
パナソニックは、NAB 2025の同社ブースにおいて、「Amplifying Innovation, Maximizing Our Impact」をメインテーマとして掲げ、放送局やライブイベントなどにおける映像制作へ向けた最先端AV技術を公開した。
展示構成は、スポーツ中継スタジオを模した最新4Kカメラ体験エリア「ライブスタジオゾーン」、リモートカメラの受賞歴と製品紹介エリア「ウィニングラインナップゾーン」、放送及びイベント映像制作ワークフロー解説エリア「ディスカバリーゾーン」、AI活用映像撮影・編集ソフトデモエリア「プロダクションゾーン」、ハイブリッド会議向けマイクロホンシステム体験エリア「コラボレーションゾーン」の5つのエリアとした。放送、イベント映像制作、会議など多岐にわたる場面での最新機器有効利用を目的とした展示である。その中から特に注目すべき製品をピックアップして紹介しよう。
AIを駆使したオートフレーミング機能やリアルタイムのモザイク処理、自動顔PinP処理を公開
プロダクションゾーンでは、オンライン講演、ウェビナー、学術会議、プレゼンテーションなどでの撮影を強化するパナソニック製PTZカメラ統合管理ソフトウェア「Media Production Suite」の新プラグインをデモした。最新のオートフレーミング技術や「Video Mixer」のデモンストレーションが注目を集めていた。


オートフレーミングのデモンストレーションにおいて、AW-UE160に新たに搭載されたオートフレーミング機能に加え、AIを活用した有償プラグイン「Advanced Auto Framing」の実演が注目を集めた。特に、動きのある被写体に対する安定したフレーミング能力が、多くの参加者から関心を寄せられていた。

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Advanced Auto Framingプラグインは、単体カメラでのオートフレーミング機能と比較して独自性を有する。広角で対象エリア全体を撮影するリファレンスカメラとオートフレーミング用のカメラを組み合わせ、カメラアングル外に位置する被写体への滑らかなフレーミング遷移を可能にする点が特徴である。
リファレンスカメラを用いることで、広範囲の被写体を捉え、フレーミングカメラでは捉えられない位置にいる被写体にも、よりリニアかつスムーズなフレーミングの切り替えが可能となる。

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デモでは、リファレンスカメラとしてAW-UE100がシーン全体を撮影し、フレーミングカメラが捉えていない被写体もリファレンスカメラ上で指定することで、正確なフレーミング対象の切り替えを実現した。また、フレーミングカメラごとに異なる被写体を指定したり、リファレンスカメラからフレーミング対象を指定することも可能である。これらのオートフレーミング機能は、リモートカメラコントローラーなどと連携することで、オートとマニュアルの併用操作も容易となる。
AW-UE160のオートフレーミング機能は2025年1月より無償ファームウェアアップとして提供中であり、Media Production SuiteのAdvanced Auto Framingプラグインは2025年4月上旬より提供が開始された。
ブースでは、グリーンバック不要の背景合成を可能とするAIキーイング機能を搭載した「Video Mixer」プラグインのデモンストレーションも実施され、注目を集めていた。AIキーイング機能は、グリーンバックを使用せずに被写体のキーイングと背景合成を容易に実現する。さらに、今後のバージョンアップ「Video Mixer バージョン2」で追加される複数の機能が紹介された。

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新たに追加された機能の一つが、AIを用いたカメラ映像内の被写体の顔周辺を自動的に切り出し、PinP表示を行う機能「AI Face Crop」だ。最大8人までの対応が予定されており、従来は複数カメラが必要だったワイプ映像を、カメラ1台で効率的に制作できる。
もう一つの機能は、AIによる自動モザイク・ぼかし機能「AI Effect Filter」である。カメラ映像内の顔を自動で検出し、ぼかしやモザイク処理をリアルタイムで行える。顔認証機能により、被写体ごとに異なる画像貼り付けも可能である。例えば、レポーターにはモザイクをかけず、背景の人物にのみモザイク処理を施すといった使い方が想定される。
さらにバージョン2では、音声入出力や外部制御への対応も予定されており、ライブ映像制作時の運用が効率化される。
マニュアル3リングのカメラレコーダー「AG-CX370」を初公開
ライブスタジオゾーンでは、スポーツ番組のスタジオを模したセットでカメラのラインナップを体験・閲覧できた。ここでは、初展示のプロフェッショナルカメラレコーダー「AG-CX370」と発売が開始されたばかりの「AG-CX20」が注目を集めた。
AG-CX350の後継機種である同製品は、マルチカメラシステムとの親和性とオーディオ入力の強化が主な進化点である。マルチカメラシステムとの親和性については、12G-SDIへの対応、Genlock同期、IP接続によるリモート操作、専用アプリ「CX ROP」との連携など、システム運用時の柔軟性が向上している。

