集まり、ジェネレーションZの60%がアーリーアダプターであり、新しいテクノロジーをいち早く取り入れる傾向があることが示された。

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また、ファストファッションを好む一方で、サステナビリティへの意識も高い。たとえば、自然エネルギーやリサイクルを重視した商品には、ファストファッション以上の購買意欲を示す傾向がある。

さらに、世代を超えたアメリカのテクノロジーマーケットにもポジティブな予測が発表された。2025年の業界全体の小売収益は5370億ドルに達し、特にソフトウェアとサービス分野での成長が期待されている。

2.ショッピングの未来

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昨年のCES 2024では、生成AIの台頭が華々しく取り上げられ、ウォルマートが提供するAI購買アシストサービスが注目を集めたが、たったの一年でAIコマースは当たり前のものになっているというデータに驚いた。

AIリテール市場はすでに70億ドル規模に成長し、64%の消費者がオンラインショッピングでAIツールを利用しているというデータが示されている。これには、消費者が意識していない形でAIが活用されているケースも含まれるのだが、AIによるパーソナライゼーションの進化により、消費者はより良い購買体験を得られるようになっており、このトレンドは今後もさらに加速する見通しである。

3.AIと共存するデジタル世界

AIは人間との関係をさらに深めつつある。今年のテックトレンドでは「デジタル共存(Digital Coexistence)」というキーワードが注目された。この言葉は、かつてスマートフォン普及期に使われた「デジタル共存」とは異なり、AIが日常生活や仕事に浸透し、新たな共存の形を示している。

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調査では、米国の成人の93%が生成AIを理解しており、そのうち61%が職場でAIを活用していることが明らかにされた。今年注目されたAIとの共存分野には、以下の3つが挙げられる。

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1つ目はAIエージェントである。たとえば、Chatbaseのような製品は効率的な情報検索やコミュニケーションの補助を行い、日常生活において不可欠な存在になりつつある。2つ目はデジタルツインだ。NVIDIAの「Earth 2」プロジェクトは、仮想空間で現実をシミュレーションする取り組みで、産業や環境分野での活用が期待されている。そして、3つ目はヒューマノイドロボットである。Enchanted Toolsが開発するロボットは、人間と共感をもって関わる存在として進化している。

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2024年には、OpenAIが「Figure 01」、イーロン・マスクが「Tesla Optimus」を発表した。これらのロボットは、AIと人間が共存する新たなインターフェイスとしての可能性を感じさせる。

4.エネルギーとサステナビリティ

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エネルギー転換は現代社会における重要なテーマである。特にインフラ、実験的技術、サステナビリティの三要素が注目されている。電力網の強靭化が進む中、新技術の導入も加速しており、スウェーデンのExeger社が開発したソーラーテクノロジー「Powerfoyle」は薄くて柔軟なフィルム状の構造で、さまざまな製品に組み込むことが可能であり、今年貴重公演の目玉を飾るパナソニックのリチウム電池ももちろんテックトレンドで紹介された。

また、スマートホーム分野ではSiemensやSamsungがエネルギー管理ソリューションを提供し、サステナビリティの向上に貢献している。Samsungは昨年の出展で、AIによる家電全体の管理を通じて電力消費を抑える取り組みを紹介しており、今年もスマートホーム内でのAI活用が注目される。

トランプ政権がグリーンエネルギー政策にどのように対応するかも関心事であるが、CTAはグリーンエネルギーの未来像を積極的にテックトレンドとして紹介している。また、エウレカパークではフランスから核エネルギーのソリューションが出展されるとも噂されており、新たなエネルギー技術の多様性が示されている。

5.モビリティの革新

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今年はトヨタがWoven Cityの最新情報を発表し、スズキがCESに初出展するなど、日本のモビリティ分野でも注目すべきニュースが相次いでいる。その中で、テックトレンドの発表では、モビリティ分野における主要トレンドとして電化(Electrification)、コネクティビティ(Connectivity)、自律性(Autonomy)、インダストリアル分野(Industrials)の四要素が強調された。

空飛ぶ車の可能性についても語られており、車のトランクに収納可能な空飛ぶ自動運転車Xpeng AeroHTも新たな移動手段として注目を集めている。

6.ウェルビーイングと長寿社会へのテクノロジー

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長寿社会に対応するテクノロジーの進化が注目されている。ヘルステックの分野では、血糖値管理の重要性が挙げられる。私自身、Abbottの小型血糖値チェックデバイス「FreeStyleリブレ」を使用し、スマートフォンと連携して血糖値を管理した経験がある。その結果、食事への意識が変わり、ヘルステックが重要な領域であることを実感した。他には、onMedの「CareStations」やWithingsの「BPM Pro 2」などが挙げられ、これらは健康状態のモニタリングを容易にし、予防医療の推進に貢献している。

「Aging in Place」という概念も紹介されている。これは、高齢者が住み慣れた家で自立した生活を続けられるよう支援するスマートホーム技術の進化を指す。調査によれば、米国の消費者の80%がスマートホーム技術を高齢者向けの「エイジテック」として認識しており、52%が少なくとも一つの主要なエイジテック製品を所有している。

さらに、「Healthier Living」という概念も注目されている。これは家庭内の家電やサービスを健康の観点から再考する動きであり、製品の選択基準として価格や機能だけでなく、健康への寄与が重視されている。特にジェネレーションZ世代はテクノロジーに敏感で、健康を意識した購買行動が活発である。この傾向は、テクノロジーを前面に押し出した家電の普及を後押ししている。

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他には、メンタルヘルスを支援するNutrix、視覚障害者向けの「ガイドドッグ」として活躍するGlidance、昨年の基調講演で注目を集めたL’Oréalの「Brow Magic」など、美容とテクノロジーの融合を象徴する製品が紹介されている。

出揃ったキーワード!いよいよCES2025開幕!

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AIは既に多くの領域に浸透しており、新しい世代が積極的に試すことで未来を形作っている。「Tech to Table」という視点が示すように、テクノロジーは私たちの日常生活のあらゆる側面に関わり、より良い社会を築く原動力となっている。これを「Tech to House」「Tech to Society」へと広げることも可能である。こうしたテックトレンドを背景に、今年のCES2025がいよいよ開幕する。