いきなりカメラの話をするのは順序がおかしいのかも知れないが、今、プチシネ制作を強力に後押しするような革命が起きている。それがデジタル一眼レフカメラによる映画制作だ。タイミングを逃したくないので今回取り上げてみたい。

これを書いている今現在、HD動画の撮れるデジタル一眼レフはCanon、Nikon、Panasonic等からいくつかの価格帯で発売されているがそれぞれに長所短所がある。購入する前にはかなり細かく(カタログやメーカーサイトの情報以上に)調べなくては後で泣きをみるのだが、それぞれの試用レポートは至る所に転がっているのでここでは触れない。そもそもビデオカメラと何が違うの?一体何をそんなに騒いでいるの?という声にお答えしたいと思う。

憧れのフィルムカメラの表現力

フィルムの質感=映画らしさといってしまうと語弊があるのかもしれないが、フィルムの持つ特性のいくつかはデジタルビデオをはるかに凌ぐ表現力を持っている。例えば解像度。これは単純に置き換えてデジタルと比較することが難しいのだが、少なくとも4K(横幅4,000ピクセル以上)は必要とされている。

今のテレビでいうフルハイビジョンサイズが横幅1,920ピクセルなので2倍以上、面積でいうと4倍以上のクオリティーになるが、これは映画館の巨大なスクリーンに引き延ばす為にあると言ってもよく、プチシネ的には気にしない方がいいだろう。ただし、解像度はそのままグラデーションの滑らかさにも関係するので、フルハイビジョンまでの大きさに限り、敏感であってほしい。テレビでの放映が基本であるCMの多くが今でもフィルムで撮影されているのは、この滑らかさ故でもあるのだが、もう一つが今回説明する被写界深度の表現力だ。

被写界深度ってなんだ?

単純に言ってしまうとフォーカスが合っている範囲の事で、例えばカメラの前3mにいる人にフォーカスを合わせた時その1m後ろにいる人にはどうか?さらにその10m後ろにある建物はどんな建物か判別できるのか?という事だ。前後1mの二人共ボケていないという状態を被写界深度が深いといい、後ろの建物まではっきり分かるような状態を被写界深度が非常に深いという。

逆に一人の人物でも目には合ってるが鼻はボケてるという状態を非常に浅いという。一度手近にある物をじっと見て欲しい。その意識のまま目に入る遠くの物の様子を見てみると、意識の中には入って来ないがフォーカスがボケてるわけではない事に気付くでしょう。つまり人間の目の被写界深度は恐ろしく深いと言える。その状態をそのまま撮ろうと思ったら深い被写界深度で撮るのが順当だと思えるが、その映像を見る人には今あなたが持っているような「意識」はない。

つまりどこに集中しているかは解らずに、ただ一枚の絵として見てしまう。その画像に作家の「意識」を付け加える為に周りの物、つまり意識に入っていない物をボカして撮る。それが被写界深度を使った映像表現なのだ。

浅い被写界深度を使えるデジタル一眼レフ

被写界深度の調節は絞り、レンズの種類、被写体への距離等で行う。もちろんマニュアル撮影が可能な物ならビデオカメラでもある程度はできる事なんだが、いかんともし難いのは撮像素子(CCDやCMOS)の大きさだ。動画を扱うビデオカメラはそのデータ量の多さから三枚の撮像素子に分けて処理するのが一般的で自ずと一枚一枚は小さくなる。

だがデジタルスチルカメラはそれを一枚の大きな撮像素子で捉えるので画質も上がり、光学上の理由から被写界深度もダントツに浅くできる。それが処理速度の向上により一秒に30枚以上の画像を処理できるようになった。つまり動画が撮れるようになったのだ。

こうなってしまうとデジタル一眼のフレキシビリティが俄然威力を発揮し、現在の所、最高級のCanon 5D Mark II の画像の美しさは息を飲むような物だし、最新のPanasonic DMC-GH1K に至っては実売価格がレンズ付きで10万円を切るという低価格でありながら、レンズを買い足していけば驚く程の映像が撮れ、その交換レンズでさえビデオカメラのレンズに比べればとても手軽に買える。まだ始まったばかりの流れで、今後もまだまだ魅力的な製品はリリースされるだろう。プチシネ的には大いに期待している。

一枚目が業務用ビデオカメラの映像の1コマ。本当は後ろの建物をもっとボカして女の子の表情に集中させたいところ。後の二枚がPanasonic GH-1の映像からの2コマ。この浅い被写界深度をどう表現に活かすか、映像を作る醍醐味が味わえる瞬間だ。

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WRITER PROFILE

ふるいちやすし

ふるいちやすし

映画作家(監督・脚本・撮影・音楽)。 日本映画監督教会国際委員。 一般社団法人フィルム・ジャパネスク主宰。 極小チームでの映画製作を提唱中。