オーディオ入力については、4チャンネルの個別録音に対応し、コンパクトな撮影環境における音声収録の課題に対応した。また、1インチセンサー対応の20倍ズームレンズは、ズームリングの応答性が改善された。

「AG-CX20」は、コンパクトなボディが特徴である。4K60P 10bit記録、24倍ズーム、NDI対応、フルHDストリーミング機能を搭載している。また、フロント内蔵LEDライトやOLEDビューファインダーなど、ワンマンオペレーションに適した機能も充実しており、高い機動性を有している。

ボックスカメラ「AW-UB10/UB50」とリモートヘッド「Robyhead D2」を展示
ボックスカメラは、興味深い組み合わせの展示が行われていた。マイクロフォーサーズマウントを採用した「AW-UB10」およびLマウントの「AW-UB50」は、LCDモニターを省略することで小型化を実現している。IP接続に対応しており、スタジオカメラと共通のリモコンを使用できるため、スタジオ環境への導入や色調整の統一化に寄与する。
センサーサイズの異なる2機種は、それぞれに異なる魅力を持つ。AW-UB50は、大きなセンサーを活かし、背景を柔らかくぼかした印象的な映像表現が可能だ。また、AW-UB50、AW-UB10ともにコンパクトな筐体により限られたスペースにも柔軟に対応でき、運用面での使いやすさが光る。

このコーナーで特に目を引いたのは、AW-UB50やAW-UB10用に設計されたMovicom社製リモートヘッド「Robyhead D2」との組み合わせである。このリモートヘッドは、パン、チルト、ズーム機能を備え、IPプロトコルを介してパナソニックのリモートカメラコントロールユニット「AW-RP150GJ」と完全互換を実現する。ステージでは、「AW-RP150GJ」を介したパンチルトズームとレンズ制御が実演されていた。この組み合わせによって、今後多角的な映像撮影が実現可能になりそうだ。


複数コア制御やHTML5グラフィックスに対応した「KAIROS」新バージョン1.8をデモ
KAIROSタッチアンドトライエリアでは、北米でKAIROSの新バージョン1.8の初展示と2024年発表のバージョン1.7の機能が公開された。
バージョン1.8の最大の目玉は、複数コア同時制御「マルチコアコントロール」だ。これにより、複数のKairos Coreを1つのパネルから操作可能となり、異なるエリアに設置されたコアもシームレスにコントロールできる。デモンストレーションでは、隣接エリアのコアを操作する様子が示された。

マルチコアコントロールは、特に映像素材が多量に必要とされる大規模イベントやステージングに適した機能であると考えられる。従来は、1台のコアに対して1台のパネルが必要な状況であった。今回のアップデートにより、1台のパネルで2台のコアを制御できるようになった。これにより、1人のオペレーターが両方の機材の素材を同時に扱うことができ、操作性が向上する。

また、HTML5グラフィックスに対応し、「Singular.live」や「Viz Flowics」との連携が可能になった。これにより、スポーツ中継におけるスコア表示などをSingular.liveで作成したものを、直接KAIROSに入力することが可能となる。従来は、NDI変換を介してKAIROSに入力するユーザーもいたが、今回のアップデートにより直接入力が可能となり、システムの簡略化と素材の利便性向上が期待される。

さらに、16:10の画角やRGBAに対応し、映像表現の幅が広がった。

バージョン1.7で導入されたスマートルーティング機能も紹介された。オンデマンド状態のソースを瞬時に呼び出すことができ、素材管理の効率化に貢献する。
デモンストレーションでは、KAIROSの遅延が1フレームに抑えられていることも示された。処理負荷の高い映像制作においても、リアルタイムに近い映像出力を実現可能としている。