Cine Gear Expo LAのLAOWAブースを訪れると、同社が新たなステージへ踏み出そうとしていることが強く伝わってきた。これまで個性的な広角レンズやマクロレンズで知られてきたLAOWAだが、今回は放送用レンズ市場への本格参入を宣言するかのような製品群を展示していた。

放送用レンズ市場へ本格参入する「Ultima」

中でも最も注目を集めていたのが、新たな放送用ズームレンズシリーズ「Ultima」である。

NAB 2026でも展示されていたが、Cine Gear Expo LAでも引き続き注目を集めていたのがS35対応の「Ultima 25-600mm T4.2 S35 Broadcast Zoom」ズームレンズである。25mmから600mmという広大な焦点距離をカバーしながら、全域でT4.2を維持する。

ズーム操作中に画面の明るさが変化しないことは放送現場において極めて重要な要素であり、テレ端600mmまで到達しても開放T4.2を維持する設計には高い技術力が投入されている。

イメージサークルも余裕を持った設計となっている。本機はS35対応ながら33mmのイメージサークルを確保しており、一般的なAPS-C規格よりも大きい。キヤノン、ソニー、ニコンなど各社の規格にも余裕を持って対応できる仕様だ。

さらにUltimaシリーズにはフルサイズ対応モデル「Ultima 25-180mm T3.8 FF Broadcast Zoom」も用意されている。こちらはT3.8という明るさを実現し、ワイド端からテレ端まで露出変化のない設計となっている。放送用途を前提としながらも、シネマ撮影にも十分対応できる性能を備えている点が印象的だ。

LAOWAの担当者によれば、中国のレンズメーカーの中で10倍を超える高倍率ズームレンズを製造できるのは自社のみだという。放送用レンズは極めて高い設計・製造精度が求められる分野であり、その参入自体が技術力の証明でもある。製造難易度が高いため大量生産は難しいものの、すでに受注生産体制を整えており、一部顧客向けには先行出荷も始まっている。正式な市場投入は7月上旬を予定しているとのことだ。

実機に触れてみると、ズーム全域でフォーカスが安定しており、その完成度の高さがうかがえた。尖ったレンズを作り続けてきたLAOWAが、放送用レンズ市場へも本格参入する。その姿勢からは、新たな市場を切り開こうとする強い意志が感じられた。

パーフォーカスを実現した「Axon」

一方で、同社らしい独創的な製品群も健在である。

新型マクロレンズ「Axon 45mm f/2.8 Ultra Macro 1–5x APO」では、1倍から5倍まで倍率を変更してもピント位置が変化しないパーフォーカス設計を実現していた。従来のマクロレンズでは倍率変更のたびにフォーカスを微調整するのが当たり前だったが、このレンズでは被写体の大きさを変えながらもピントを維持し続けることができる。

時計やジュエリーなど高精度な商品撮影では大きな武器になる仕様だ。実際に操作すると、フォーカスの再調整が不要なため撮影テンポが大幅に向上する。ブリージングも抑えられており、倍率変更や絞り操作に集中できる。もともとはスチル用途をベースに開発されたレンズだというが、動画撮影での実用性は極めて高い。こちらも7月上旬の発売を予定している。

描写を作り込める「Proteus」

さらにフルサイズ対応の「Proteus」シリーズも展示されていた。35mm、50mm、70mm、100mmの4本がラインナップされ、最大の特徴は球面収差(SA)を調整できる機構を搭載している点である。

SA調整によって前ボケと後ボケの性質を意図的に変化させることが可能であり、設計値通りのシャープな描写から、あえて収差を残した独特の雰囲気まで作り込める。光学性能を単に高めるのではなく、積極的に表現へ活用するという発想が実にLAOWAらしい。描写そのものをクリエイターがコントロールできるという点で、表現の幅を広げる実用性の高い機構といえる。

大型フォーマット対応への可能性

昨今、シネマレンズ業界では65mmクラスの大型センサーへの関心が高まっているが、その流れについて尋ねると興味深い話を聞くことができた。実は同社のシフトレンズシリーズはすでに65mmをカバーするイメージサークルを実現しているという。17mmから100mmまでのラインナップを揃えており、大型センサーへの対応余地を十分に備えている。

同社はすでにARRI PLマウントに対応したZero-D Shift Cineシリーズを展開している。こうした既存技術を活用すれば、大型フォーマット向けレンズへの展開も十分に考えられる。現時点では市場動向を見極めている段階とのことだが、ユーザーからの要望次第では新たなシリーズの展開も現実味を帯びてきそうだ。

完成が近づく3Dステレオレンズ

また、以前から注目している3Dステレオレンズの開発状況についても話を聞くことができた。現在は実運用を見据えた最終調整段階にあり、左右レンズユニットの同期精度向上やメカニカルなガタの排除に取り組んでいるという。ズーム機能を備えた3Dレンズは極めて珍しく、その完成度向上に余念がない様子だった。近いうちに新たなサンプルも公開される予定とのことで、その進展にも期待したい。

放送用ズームレンズから高倍率マクロ、表現志向のシネマレンズ、大型フォーマット対応、さらには3D撮影システムまで。LAOWAは既存のカテゴリーに収まることなく、自社の光学技術を武器に新たな市場へ挑戦し続けている。放送・シネマ業界において、同社が今後どのような選択肢を提示していくのか注目したい。