txt:稲田出 構成:編集部
4K8Kの他にも最先端の機器が数多く見られる展示会
去る6月18、19日、東京・南雪谷のアストロデザイン本社において「アストロデザインプライベートショー2015」が開催された。同社は世界に先がけてプログラマブルビデオ信号発生器を開発し、パソコン用のディスプレイがマルチシンクになってきた当時、ディスプレイのテスト用測定器として活躍した。そうしたハイレゾの技術がNHKの目にとまりハイビジョン機器を手がけるようになった。
その後も4Kのカメラを業界でいち早く商品化し、現在の8Kへと繋がっている。すでに4K放送も開始され、8Kの試験放送が来年に迫った今、カメラをはじめとした8K対応機器が多数披露されたほか、4K機器や伝送機器、測定器など様々な先端機器が出展された。8K対応のカメラは同社以外にも手がけているメーカーがあるが、同社は周辺機器にも力を入れているのが特徴といえるだろう。また、数年前からラウドネスメーターも商品化し、現在では映像系の測定器だけでなく、オーディオなどの放送機器も手がけるようになり、放送機器のメーカーとして認知されるようになったといえよう。毎年大手の放送機器メーカーがあまり手がけない最先端の機器が数多く出展されるアストロデザインプライベートショーは、放送業界の未来が見える貴重な展示会だ。
8Kカメラの周辺機器が充実
様々なメーカーの8Kスーパーハイビジョン対応のカメラの中で最も小型化されたカメラヘッドを製品化しており、マルチカメラやスタジオ使用に欠かせないCCUやコントロールパネルのほか、RAW記録が可能なSSDを採用したレコーダーや8K対応VF、モニターなどが揃い、スタジオライブやロケなどの制作に対応。様々な8K収録に対応できるようになった。参考出品として水中カメラなども披露されていた。また、8K、4K、HDに対応したコンバーターや信号発生器なども披露された。8K対応のテロップシステムやカラーグレーディング装置などもあり、制作に必要な機材が充実した。
単板式8KスーパーハイビジョンカメラAH-4800と光伝送装置アダプターAT-4803。NHKエンジニアリングシステムが開発した3300万画素のセンサーを搭載した単板式カメラAH-4800はドッカブル方式で、写真の伝送アダプターAT-4803を装着することにより、光ファイバーでCCUと接続可能
8KスーパーハイビジョンRAWレコーダーHR-7516。AH-4800に装着可能なSSDレコーダーで、カメラからのRAWデータを非圧縮で収録可能。モニター用にHD出力が可能なほか、記録メディアのホットスワップ、本体側面のLCDモニターに入力や再生画面表示ができる
CCUアダプターAR-4804(写真上)と8KスーパーハイビジョンカメラCCU装置AC-4802(写真下)。8Kはもちろん、HDや4Kの出力も可能となっており、CCUアダプターAR-4804にコントロールパネルを接続することでアイリスやゲインなどの制御が可能。インカム、送り返しなどにも対応
8KスーパーハイビジョンカメラコントロールユニットAC-4802用マスターコントロールパネル
8K対応スーパーハイビジョンSSDレコーダーHR-7512-C。8K/4K非圧縮レコーダーで、8K60pで最大100分の記録が可能。4台同期運転で4:4:4/60i記録ができる
国立研究開発法人海洋研究開発機構の無人海洋探査機PICASSに搭載するために開発中の8K水中撮影カメラ
フルHD電子ビューファインダーDF-3515。HD-SDIおよびHDMI入力に対応したビューファインダー。2倍4倍の拡大表示、ピーキング、マーカー表示が可能で、従来より小型化された
参考出品の8Kスーパーハイビジョン55型液晶モニター
8Kバックパック装置TB-8101。タッチパネル式LCDモニターに表示されるサムネイルで簡単に操作が可能。クリップの選択やIN/OUT点の設定も可能
8Kバックパック装置TB-8101に採用されていたテープメディア。IBMのエンタープライズテープで最大10TBのバックアップが可能
8K対応クロスコンバーターSC-8209-A。8K、4K、HDを相互にアップ/ダウンコンバート可能。4K切り出し機能も搭載している
デジタルビデオ信号発生器VG-876。HDCP2.2対応のHDMI 6Gユニットや外部同期ユニットMXが新たに加わり、対応インターフェイスのバリエーションが増えた
8Kだけじゃない!4K対応機器や各種測定機器も多数出展
