photo by 山下奈津子

今年もやってきた映画の祭典「アカデミー賞」

先月の本欄では、第83回アカデミー賞視覚効果部門のノミネート作品を決定する「ベイクオフ」の模様についてレポートした。「ベイクオフ」の詳細を紹介した奇特なメディアは本欄くらいで、その貴重な情報を目の当たりに出来た皆さんは「PRONEWSを愛読していて本当に良かった」と、さぞ感涙された事だろう…。

さて、読者の皆さんもご存知のように、米国西海岸時間2月27日(日)夜に第83回アカデミー賞受賞式がハリウッドのコダック・シアターに於いてハデハデ(本当)に開催された。アカデミー賞の受賞式は、ハリウッド大通りとハイランド・アベニューの角に鎮座する、複合観光施設「ハリウッド&ハイランド」の中にあるコダック・シアターにて開催されている。

このハリウッド&ハイランドが2011年にオープンする迄は、アカデミー賞受賞式はダウンタウンLAにある劇場「シュライン・オーディトリウム」にて開催されていた。ちなみにシュラインは、90年代にシーグラフがロサンゼルスで開催された際には、エレクトリック・シアターの会場として毎回使用されていた場所でもある。受賞式当日、ハリウッド&ハイランド周辺は道路は通行止めとなり、一般ピーポーは全てシャットアウトされるが、その前日の土曜日であれば、その仕込み中の光景を垣間見る事が出来る。

そこで今回は、よっぽどの物好きしか取材しないであろう「アカデミー賞会場 前日仕込み作業突撃レポート “家政婦は見た”」を皆さんにお届けしたい。

前日、アカデミー賞会場から伝わる事

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ここがCM入り前に大写しになる。ちなみに左の黒い物体は、雨対策の為シートで覆われたオスカー像

アカデミー賞前日、「ハリウッド&ハイランド」は立ち入り区域は制限されるが一般人のアクセスがまだ許されており、ビニール袋に覆われた蔵出し直後のオスカー像や、カメラ・リハーサル中のクルーや忙しく動き回るお花屋さんなど、テレビには決して映らない光景が間近に見れて、正直かなり面白い。運が良ければ、リポーター役で呼ばれている映画スターのリハーサル風景なども目にする事が出来る。

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このアカデミー賞受賞式は毎年、米ABCネットワーク系列で全米に中継されている。受賞式会場に到着したスターがドレスに身を包んで歩く「レッドカーペット」からの中継は、その華やかさも相まって受賞式の風物詩と言えるが、今年からレッドカーペットからの中継時間が、これまでの30分から90分に拡大され、その分リハーサルにも熱が入る事になる。

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「ロバート・ダウニー・Jr」に見立てたオッサンと、インタビューのリハーサル

事前の天気予報では、前日の土曜日は「雨」、当日の日曜は「曇り時々晴れ」になっていた事もあり、雨が降っても大丈夫なように、レッドカーペット上には巨大なビニールテントが置かれていた。その下のレッドカーペットでは、到着した映画スターを取材するカメラ・リハーサルが行われていた。中でも「ロバート・ダウニー・Jr」に見立てた、本物とは似ても似つかぬオッサンにカメラとマイクを向けてインタビューを行うリハーサル風景は見ていて笑えた。

ハリウッド大通り上には巨大な仮設橋が設営され、この上からリポーターが女優さんのドレスを批評したり、コメントを述べたりする(写真)為の収録に用いられた。普段はサンリオ・ショップやヴィトン等の店舗が並ぶ通路も、両脇が赤いカーテンで覆われ、スター達がコダック・シアターへと入っていく赤絨毯通路へと早変わりする。両脇にはカメラ、照明、関連機材が置かれ、床にはケーブルが這い、慌ただしい雰囲気に包まれてた。このような念入りなリハーサルや準備を経て、あの受賞式の光景が実現する訳だ。

前日準備を金網から垣間見る

受賞式の中継を、家のソファーでビールとピザを片手に観るのも楽しいが、こうして前日に潜入して裏側を覗いたお陰で、昨日会場で見かけた私服のレポーターがドレスを着て中継していたり、昨日のリハーサルと同じ場所でスターの登場インタビューが行われていたり、と別の視点から楽しむ事が出来たのは楽しい経験であった。

第83回アカデミー賞の受賞作品は下記のとおり:

  • Best Picture: “The King’s Speech”
  • Best Actor: Colin Firth, “The King’s Speech”
  • Best Actress: Natalie Portman, “Black Swan”
  • Best Director: Tom Hooper, “The Kings Speech”
  • Best Original Song: “We Belong Together” from “Toy Story 3”
  • Best Film Editing: “The Social Network,” Angus Wall & Kirk Baxter
  • Best Visual Effects: “Inception,” Paul Franklin, Chris Corbould, Andrew Lockley & Peter Bebb
  • Best Documentary Feature: “Inside Job”
  • Best Short Film (Live Action): “God of Love,” Luke Matheny
  • Best Documentary (Short Subject): “Strangers No More”
  • Best Costume Design: “Alice in Wonderland,” Colleen Atwood
  • Best Makeup: “The Wolfman,” Rick Baker & Dave Elsey
  • Best Sound Editing: “Inception,” Richard King
  • Best Sound Mixing: “Inception,” Lora Hirschberg, Gary A. Rizzo & Ed Novick
  • Best Original Score: “The Social Network,” Trent Reznor and Atticus Ross
  • Best Supporting Actor: Christian Bale, “The Fighter”
  • Best Foreign Language Film: “In a Better World,” Denmark
  • Best Original Screenplay: David Seidler, “The King’s Speech”
  • Best Adapted Screenplay: Aaron Sorkin, “The Social Network”
  • Best Animated Feature Film: “Toy Story 3”
  • Best Short Film (Animated): “The Lost Thing,” Shaun Tan & Andrew Ruhemann
  • Best Supporting Actress: Melissa Leo, “The Fighter”
  • Best Cinematography: “Inception,” Wally Pfister
  • Best Art Direction: “Alice in Wonderland,” Production Design: Robert Stromberg; Set Decoration: Karen O’Hara

WRITER PROFILE

鍋潤太郎

鍋潤太郎

ロサンゼルス在住の映像ジャーナリスト。著書に「ハリウッドVFX業界就職の手引き」、「海外で働く日本人クリエイター」等がある。