txt:VISIONGRAPH Inc. 構成:編集部
需要増加でゲーム市場の成長はさらに加速
2020年、世界のゲーム市場はコロナ禍の需要増による急激な成長となり、前年比2割増の約18兆円に達する見通しです。さらにMordor Intelligence社の調査によると2025年には約30兆円市場にまで成長すると言われています。2021年もコロナ禍の外出自粛生活が長引けば長引くほど、更なる需要の増加でゲーム市場の成長はさらに加速する事でしょう。
実はゲーム業界は、3DCGやXRなど最新のテクノロジーがいち早く導入される分野として、SXSW等のテック系の展示会イベントでも非常に注目されています。今回はそんなゲームに関する最新の動向から、未来の可能性を感じる予報をお届けします。
予報01:ゲームの主人公を演じた俳優がアカデミー賞にノミネートされる
2019年末に発売されたゲームDEATH STRANDINGは、ハリウッド俳優を起用して制作された事が話題となりました。主人公役のノーマン・リーダスをはじめ、マッツ・ミケルセン、ギレルモ・デル・トロなど、有名なハリウッド俳優を複数人起用しています。
彼等はゲーム内キャラクターの単なるモデルではなく、実際に演技を行い、その様子を撮影した映像を元にモーションキャプチャー技術によってゲーム内に登場します。声優ではなく、俳優として動きや表情も演じるのは、ゲーム作品では新たな試みと言えるでしょう。近い将来、映画とゲームの垣根がなくなり、俳優の仕事としてゲームのキャラクターを演じる事は普通になるのかもしれません。
映像技術の進化と、家庭用ゲーム機のスペック向上によって、近年は「まるで映画のようだ」と形容される、非常にリアルな映像のゲームが多くなりました。ゲームの最大の強みは、プレイする事でその物語の世界に入り込む事ができる点です。映画の目的が人々に非現実的な没入体験をさせる事であれば、ゲームはまさに最適なプラットフォームと言えるでしょう。
新型コロナウイルス感染拡大による映画館の閉鎖と、新作映画の公開中止が続き、映画業界存続の危機が叫ばれる中で、ゲーム業界への進出が映画業界にとっても希望の道筋になるかもしれません。数年後には、ハリウッドの映画スタジオが「映画を超える体験ができる」ゲーム作品を生み出し、アカデミー賞にもノミネートされるようになると予報します。
予報02:狭い部屋でも運動が可能なバーチャル世界の自宅トレが人気になる
2020年、家庭内でのエクササイズ需要でNintendo Switchのリングフィットアドベンチャーが品切れになる程の人気でした。実際に身体を動かしてゲームをする事の楽しさに気付いた人も多いかと思います。海外では、ゲームの中のキャラクターと全く同じ動作ができる、より本格的なエクササイズが可能なコントローラーも開発されています。
VRゲーム用の"歩ける"大型コントローラーを開発するVirtuix社は、家庭用の"Omni One"を2021年に発売予定と発表しました。クレーンのようなアームに固定されたベストを着て、専用の靴とゴーグルを装着する事で、実際に歩いたり、屈んだり、走ったりと身体を動かして操作します。
これにより、ゲームの世界に実際に入り込んで行動するというVRゲームの魅力を最大限に体感できるでしょう。さらに、この技術がもっと進化すればゲーム以外での活用も期待できるかもしれません。例えば、危険な場所で作業するロボットを遠隔で操作したり、世界中の観光名所をGoogle Mapsで歩いて探索したり…もしかしたらエクササイズマシンとしてスポーツジムにも導入されるかもしれません。
予報03:次世代ゲーム機開発競争の終焉。全てはクラウド上に
2020年にはPlaystaionの新型機Playstation 5が発売されましたが、抽選に当たらないと購入できないほどの人気となっています。このように家庭用ゲーム機のスペックが数年ごとに向上する事で、ゲームの表現力は大きく進化を遂げてきました。しかし、「家庭用ゲーム機は近い将来に必要なくなるのでは?」「PS6は登場しないのでは?」との噂があります。その理由が、2019年頃から登場し始めた「クラウドゲーミング」という新しいサービスです。
クラウドゲーミングの特徴は、ゲームをプレイする時の高負荷なデータ処理を、家庭用ゲーム機やPCを使わず、全てサーバー上で行った上でストリーミング配信するという仕組みです。プレイする側は、ネット環境さえあれば、アプリを通してスマホやタブレット、テレビ等のデバイスを問わずに高スペックのゲームを楽しむ事ができます。
外出中に友人からオンラインゲームに誘われたらすぐに参加できるし、家ではゲーム機を取り合っての兄弟喧嘩もなくなります。数万円するゲーム機本体を購入するというハードルが無くなり、スマホゲーム並みの手軽さで高スペックなゲームも楽しめるようになれば、現在のゲーム人口はさらに増加する事でしょう。
2020年にはGAFAMと呼ばれるビックテック企業がこぞって独自のクラウドゲーミングプラットホームを発表し、ゲーム業界の次なる覇権争いが始まっています。2019年に米国でサービスを開始したGoogleのStadiaを始め、2020年9月に発表されたAmazon Luna、その他にもMicrosoftのxCloudや、NVIDIAとSoftBankによるGeForceなど、日本国内でも利用できるクラウドゲーミングサービスも登場し始めています。
ただし、クラウドゲーミングは始まったばかりのサービスで、データ処理や通信の遅延が指摘されており、まだまだ解決すべき課題の多い発展途上の分野と言えるでしょう。これからの数年で期待される通信技術の向上、特に日本でもサービス開始した5Gが普及する事によって、ユーザー体験向上と大衆化に繋がり、クラウドゲーミングの利用者は確実に増加していく事でしょう。
まとめ
スマホの普及により、日本のゲーム人口は爆発的に増加しました。ゲームは子供の遊びと思っていた大人世代が散歩代わりという目的でポケモンGOに夢中になったり、小学生がオンラインゲームで大人顔負けの活躍をしていたり、10年前であれば考えられなかった光景が今では当たり前のものになっています。
このように、私達の生活の一番身近なところで、テクノロジーの進化をいち早く感じられる事がゲームの魅力と言えるでしょう。2021年はゲームの進化に注目する事で、未来の生活の様子が見えてくるかもしれません。映像クリエイターにとっても、活躍のフィールドが広がっていく一年になるでしょう。