すでに4K放送が開始されているが、それに伴いモニターや測定機器も必要となってくる。カメラやモニターといったメインの機材は各社から発売されているが、実際に放送として運用していくには様々な周辺機器や測定機器が必要になる。同社ではこうした需要にいち早く対応し、4KからHD画像を切り出す機器や伝送装置、DSK、スキャンコンバーターなど様々な製品を開発している。
4K-HD低遅延切り出し回転・ブレ補正装置GP-4020。4K映像からHD映像に任意の位置で切り出すことか可能なほか、画像の回転やブレの補正が可能。日本テレビとの共同開発により商品化されたもの
4KウェーブフォームモニターWM-3206-A。3840×2160専用の波形モニターで、ベクトルやヒストグラム、xy/uv色度図、ピクチャ表示などが可能。画面を分割して一度に表示することもでき、自由にレイアウトすることも可能。ACとDC12Vモデルが用意されている
波形モニター/ラスタライザーHW-7065。2系統の映像と波形を同時に表示可能なほか、編集前後の映像や波形の同時確認、3D素材の確認、ヒストグラム表示などが可能。DVI出力により、PCモニターに接続できる
HDTVインサーターHD-1678。4K対応DSKで、ライン入力2系統、キー入力8系統に対応しており、2系統の出力に対して同期信号を個別に設定可能。SDメモリーカードからの静止画を読み込むスーパー素材として利用することやネットワークからの設定、カット/フェードなどのトランジション、表示位置調節などが可能
マルチメディアスキャンコンバーターMC-2085。3640×4320または7680×2160に対応しており4K×2画面をリアルタイムで処理することができる。システム構成に合わせて入出力インターフェイスボードを実装することができ、多画面表示や拡大表示、マルチ表示などに対応可能。インターフェイスは3G/HD/SD-SDIのほかDVI/VGA/VBSなどに対応可能
字幕モニターDM-3019-G/DM-3021-G。字幕表示に特化したモニターで、HD/SD-SDI、アナログ、携帯の各種字幕を選択可能なほか、CSパケットモニターを搭載しており、送出部や素材ベースでの字幕運用規格の確認が行える。ヒストリー表示、字幕&アンシラリ表示、CMチェックなどの機能を搭載している
MMTレコーダー&プレーヤーCP-5541。4K/8K放送規格であるMMTに対応しており、IPパケットデータをイーサネットフレーム単位で収録可能なほか、収録入力IPデータフローのフィルタリングや収録時のタイムスタンプに沿ったストリーム再生、送信元/宛先IPアドレス/MACアドレスを付け替えての再生などが可能。NHKとの共同開発
MMTレコーダー&プレーヤーCP-5541による解析表示
放送バックパック伝送システムCB-5542。地上デジタル放送で用いられる204byteのMPEG-2 TSの帯域を圧縮してIP伝送する装置で、放送局から送信所までの伝送路をIP回線でバックアップすることができる。双方向伝送が可能となっており、素材の伝送などにも利用できるほか、同時に複数の拠点に伝送することもできる
ラウドネスメーターAM-3807-A。3G/HD/SD-SDIに多重化されたエンベデッドオーディオ信号やAES/EBU音声信号のラウドネス値を計測することが可能。ラウドネス値はARIB TR-B32に対応しており、ラウドネスレンジ、サラウンド波形、リサージュ波形、針式メーター表示、スペクトラムアナライザー表示などが可能。画面内に複数の表示を同時表示するマルチレイアウト表示ができる
プロトコルアナライザーVA-1842。HDMI2.0/HDCP2.2に対応しており、エミュレート機能や映像/音声モニタリング機能、ログトリガー機能、コンプライアンステスト機能、アナライザー機能などが搭載されている。DisplayPortモデルVA-1835やGVIFモデルVA-1839などがラインナップされている
こうした機材のほか、最新の技術動向のセミナーが開催された。主なセミナーとしては、ITUやARIB、SMPTEなどで策定された8K規格の概要として、「最新8K規格の動向とアストロデザイン製品のロードマップ」が、4K/8K衛星放送の多重化方式として採用されたMMT規格の解説「次世代多重化方式MMTの概略と当社の取り組み」など。7月16、17日には大阪・大阪メビック扇町にて「アストロデザインプライベートショー2015」が開催される予定となっている。