時代は変わりそれぞれの見せ方

毎年CESはLGによるOLEDの圧倒的なエントランスが見ものの一つだが、今年はその名物展示がメタバース上での展示へ移行…。またパナソニックは新製品群をプロジェクションマッピングで紹介するなど、ラスベガスコンベンションセンターの大企業展示ブースはディスプレイの進化を普通(例年のようにブースを巡っての意)に見るには寂しいものだった。

だが、その分スタートアップが面白いディスプレイの可能性を展示していた。街を歩けばそれまでのポスターに変わり、ディプレイによるサイネージも目に着くようになった。今回は、いろんな場所がディスプレイに置き換わる未来を紹介していこう。

空港や病院の窓をディスプレイに

オランダのスタートアップVideoWIndoWは窓そのものをディスプレイにする技術を紹介していた。モジュール型の当プロダクトは空港、病院、商業施設、コワーキングスペースと、設置場所の用途にあわせて窓全体 or 一部をディスプレイ型窓に変更することができるそうだ。

このデバイスには光センサーが搭載されており、その光センサーを利用して高度なアルゴリズムにより、外のデータをリアルタイムで取り込むことにより窓としても機能しながらアドオンで映像を表示することができる。外の景色をみる開放感を残しつつ、広告スペースもしくはエンタメスペースとして窓を活用できるようになりそうだ。

車窓や、ドアをディスプレイに。

筆者が2019年から注目しているイスラエルのスタートアップ Gauzy は今年も健在だった。ガラスなどの原材料にフィルム技術を埋め込む特許を取得し、ガラス表面を不透明から透明に切り替えるハイテクとローテクを融合させた液晶ガラス(LCG)を有する彼らは今年車窓と会議室扉を展示していた。

HD画質の画像や映像を投影することも可能で、車窓を広告画面にすることもできる。また、ボタン一つで曇りガラスに切り替えできるのでプライバシーを守りたいシーンや機密を扱う会議の際には外から情報を見えないようにしつつ、通常は開放感ある空間を保つことができる。

3Dメガネ不要の3Dテレビ

LGが展示していたライトフィールドモニターは、3Dメガネ不要で立方体が飛び出してきた。一定の距離を保たないといけないため、ながら見や街頭ディスプレイとしての利用は難しいが、3Dメガネ無く立体映像が見られるのはやはり感動する。

MIT Media Labが生み出したヘッドマウントディスプレイ不要のVRディスプレイ

史上初のヘッドセット不要のバーチャルディスプレイを紹介していたBrelyon。光学およびコンピューテーショナル技術を用いた新しい物理学により、奥行きとパノラマをディスプレイ内で実現している。32インチの湾曲したディスプレイに顔を近づけると立体的な映像を体験できる。

IMAXシアターが顔の前にあるようなイメージである。展示では顔を覗き込むような行為となっているが、通常の利用方法としてはデスクトップに常設して鑑賞したりゲームを行う。

CES 2022ではヘッドマウントディスプレイの酔い防止を行う技術が他にも展示されていたが、酔い防止だけではなく重さも問題になる。筆者もMetaのHorizon Workrooms でセミナーを行ったが90分でかなり首が疲れたことを付け加えておこう。

このBrelyonのディスプレイを使うと疲れ知らずでバーチャル空間が楽しめそうだ。彼ら自身は今後のメタバース空間での主要プレイヤーを狙っているとも語っていた。

Canonが生み出す新たなリモート会議空間、VR臨場感

キヤノンは一台のPTZカメラを会議室に設置すると、人、ホワイトボード、空間全体を認識し、会議室の情報を適切にリモート会議に送信提供するソフトウェアを展示していた。パソコンで映し出すと人の顔は綺麗に映し出せてもホワイトボードがなかなか綺麗に送信できずに、リモートの人と現地会議室の人の温度感の違いを感じた経験をした人は多いだろう。

このソフトウェアはカメラに映るホワイトボードの画像が斜めであっても正面から写しているように補正してくれる。会議に必要な情報をソフトウェアで設定すると、あとは会議に集中しながらリモートの人にも同じ臨場感が味わえるようになる。リモートと現場をシームレスにする試みだ。

キヤノン「RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE」

キヤノン“EOS VR SYSTEM”で撮影した映像をVRゴーグルで試してみたのだが、臨場感が圧倒的だった。キヤノンブースのVR体験は60分待ちするほどの人気のコンテンツだったのだが、圧倒的な臨場感を一度体験するとVR映像のレベルアップを感じることができるので、行列が納得であった。

空港の窓が、車窓がディスプレイになり、デスクトップから気軽にメタバース空間へ飛べるようになる。CES 2022のディスプレイ進化は新たなアプリケーション、マネタイズポイントも広げるような可能性を広げている。