IBC2026のLeader Electronics of Europeブースで、まず目に留まったのがハンドヘルド型テスト&メジャメント機器の新製品「Sx2シリーズ」だ。同社はリーダー電子グループの欧州拠点である。Sx2シリーズは、PHABRIXブランドで定評のあるSxシリーズの流れを汲み、12G-SDI、4K UHD、HDRといった現在の映像制作・放送ワークフローに対応させた製品だ。
実機を見た第一印象は、「思ったより小さい」だった。現場へ持ち出す道具として、よくまとまっている。4K/HDRや12G-SDIをめぐる温度感は地域によって異なる。日本ではさらなる高解像度化の動きがやや落ち着いて見えるが、海外ではこれらのワークフローが依然として大きな存在感を持つ。会場で実機に触れると、12G-SDIの測定が大型設備の中だけでなく、必要な場所へ持ち出して行う段階に入ったことが実感できた。
12G-SDIをハンドヘルドに収めた2モデル
ラインアップは2機種ある。12G-SDIと4K UHDに対応した標準モデル「Sx2」と、高度な物理層解析機能を加えた上位モデル「Sx2E」だ。従来のSxシリーズは3G-SDIまでの対応だったため、12G-SDIを扱えるようになったことが最大の違いである。
12G-SDI対応のポータブル波形モニターはこれまでもあったが、比較的大型のものだった。Sx2シリーズは、同社がようやく実現した12G-SDI対応のハンドヘルド製品である。信号の発生から受信、解析までをエンジニアの手元で完結できる。
メインユーザーとして想定するのは、メーカーの開発・製造現場だ。同社のエンジニア自身も、手元で信号を出したり受けたりしてチェックする用途に使っているという。放送分野でも、中継車や屋外でのシステムチェックなどでの活用が見込まれる。ターゲットをどこまで広げるかは、IBCでの来場者の声を踏まえて検討していくとのことだ。

波形、ベクトルからクローズドキャプションまで
両モデル共通で、SDI信号発生、映像表示、波形モニター、ベクトルスコープ、SDIデータ表示といった基本的な測定機能を備える。ブースでは画面を次々に切り替えながら各測定を確認できた。印象に残ったのは機能の多さよりも、小さな本体で複数の測定画面を素早く呼び出せる軽快さだった。



付帯情報の確認にも強い。ANCステータスやペイロードを確認できるほか、OP47、CTA-708に埋め込まれたCTA-608、ネイティブのCTA-708クローズドキャプションをオンスクリーンでデコードできる。Ancillary Time Code(ATC)の表示にも対応する。映像そのものだけでなく、放送運用に欠かせない情報まで1台で確認できるのは実用的だ。
HDRには、両モデル共通のオプション「SX2-HDR」ソフトウェアライセンスで対応する。信号発生器、ルマのフォルスカラー表示またはヒートマップ、波形モニター、ベクトルスコープを備える。対応フォーマットは、SDRのBT.709/BT.2020と、HDRのBT.2100 HLG/PQ、Sony S-Log3、SR Liveで、ライブ制作の主要フォーマットを網羅している。
Sx2Eは物理層解析を標準搭載
上位モデルのSx2Eは、物理層解析ツールセットを標準で搭載する。12G/6G/3G/HD/SD-SDIのコミッショニングやテスト、開発を支援する機能だ。RTE(Real-Time Eye)技術によるアイパターン表示で、SMPTE規格への適合上の問題を即座に把握できる。リアルタイムのジッターウィンドウでは5つの周波数帯域を同時に監視でき、ジッターヒストグラムやビデオトリガーも利用できる。


固定して使え、電源を選ばず持ち出せる
ハンドヘルド型であることは、フライパックへの組み込みにも生きる。ライブ配信や小規模な中継システムでも、SDIまわりを拡張しながら運用するケースは少なくない。そうした現場で信号の状態をすぐに確かめられる小型測定器の価値は、スペック表の数字以上に大きい。
展示機はVESAマウントを介してアームに固定されており、フライパックや簡易システムへの組み込みもイメージしやすい。バッテリーは交換式で、USB-C充電にも対応する。機材車内や仮設卓、ロケ現場など、電源環境が安定しない場所でも運用しやすいだろう。


操作はタッチスクリーンとロータリーコントロールを併用し、スピーカーも内蔵する。画面レイアウトはカスタマイズでき、3〜4種類の測定画面を組み合わせたテンプレートを最大8つまで登録・呼び出しできる。測定項目を頻繁に切り替える現場で、手数を減らしてくれる設計だ。
Sxシリーズと併存し、選択肢を広げる
発売は2026年9月中の予定と説明があった。なお、Sx2シリーズは従来のSxシリーズを置き換えるものではなく、Sxシリーズのサポートは今後も継続される。Sx2シリーズは、12G-SDI、4K UHD、HDRの現場に向けて、手元で測れる選択肢を広げる製品といえる。「12G-SDI対応」という見出し以上に、持ち出し、固定し、すぐに測るための道具としての完成度が印象に残る展示だった。