Text by:鍋 潤太郎 撮影:山下 奈津子 取材協力:Trana Pittam – Universal Studios Hollywood / Publicity

はじめに

5月24日、ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドに最新アトラクション「トランスフォーマーズ・ザ・ライド3D」(Transformers: The Ride-3D)がオープンした。5月24日に報道陣を招いてのオープニング・イベントが行なわれ、翌25日より一般公開が始まった。ユニバーサル・スタジオのテーマ・パークは、ハリウッド、オーランド(米フロリダ州)、シンガポール、そして大阪という、世界4箇所にパークがある。このアトラクションは昨年12月3日に、まずシンガポールのパークにお目見えし、そしてこの5月にとうとうハリウッドにも登場。

ハリウッドのパークにとっては2年前に「King Kong360 3D」がオープンして以来の、久方ぶりのメガトン級アトラクションのリニューアルである。ハリウッド在住の映像ジャーナリストとしては、これを取材しなければ、男がすたる…という訳で、筆者は早速、現地に足を運んでみた。今回は、その話題をお届けする事にしよう。

「バックドラフト」の跡地に登場

このアトラクションの場所は、元々人気アトラクションの「バックドラフト」だった。「バックドラフト」が2010年4月に終了し、それから約2年余りを費やして改築工事が行なわれていた。それが、この程ようやくお目見えした訳である。筆者は個人的に「バックドラフト」が好きだったので、無くなってしまったのは少々寂しいが、ハリウッドのパークはアトラクションのリニューアルには非常に積極的なのだ。

バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド」が2007年9月に他のパークに先駆けてハリウッドが最初に終了した例も記憶に残るが、このように常に最新アトラクションを公開し、リピーターに楽しんでもらおうという姿勢が伝わって来る。

(c)2012 Universal Studios. All Rights Reserved.

さて、こうしてオープンした「トランスフォーマーズ・ザ・ライド3D」だが、現地に到着してまず目に入ったのは、なんと「100分待ち」のサイン。すごい人気ぶりである。パークの奥にある、長~いエスカレーターを下って映画スタジオと同じ敷地へ下りると、右手に巨大なサインが見えて来た。入り口近くではオプティマス・プライムと一緒に記念写真を撮れるコーナーや、ロゴの入ったスペシャル・ドリンクを販売するお店もあった。

観客参戦型の演出

(c)2012 Universal Studios. All Rights Reserved.

建物の中に入ると、待合いスペースではプレショー映像がモニターに流れている。ここで観客は、自分達は特殊部隊NEST(ネスト)の要請を受け、正義の戦士「オートボット」と悪の軍団「ディセプティコン」の戦いにリクルートされた事を告げられる。そして、新キャラクターのロボット「EVAC」が変身したライドに乗り込み、メガトロン率いる悪の軍団とのバトルに参戦する事になるのだ。

大迫力の立体映像&ライドの融合

(c)2012 Universal Studios. All Rights Reserved.

さて。ここであまり詳しく内容を事を書いてしまうと、皆さんが実際に訪問した際の面白みが薄れるので、ここではさわりだけを「さっくり」と、ご紹介する事にしよう。このアトラクションは、ご想像のとおり、立体メガネを掛けてライドに乗り込む訳だが、ランチの前とか、「お腹が空いている時」に乗るのが賢明だろう。なぜなら、ライドは絶えずグルングルン回るわ、ロボットは襲ってくるわ、破片は飛んでくるわ、いきなり全速で後退するわ、も~~大変(笑)

これを満腹状態で乗ると、後でかなり厳しい戦局を迎える結果になる事は、容易にご想像頂ける事だろう(笑)。この様に映像は大迫力で、VFXは映画本編と同様にILMが担当している。ちなみに、このVFX映像は、今年2月に行なわれた第10回VESアワード授賞式で、見事「博展映像部門賞」※を受賞している。

※ The 10th VES AWARD Outstanding Visual Effects in a Special Venue Project
Transformers the Ride: The Ultimate 3D Battle: Lori Arnold, Yanick Dusseault, Delio Tramontozzi, Jeff White

プレス向け資料の中で、ILMのVFXスーパーバイザージェフ・ホワイト氏は「このライドに初めて搭乗するゲストは、最初は各キャラクターやアクションに興奮する事でしょう。しかし、2回目、3回目と搭乗する毎に、背景の街や周りの建物が、いかに正確に3Dで作り込まれているか、気がつくはずです」と、デジタル・エンバイロメントの作り込みやこだわりをアピールしていた。

ちなみに、このEVACを模したモーション・ベースのライドは12人乗り。立体映像にシンクロして前後左右の全軸移動(pivot, roll, pitch)と360度回転が可能だそう。

このライドは全長609mの軌道を時速100キロ近い猛スピードで走り抜け、その間には14個のカスタム・スクリーン(フロント・プロジェクション、リア・プロジェクションを含む平面スクリーンと曲面スクリーン)があり、3Dレンズを装着した34個のハイビジョン・プロジェクターから成る「プロジェクタ・アレイ」を切り替えて立体映像が投影される。各スクリーンあたり、4台のHDプロジェクターを上下左右の各象限に投影する事で、ほぼ4K近い解像度を実現しているという。

更に、立体VFX映像とシンクロする形で、本物の水や風、熱、煙などの物理的な効果が加わり、ゲストに更なる臨場感を与えている。ニクイ演出である。

おわりに

オフィシャル・メーキング映像も見る事が出来る。

さて、駆け足でご紹介した「トランスフォーマーズ・ザ・ライド3D」の全容だが、その魅力はご理解頂けた事と思う。このアトラクションの概要に更にご興味をお持ちの諸兄は、YouTubeにアップされているコチラのリンクをご参照されると良いだろう。また、夏のSIGGRAPH2012に参加される方は、是非とも時間をみつけて、ダウンタウンのコンベンション・センターからハリウッドへ足を伸ばしてみるのも楽しいだろう。さぁみんな!夏休みは、ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドへGO!!!

テクニカル・スペック

  • アトラクション建物面積:60,000スクエア・フィート(約5,600平方メートル)
  • 建物の高さ:60フィート(約18メートル)
  • ライドの軌道:2,000フィート (約609メートル)
  • EVAC ライド:12人乗り(4人掛けシート×3列)
  • 映像本編:4分30秒
  • スクリーン:14スクリーン
  • HDプロジェクター:34台
  • 音響システム:5,000ワットのシステムが各ライドに搭載

WRITER PROFILE

鍋潤太郎

鍋潤太郎

ロサンゼルス在住の映像ジャーナリスト。著書に「ハリウッドVFX業界就職の手引き」、「海外で働く日本人クリエイター」等がある。