IBC 2026のDJIブースを歩いていると、BIRTVでも見た展示がいくつか並んでいた。その中で足を止めたのが「DJI SDR Transmission 2」である。

中国では9月1日時点で製品情報が公開されていたが、IBC 2026開催時点では日本未発表の製品だ。日本での正式発表を前に、IBCのブースで実機を見ることができた。

IBC 2026のDJIブース。撮影機器やジンバル、ワイヤレス映像伝送など、DJIの映像制作向けソリューションを展示

外観は小型のワイヤレス映像伝送機だが、注目したいのは単純な高画質化だけではない。送信と受信を1台で切り替えられる構成や、多数の送受信機を組み合わせた運用、DCI 4K/60fpsへの対応など、撮影現場でワイヤレス伝送システムをどう組むかという部分まで踏み込んだ製品である。

送受信を切り替え、最大5送信・40受信まで展開

DJI SDR Transmission 2を見て、まず押さえておきたいのが、1台のトランシーバーで送信と受信を切り替えられる点だ。

IBC 2026会場に展示された「DJI SDR Transmission 2」。同一のトランシーバーを送信側、受信側のどちらにも使用できる

従来のワイヤレス映像伝送では、送信機と受信機が別々になっている製品が多く、撮影前にそれぞれ何台用意するかを決めておく必要がある。DJI SDR Transmission 2は、同一のトランシーバーを必要な場所へ配置し、用途に応じて送信側または受信側として使用できる。そのため、その日の撮影規模や役割に応じて構成を変更しやすい。

さらに、1台の送信側から最大8台の受信側へ映像を送り、最大5台の送信側と40台の受信側を同時に運用できる構成にも対応する。ディレクター、撮影監督、フォーカスプラー、クライアントなど、複数のスタッフがそれぞれ映像を確認するマルチカメラ環境まで視野に入ってくる。

多台数運用を支えるのが「Auto Channel 2.0」である。自動チャンネルモードでは、複数のトランシーバー同士が相互に認識し、使用する周波数帯を自動的に調整する。周波数スキャンやチャンネル競合の診断にも対応し、周囲の状況に応じて使用チャンネルを切り替える。

各社のワイヤレス映像伝送システムが数多く稼働するIBC会場は、こうした機能の意味をイメージしやすい環境でもある。通常の撮影現場とは条件が異なるものの、多数の無線機器が密集する環境で「複数のシステムをどう共存させるか」という設計の狙いが見えてくる。

DCI 4K/60fps対応でも最低35ms

ワイヤレス映像伝送で避けて通れないのが遅延である。画質や伝送距離が向上しても、映像の遅れはモニタリングやカメラ操作、フォーカス操作などの使い勝手に直結する。

DJI SDR Transmission 2は、DCI 4K/60fps、10-bit HDR、H.265でのワイヤレス伝送に対応し、最大エンコードビットレートは50Mbps。それでいて、最低伝送遅延は初代DJI SDR Transmissionと同じ35msを維持する。初代は1080p/60fps、最大20Mbpsだったため、映像フォーマットとビットレートを拡張しながら、公称最低遅延を据え置いたことになる。

35msはカメラ側と表示機器側の遅延を含まない値で、1080p/60fpsおよび4K/60fps条件で測定されたものだ。

最大伝送距離はCE環境で4km。DJI中国の仕様では、開けた場所で遮蔽物や干渉がなく、1送信・1受信で使用した場合の測定値となる。実際の撮影現場では建物、人、無線LAN、ほかの映像伝送システムなど条件が大きく異なるため、個人的には4kmという最大値以上に、混雑した実環境でどこまで通信品質を維持できるのかが気になる。

IBCの実機から見えてきた運用イメージ

スペックを確認したところで、次に見たかったのは実際のシステム構成である。ブース内には、カメラ側に送信側のトランシーバー、離れた場所に受信側のトランシーバーを配置したデモが組まれていた。スペック表だけでは分かりにくい、実際の運用に近い構成を確認できる。

取材の瞬間は映像が出ている状態まで撮影できなかったものの、機材の配置や配線を追うことで、この小さなトランシーバーを撮影システムのどこへ組み込むのかが見えやすくなった。完成したデモ画面だけではなく、機材同士の位置関係を確認できるのも展示会取材ならではである。

スマートフォンと組み合わせたDJI SDR Transmission 2の展示例。小型のトランシーバーをモニタリング環境へ組み込んだ構成を確認できる
同一のトランシーバーをTX/RXのどちらにも設定できるのがDJI SDR Transmission 2の特徴

本体は約136g。NP-Fバッテリー、USB-C PD、ジンバルからの給電に対応する。

DJI SDR Transmission 2側面のUSB-C端子に、L字型のUSB-Cケーブルを接続している状態
NP-Fバッテリーを装着した状態。USB-C給電を使わず、バッテリー単体で運用できる

本体にはHDMI端子と2基のUSB-C端子を備え、下側USB-C端子はDisplayPort映像入出力にも対応する。SDIを使用する場合は別売の拡張プレートが必要となる。

本体側面のHDMI端子。カメラやモニターなどと接続し、映像の入出力に使用する

Ronin 2、DJI RS 3 Pro、DJI RS 4、DJI RS 4 Pro、DJI RS 5、DJI Master Wheelsとの連携にも対応する。単体のワイヤレス映像伝送機として見るだけでなく、DJIが展開する撮影システムへ組み込んで運用できる点も特徴だ。

DJIのジンバルと組み合わせた展示例。SDR Transmission 2を撮影システムへ組み込んだ構成を確認できる
ジンバルとDJI SDR Transmission 2を組み合わせた展示例。トランシーバーをカメラシステムへ組み込んだ構成

中国での価格は、トランシーバー1台を含むDJI SDR Transmission 2が1,999人民元、2台を含むセットが3,499人民元。日本での価格や販売形態については、IBC 2026取材時点では発表されていない。

今回IBCで実機を見て分かったのは、DJI SDR Transmission 2が単なる「初代の4K対応版」ではないということだ。送受信を切り替えられるトランシーバーを軸に、多台数運用やAuto Channel 2.0まで含めて、現場全体のワイヤレス映像伝送を組み立てる製品へ進化している。

BIRTVで見た段階よりも具体的な仕様が明らかになり、IBCでは実際のシステム構成まで確認できた。日本で正式発表された際には、通信の安定性、35msという遅延、4K伝送時の画質を実際の撮影環境で確認してみたい。